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自律神経失調症と鍼灸治療

自律神経失調症の正体

 

自律神経失調症という名称はよく聞くと思いますが、実際に自律神経失調症を正しく理解出来ている人は、そう多くはありません。

自律神経というと、「神経質なこと」や「メンタルなこと」を表すと思っている人が多いですが、実際の自律神経とは、目に見える神経組織や自動的(自律的)に働く神経系の働き全体を表しています。

つまり自律神経失調症とは、そうした働きが乱れていることで、精神的なストレスのというは、そうした乱れの原因の一部ということになります。

 

自律神経はその働きにより、交感神経と副交感神経の二つに分けられますが、両方とも人体を解剖することで、実際に目にすることが出来ます。

自律神経失調症を発症すると、この神経繊維が繋がっている、内臓や組織がうまく働かなくなってしまいます

 

 

こうした自律神経をコントロールし、命令を出しているところは、脳の視床下部というところにあります。

自律神経は、視床下部からの命令を、内臓や血管などに伝える役割しかありませんので、本当の自律神経失調症の正体とは、視床下部がうまく命令を出せなくなった状態だということになります。

ですから、自律神経失調症を正しく理解するためには、この視床下部を抜きには語ることが出来ないのです。

 

視床下部と脳内リンク

 

脳の視床下部というところは、脳の中でも最も奥深い中心部分にあります。

この脳の奥深くには、視床下部以外にも、とても重要なところが複数あります。

 

最近の研究では、脳はその部分単独で働くのではなく、脳の他の色々な部分とリンクしながら働いていることが分かってきました。

視床下部もその例外ではありません。

 

視床下部がリンクしながら働く部分として有名なのは、視床下部の上部にあり、感覚刺激の中継地である視床、そして記憶の中枢である海馬、情動活動を司る扁桃体などです。

こうした部分とリンクしながら働くことで、脳は様々な働きを、イキイキと行うことが出来ます。

 

 

ストレスが自律神経に影響

 

自律神経失調症は、ストレスにより発症することが知られています。

このストレスにより自律神経失調症が発症するというのも、先ほどご紹介した脳内リンクと関係しているのです。

 

もしあなたに、精神的(肉体的でも)なストレスが降りかかったとしましょう。

そのストレスに最も反応する部分は、脳の扁桃体という部分です。

 

扁桃体は情動活動を司るため、ストレスを感じてイライラしたり、クヨクヨしたり、落ち込んだりすると、それに対して抗ストレスホルモンを分泌してくれます。

また扁桃体に伝わったストレスは、近くにある視床下部にも影響して、視床下部の働きに乱れを生じさせます。

視床下部は、生命活動全般の中枢でもありますので、視床下部の働きが乱れることで、体には様々な変化が起こります。

例えば、心拍数が乱れ、ホルモン分泌が乱れ、発汗が乱れ、血行が乱れます。

これらは全て、視床下部が自律神経に対して命令を出し、更に各器官に伝えられることで起こっている働きだからです。

 

ストレス記憶が原因になることも

 

脳や体に対するストレスが原因で、扁桃体と脳内リンクしている視床下部が影響を受けることは、上でご説明しました。

そして先ほど、もう一つリンクしやすい部分として、記憶の中枢である海馬があることもご紹介しました。

この海馬は、過去に受けたストレス情報を記憶する部分ですので、ストレスを受けた状況に近い状況(人・匂い・音・季節・刺激など)を感じると、同じような反応を示すことがあります。

例えば、過去に仕事で失敗をして強いストレスを受けたことがある方が、同じような仕事を任されることで、過去の記憶が呼び起こされ、自律神経失調症の症状を発症することがあるのです。

 

ストレスと前頭前野

 

脳はストレスに対して無防備に、ただ乱れ失調するだけではありません。

先ほどご紹介した扁桃体や視床下部などは、脳としては比較的古い働きを司る脳だとされています。

古い脳とは、生きていくための機能や、欲求などの本能にまつわる部分です。

 

それに対して、脳機能としては比較的新しく、ヒトが人として生きていくために必要な、論理的な思考をするための脳が、前頭前野(前頭葉)です。

この前頭前野は、扁桃体とリンクすることで、扁桃体で感じた本能的ストレスを、論理的に解決する働きがあります。

 

