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眼科鍼灸に関する素朴な疑問にお答えします

ところで…なぜ鍼灸で目の病気が良くなるの?

 

ある日のことでした。

眼科疾患で初めてご来院頂いた、比較的ご高齢の患者さまに、施術前の問診と一通りご説明が終わり、施術も終わっていざ会計という時に、

 

「ところで、お宅ではどうやって治療するの?」

 

全てのご説明が終わって、鍼灸治療も受けて頂いた上でのご質問だったため、どうお答えして良いものか、ちょっと戸惑ってしまいました。

ただ一般的な方であれば、私の口頭での説明だけでは分かりにくいのではと、改めて思いました。

そこで、出来るだけ分かりやすく、眼科鍼灸の働きをご説明出来る様に、このページを作成しました。

眼科鍼灸が働き掛ける場所とは

 

眼底の血流に働きかける

 

眼科疾患の方は、比較的眼底部の血流の状態が悪い方が多いようです。眼底部とは、眼球の一番奥の部分になります。

眼球の奥に当たる眼底部には、網膜の中でも、最も視覚情報に関係する網膜の黄斑部や、情報を脳に伝える視神経があります。

こうした神経細胞がたくさんある場所では、栄養や酸素がたくさん必要ですから、そのための血管も豊富にあります。

黄斑変性症や脈絡膜新生血管の患者さまでは、こうした眼底部の血流が悪くなっていると考えられています。

 

そして、血液循環が悪くなると、血液中の水分が血管外に漏れ出て来るため、むくみが出来てしまいます。これは、足のむくみと同じ理屈です。

鍼灸治療は、目の周囲や後頚部、手足などのツボを刺激することで、眼底部の血流量を増やすことが出来ます。

血液循環が良くなると、血管外に水分が漏れ出ることがないため、むくみが無くなります。

眼底部のむくみが無くなると、見える景色が歪んだり、色が付いて見えるということが無くなります。

 

さらに、眼底部の血行障害は、むくみだけではなく、新生血管を作る原因になります。

血行障害が長期間に渡ると、栄養や酸素が不足するため、新しく迂回路のような役割の、新生血管を作ることがあります。

これは眼だけに限らず、足のむくみなど、全身の血行障害で見られます。足がむくみやすい方では、ふとももやふくらはぎ、足首の内側に、腰痛持ちの方では、骨盤の周辺に新生血管を見ることが出来ます。

こうして出来た新生血管は、元々ある血管と比べてとても脆いため、血管が破れて出血することが多々あります。

 

眼底部で起こった出血が、黄斑部に近いと、出血した血液を通して光を受け取ることになるため、見える景色が黒く影になって見えてしまいます。

また出血の範囲が広ければ、視野が完全に奪われ、景色が真っ黒になってしまうこともあります。

こうした事態を防ぐには、新生血管の元になっている血行障害を取り除く必要があります。

 

病院で行う治療との違い

 

眼底部にむくみや新生血管が出来てしまうと、病院での治療としては、VGEF阻害薬の硝子体注射が選択されます。

これは新生血管を作らないように、眼球の中に注射器を使って、VGEF阻害薬と呼ばれる薬剤を注入するものです。

この血管新生阻害薬は、元々抗がん剤として開発され、大腸がんのお薬として使用されていました。

がん細胞は、栄養や酸素をとても多く必要とする大食いな細胞ですので、新生血管をたくさん作ろうとします。

そこで、がん細胞に血管新生阻害薬を注入することで、血管の新生を防ぎ、がん細胞が増えるのを防ごうというのです。

 

この抗がん剤を眼底部に使用することで、新しい血管を潰していけば、眼底部での出血は防ぐことが出来ますし、血流量が減りますので、眼底部の(網膜・脈絡膜)むくみは、ある程度防ぐことが出来ます。

ところが、元々の問題(血行障害)が解決されていませんので、しばらく経って薬の効果が切れてくると、再び新生血管が増えたり、浮腫が再発したりといったことが起こります。

 

鍼灸治療では、直接新生血管を潰すということは出来ません。あくまでも、眼底部の血行障害を無くすことで、結果的に新生血管が出来なくなるということです。

この場合、原因である血行障害を取り除いていますので、ある意味根本的な問題解決をしていることになります。

ただ鍼灸治療も、頻度が極端に少ない場合や、血行障害の原因が増強した場合などは、その治療効果が薄まる傾向はあります。

 

鍼灸治療と投薬の違いは、血行障害の結果出来てしまった、新生血管という結果に対する治療を行うか、新生血管の原因である、血行障害に対して行うかという違い以外にも、様々な違いがあります。

 

鍼灸治療と投薬(注射)の違い

 

