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網膜色素変性症の鍼灸治療【長期的観察】

何か出来る方法があるなら…

 

網膜色素変性症の患者さまは、ほとんどの場合、病院で診断名は付いたものの、その後経過観察となり、

 

「治療としてやるべきことありません。」

「そんなに急に悪化するわけではありませんよ。」

「失明するかどうかはその人次第です。」

 

という医師からの言葉に、不安な日々を過ごされているようです。

確かにこれらの言葉通り、症状が急激に悪化する方は少なく、徐々に症状が進行していくことが多いようです。

日々の生活の中で、視野狭窄夜盲症が徐々に進行していく恐怖感や、白内障が人よりも早く現れるかもしれないという恐怖感、そして何よりも対処法や治療法がないという絶望感を感じていらっしゃるようです。

そんな網膜色素変性症の患者さまに、まだやるべきことがあるとするならば、それは鍼灸治療ではないかと、私は思うのです。

 

来院されている患者さま

 

当院には、幼稚園~50代までのかなり広い年齢範囲の網膜色素変性症の患者さまが来院されます。

60代以降の方がいないのは、恐らくお仕事を引退されているため、日常の視力に対する必要性が多少低くなったことと、経済的な理由などがあるのだと思われます。

 

当院では、年齢や状況により、鍼灸治療の目標を定めて、それを一つの中間目標として、施術を行っています。

成長期以前のお子さんに関しては、出来るだけ成長期の内に視機能を伸ばしておいて、網膜色素変性症が発病した後、徐々に下がってくる能力に、余裕を持たせておく必要があります。

小さいお子さんは、視神経や網膜も未熟で、視機能の伸びしろが大きいため、この時期に能力を高めておくことは、とても意義のあることです。

 

青年期以降に発症されて来院される方の場合も、第一の目標は視機能を高めることになりますが、成長期ほどの視機能の伸びはありません。

ただ自分の持っている能力を十分に発揮していない場合には、最初の数か月間は視機能の向上が見られます。

その中でも多いのが、視力の向上、視野の拡大、夜盲症の軽減、眼精疲労の回復などです。

網膜や視神経自体の回復は、かなり小規模になりますが、全体的な視機能としては、一定期間回復することが多いようです。

 

現代社会では、多くの学生や勤労者が目を酷使するため、症状の進行を防ぐためには、日々の疲労を溜め込まずに、その都度取り去ることがとても大事になります。

網膜や視神経周囲の血流が悪い状態では、炎症や栄養不良から活性酸素が起こりやすく、より症状が進行しやすくなるからです。

鍼灸治療では、定期的に施術をすることで、眼底部の血流を増加させ、視細胞の変性を最小限に抑えることを目標にします。

最も目を酷使する時期ですし、実際に発病が分かることが多い時期ですから、この時期のケアは非常に意義が大きいと思います。

 

40代以降になってくると、症状の進行が急に進むこともありますので、悪化防止のためにも鍼灸治療がお勧めです。

色々な患者さまに伺うと、まだやれることがあるというだけでも、日々の生活に対するモチベーションが変わってくるそうです。

「病は気から」ですので、ぜひ前向きな思いを作るためにも、鍼灸治療をお勧めいたします。

網膜色素変性症に鍼灸はどう働くのか

 

鍼灸治療の特徴は大きく二つあり、自律神経に対する働きかけと、脳に対する働きかけです。

鍼灸治療がこの二つに働くことで、網膜色素変性症の方には、どういったメリットがあるのかを、ご説明いたします。

 

【自律神経に働く】

 

鍼灸治療は、自律神経を調整する働きがあります。そのため、血管の太さを調整することで、網膜や視神経に栄養や酸素を送る血流量を増やすことで、変性を最小限に抑えます。

 

【脳に働く】

 

神経細胞と非常に強い関連があるものに、BDNF(脳由来神経血管因子)というものがあります。

BDNFは中枢神経の活性や再生に関係する物質で、BDNFが少なくなると、中枢神経系に障害が出ることが分かっています。

精神科疾患ではBDNFが少なくなりますし、視神経に問題が起こる眼科疾患でも、BDNFが少なくなるようです。

動物実験などでは、網膜色素変性症患者に対して、BDNF遺伝子を注入したり、BDNFを増やすように電気刺激を加える試みが行われています。

 

網膜色素変性症における脳由来神経栄養因子BDNF)の保護機能に関する論文

【Construction of a plasmid for human brain-derived neurotrophic factor and its effect on retinal pigment epithelial cell viability.】
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/28197196