「仕事でこうしてストレスを感じているが、ずっと続くわけではない。うまく乗り切れば次からは楽になるぞ!」

 

こうした論理的な思考により、ストレスをうまく回避したり、モチベーションに変える働きがあるのです。

 

ただあまりにも長期的なストレスや、その人の調整能力を超えてしまうと、前頭前野と扁桃体の脳内リンクが途切れてしまうことがあります。

この状態になると、当然ながら自律神経失調症の症状が強く出てきますし、人によってはうつ病などの精神科疾患を発病することもあります。

 

 

鍼灸は途切れた脳内リンクを再生

 

鍼灸治療には、ストレスや辛い体験で途切れてしまった脳内リンクを、再生する働きがあるようです。

それでは、どのように鍼灸治療が脳内リンクを再生していくのかを、脳内リンクが途切れたところから、順を追ってご説明しいたします。

 

先ず本能的に感じる不安や漠然としたやるせない感覚(いわゆるストレス)は、脳の扁桃体や視床下部に影響を与え、扁桃体からはドーパミンというホルモン分泌を、そして視床下部からは副腎皮質に対して、コルチゾールというホルモンの分泌を命令します。

 

 

扁桃体から分泌されるドーパミンは、前向き感を作るホルモンで、ストレスにより落ち込みがちなメンタルを前向きにしてくれる働きがあります。

一方コルチゾールは、特に肉体的なストレスに対して、外敵と戦うために必要な体の準備をするためのホルモンです。

 

こうしたホルモン分泌は、短期的なストレスに対してであれば、とても上手く対応してくれます。

ところが長期的なストレスや、例え短期的であっても繰り返されるストレスの場合には、徐々に対応が出来なくなってしまいます。

すると、ドーパミンの分泌や働きが低下し、コルチゾールは過剰分泌となり、返ってストレスの影響を受けやすい状態になってしまいます。

 

その結果が、脳由来神経栄養因子(BDNF)の低下と、脳内リンクの破損です。

BDNFとは、神経の働きに関係する物質で、BDNFが正常に分泌されることで、様々な神経はその働きを正常に行うことが出来ます。

 

そして副腎から分泌されるコルチゾールの分泌量が多くなると、BDNFの分泌が抑制されることが分かっています。

更にBDNFの分泌量が少なくなると、前頭前野と扁桃体の脳内リンクが壊れてしまい、扁桃体が受けたストレスを、前頭前野で論理的に自己解決する力が衰えてしまいます。

またコルチゾールには、扁桃体で分泌されるドーパミンの働きを低下させる働きがあることも分かっています。

すると情動的な感情のみが強調されることになり、どんどん神経質な傾向が強まってしまいます。

 

 

うつ病の治療薬である向精神薬には、脳内でのBDNFを増やす効果が認められており、これが脳内リンクを再生すると考えられています。

また鍼灸治療にも、この脳内で減ったBDNFを増やし、前頭前野との脳内リンクを再生する働きが確認されています。

そのため、鍼灸治療と向精神薬は相性が良く、併用することでより相乗効果を生むと考えられます。

 

 

投薬を利用しない場合には、鍼灸治療単独でBDNFを増やすことで脳内リンクを再生し、治りにくい自律神経失調症や精神状態を良くすることが出来ます。

その場合、回復はよりゆっくりしたペースとなりますので、3か月以上をかけて緩やかに回復するイメージを持って頂く必要があります。

 

自律神経失調症にしろ精神科疾患にしろ、症状が余りにも強い場合には、投薬と鍼灸治療を併用されることをお勧めします。

もし現在、投薬を受けていて、投薬を早く止めるために鍼灸治療を受けたいという方は、一旦投薬をしている状態で来て頂いて、鍼灸治療を受けて頂きながら徐々に減薬する方が、返って早く投薬を止めることが出来ます。

 

向精神薬などの投薬の中には、急にやめるとリバウンド症状が出てしまい、返って治りが悪くなるものもありますので、必ず投薬を止める前に、主治医か当院にご相談下さい。

最善の方法を話し合いで決定し、最も楽に早く改善する方法を、共に探していきたいと思います。

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鍼灸ひより堂