・投薬を行う際の注射により、感染症や出血などの副作用がある。

鍼灸治療にはそうした副作用がない。

・投薬治療は比較的新しい治療のため、長期的な副作用が分からない。

同じく鍼灸治療にはそうした副作用はない。

・注射は原因治療でないため繰り返しになる可能性がある。

鍼灸治療は原因治療ではあるが、投薬ほどの切れ味がない。

・繰り返すほどに副作用の可能性は高まる。

鍼灸治療は長く行っても副作用はない。

・鍼灸治療の場合、即効性は投薬より劣る。

投薬では一定の効果はほどんどの場合得られる。

・鍼灸治療の頻度が不十分な場合効果が望めない。

投薬の場合、2ヶ月~3か月に1回の施術で良い。

 

眼科鍼灸の受け方

 

適応

 

眼科疾患に対する鍼灸治療を受ける場合には、まずその眼科疾患が鍼灸治療の適応であるかどうかを、見極める必要があります。

鍼灸治療が臨床効果を挙げるものは、まだ症状の進行が見られるようなものや、眼科疾患の原因が循環障害によるものです。

また視神経の萎縮や網膜の変性が進み、完全に失明状態のものは、鍼灸治療の臨床効果は期待出来ません。

 

黄斑変性症の場合には、浸出型には高い臨床効果を期待出来ますが、萎縮型には効果が出難いと思われます。

緑内障の場合には、開放隅角緑内障は適応ですが、閉塞隅角緑内障は不適応です。

緑内障の鍼灸治療を受ける場合も、眼圧のコントロールのため点眼薬は併用して頂くことになります。

 

年齢

 

発症からの時間が短いほど、鍼灸治療で得られる利益は大きく、発症から時間が経過して症状が進行しているほど、鍼灸治療による利益は少ないと言えます。

また年齢に関しても、年齢が若いほど鍼灸治療の反応が得られやすく、変化も起こりやすい傾向があります。

過去に幼児の網膜色素変性症患者に行った鍼灸治療では、非常に大きな変化が得られました。

逆に、高齢者の加齢性黄斑変性症で、変性が進行してしまい、失明状態にまでなってしまうと、鍼灸治療での回復は望めないでしょう。

鍼灸治療を受けて頂く年齢の上限はありませんが、下限としては年中児くらいからを対象にしています。

これは、ベッドにじっと寝ていられる年齢を基準にしていますので、子どもにより差はあります。

何らかの原因でじっとしていられないお子さんは、鍼灸治療をすることは出来ません。

ただし、2~3歳までであれば、小児針で対応出来ることもありますので、ご相談下さい。

 

頻度

 

鍼灸治療の適切な頻度は、眼科疾患の状態と目的により変わります。

眼科疾患の症状が進行中であったり、積極的に症状の変化を希望する場合には、最初の3か月を目安に週2回の施術が必要になります。

ある程度症状が落ち着いていて、症状の変化があまりないようであれば、週1回程度から施術を開始します。

基本的には3か月に1回程度、施術頻度の見直しを行います。

 

急性期から無事回復し、症状が落ち着いている方に関しては、頻度を徐々に減らしていきます。

慢性的に進行する眼科疾患で、目を酷使するお仕事をされている方の場合には、週1回の頻度を守って頂く方が良いように思います。

特に脈絡膜新生血管や中心性漿液性脈絡網膜症の方では、症状の再発や悪化を招くことがあります。

こうした方でも、鍼灸治療さえ続けて頂ければ、眼内注射なしでも、十分に症状の悪化や再発をせずに、日常生活やお仕事を出来ています。

 

中には、通院を途中で中止し、再発すると来院される方がいらっしゃいますが、再発を繰り返すごとに治りが悪くなる傾向があります。

また眼内注射を受けた回数が多いほど、鍼灸治療の臨床効果は低い傾向がありますので、出来るだけ早く鍼灸治療を受けて頂くことを、お勧めいたします。

 

いつまで通うのか

 

「眼科鍼灸を始めたものの、いつまで通えばいいのか分からない…。」

「一度通いだすと、ずっと行き続けないといけないのか?」

 

こうした疑問に対するお答えは、1つではありません。

鍼灸治療にいつまで通うかは、いつまで通うべきかということではなく、あなたが鍼灸による臨床効果を、いつまで必要とするかにより変わるからです。

 

もしあなたが、お仕事の為に目を酷使しており、お仕事の引退と共に、そうした生活をする必要が無くなれば、鍼灸治療は必要なくなるかもしれません。

或いは、通院の頻度をぐっと少なく設定しても良いと思います。

 

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鍼灸ひより堂