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網膜の遺伝性疾患患者に対する鍼灸治療【パイロット研究】

ここで紹介するのは、スイスのバーゼル大学で行われたパイロット研究(初期研究)に関する論文の要旨です。

バーゼル大学は、スイスでもかなり古い大学で、1460年創設となっています。

医学に関しては分かりませんが、心理学では有名なユングが学んだことでも知られ、物理学者のベルヌーイや思想家のニーチェが教鞭を執った大学でもあります。

 

https://www.thieme-connect.de/products/ejournals/abstract/10.1055/s-0041-111819

<鍼治療による網膜の遺伝性疾患患者における視覚機能の改善>

 

この大学で行われたパイロット研究では、10歳、14歳の子どもを含む平均年齢43歳の遺伝性網膜疾患を持つ患者、14人に対して鍼灸治療を受けて頂きました。

鍼灸治療の前、途中、後で、それぞれ視力(ETDRS charts)、視野(ゴールドマン視野計)、コントラスト感度のテストを行いました。

その後、鍼治療を行わなかった同じ条件の群と比べたところ、全ての患者において客観的な視機能の全般的な改善を認めたとあります。

 

また、それに加えて、自覚的な症状の改善も認めたとあります。

以下のようなものです。

 

・色のコントラストが見やすくなった。
・焦点が合いやすくなった。
・眼精疲労の軽減
・入眠時間の改善
・片頭痛、頭痛発作の改善
・冷え性の改善

 

つまり、眼科的な客観的検査所見だけでなく、一般症状に関して、体感的(自覚的)な改善が観察されたということです。

これは、当院でも多くの患者さんが仰ることです。

 

小児を除くと、慢性的に進行する眼科疾患では、無期限や無制限に、症状がどんどん改善するわけではありません。

視力や視野、コントラストなどの視機能は、大体3~6カ月の間で改善し、その後は安定期に入ります。

安定期に入ってしまうと、一旦上がった能力を落とさないことが目標になりますから、変化が体感出来なくなり、継続するのを躊躇う時期でもあります。

実際のところ、鍼灸治療を止めてしまっても、一定期間は変化が分かりません。

 

 

残念ながら、一旦鍼灸院に通わなくなると、その後症状が進行しても、再び通院することは心理的に難しいようです。

また実際のところ、一度死滅した視細胞は復活することはない(理論的には)ため、再び通院して頂いても、無くなった機能を取り戻すことは難しくなります。

そのため、眼科疾患に対して鍼灸治療を受ける時には、短期的な目標と共に、長期的な目的を確認することが何よりも大切になります。

 

今回ご紹介した論文は、パイロット研究ですから、眼科疾患に対して鍼灸が、何らかの働きをするのかどうかを検証しただけのものです。

長期的な鍼灸治療の効果は、これから検証されるのだと思われますので、また追加でご報告させて頂きます。(何年後かは分かりませんが)

遺伝性の網膜疾患の代表である網膜色素変性症では、数十年かけて少しずつ悪化していくため、経過の観察や治療の評価が難しいものです。

そうした中でも、鍼灸治療により、客観的(他覚的)にも主観的(自覚的)にも体に変化が起こるということは、とても素晴らしいことだと言えます。

 

当院にも、10年以上来院されている網膜色素変性症の患者さんがいらっしゃいますが、10年以上同じような施術を受けるためには、心理的なモチベーションが保たれていないといけません。

最初の入り口としては、他に治療法がないため、消極的な選択肢として鍼灸を選ぶのですが、施術を重ねるに連れて、細かな体調不良やトータルでの健康を意識するようになります。

今回の研究のような、短期的(数週間~数か月)な治療効果と、当院で行っているような、長期的な心身の健康管理の為に鍼灸治療が果たす役割は、決して小さくありません。

 

今後も当院では、こうした完治が難しい遺伝性の眼科疾患や難治性の眼科疾患に対して、長期的に見て、生活が快適になるための施術を続けていきたいと思います。

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鍼灸ひより堂