BDNFの注入がラットの網膜色素変性症の視細胞の変性を予防出来るかに関する論文

【Rescue of photoreceptors by BDNF gene transfer using in vivo electroporation in the RCS rat of retinitis pigmentosa.】
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/19839873

 

鍼灸治療は、このBDNFを増やす働きがあることが分かっているため、視神経や網膜に問題が起こる眼科疾患に対して、血流以外の部分でも、脳に直接働き掛けることが出来ると考えられます。

またこのBDNFは、うつ病などの精神科疾患とも関係が深く、うつ病の方ではBDNFが少なくなり、脳の働きが低下することが分かっています。

慢性的に進行する網膜色素変性症の患者さまでは、将来への不安感から、とても落ち込みやすく、うつ症状を発症する方もいらっしゃいます。

こうした前向き感がなくなった状態から、精神的に回復するためには、BDNFの働きが欠かせません。

鍼灸治療では、こうしたうつ症状に対しても働き掛けるため、眼科疾患自体だけではなく、眼科疾患によってもたらされる、精神的な落ち込みに対しても働き掛けることが出来ます。

 

実際の眼科鍼灸

 

実際の眼科鍼灸では、目的別で言うと、体調を回復させる目的で行う鍼灸と、眼底部の血流を回復させる鍼灸治療を行います。

部位でご説明すると、後頚部、頭部、眼の周囲、腹部、背部、手足が施術の範囲になります。

 

その中でも、目の周囲、後頚部、手足に関しては、網膜の血流を良くするツボが多くあるため、常用することになります。

腹部と背部、頭部に関しては、その方の体調や精神的な状況により、使う頻度はかなり変化します。

 

【目の周囲】

 

目の周囲には、眼底部の血流を増やすツボがたくさんあります。目が疲れた時に、思わず手が行く場所は、基本的にそういったツボであることが多いようです。

写真では両横に刺していますが、その時の反応によって、上側や下側にも刺すことがあります。

 

【後頚部】

 

後頚部にも、網膜の血流と関係するツボがたくさんあります。また、OA作業が多い人は、うつむき加減で作業を行うことが多いため、後頭部から後頚部の筋肉が固くなりがちです。

そうした筋肉の凝りなども、同時に鍼灸治療で取り去ります。

この写真では2本の鍼が刺さっていますが、状況により6~8本くらいまで増えることもあります。

首の凝りを無くすだけでも、目の奥が軽く感じるようになります。

 

【手足】

手や足に刺す鍼は、脳に働きやすく、東洋医学では本治法と呼ばれます。

私の理解では、本治法とは脳に働く鍼灸治療ではないかと考えています。そのため、遠隔的に全身のあらゆる部分の調整が可能なのではないでしょうか。

本治法で、ホルモン分泌や自律神経の調整が出来ることを考えれば、脳の視床下部に強く働くことが出来るのではと予想されます。

情動や内分泌は眼科疾患とも多いに関係するため、眼科鍼灸においても、本治法は欠かすことが出来ない施術であると言えます。

ただ目の周囲に刺すだけでは、一時的な血流増加に過ぎませんが、心身の調整を本質的にすることで、持続的な働きを得ることが出来ます。

 

特に長期にわたって施術する場合には、この本治法の有無が、症状悪化を防ぐ切り札になるのではと考えております。

ですから、眼科疾患の西洋医学的な理解と共に、東洋医学的な理解や施術も、非常に大事になってきます。

 

当院でも、長い通院患者さまでは、10年単位で来院されておりますが、目立った症状悪化や日常生活能力の低下は見られていません。

眼科鍼灸を継続して受けて頂いて、網膜色素変性症の患者さまが安心して生活して頂ければと思っています。

 

眼科鍼灸の治療計画

 

通常は、来院から3か月間は、週に1~2回の頻度でご来院して頂きます。その後、状態や目的により頻度を変えたり、そのままもう暫く同じ頻度で様子を見ることがあります。

全ての場合で、頻度は話し合いにより決定しますので、私が一方的に頻度を決めることはありません。

網膜色素変性症では、鍼灸治療を継続して受けて頂くことが大事ですので、無理な頻度で短期間だけ受けて頂くような予定は組みません。

私は、少しでも良い状態を長く続けるために、眼科鍼灸を受けて頂きたいと思っています。

不明点などについては、ご来院を検討中の方でもお答えしますので、お気軽にお問い合わせ下さい。

電話でのお問い合わせに関しては、施術中のことがありますので、こちらから掛け直しをさせて頂く場合があります。

メールや問い合わせフォーム、LINEの返信に関しては、出来るだけ早くさせて頂きますが、1~2日のお時間を頂くことが多くなります。

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鍼灸ひより堂