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偏頭痛(片頭痛)の痛みを薬を使わずに和らげる鍼灸治療

薬を使用せずに偏頭痛を治しましょう

 

偏頭痛(片頭痛)は、臨床上とても多く見られる頭痛の一種です。病院にかかっていない、潜在的な患者数も含めると、かなり多くの患者数がいると思われます。

現在、偏頭痛の治療薬としては、トリプタン系薬剤と呼ばれる薬が使用されています。この薬は、効果的に働く一方で、飲み過ぎてしまうことで、薬が原因の頭痛を起こすこともあります。

そのため、投薬以外で偏頭痛の症状を和らげ、出来れば完治させるためにも、鍼灸え治療をお勧めしたいと思います。

 

偏頭痛のことを知りましょう

 

偏頭痛を治すためには、まず偏頭痛のことを少し知っておく必要があります。偏頭痛は、片頭痛とも書きますが、片側に起こる頭痛という意味があるようです。

ただ実際には、両側に起こることもあり、必ずしも片側だけに起こるということではありません。

また、頭痛が起きる前に特徴的な症状があったり、動かすと痛みが強くなったりという特徴がありますが、ここでは詳しくご説明しません。

 

女性ホルモンが偏頭痛の原因に

 

ただ一つ大きな特徴としてご紹介したいのは、女性に多いというものです。では、なぜ女性に偏頭痛が多いのでしょうか?

それは、女性ホルモンの影響が大きいためです。女性ホルモンであるエストロゲンは、脳内物質であるセロトニンと密接な関係があります。

エストロゲンの分泌量が少ないと、セロトニン神経機能が低下します。すると、血管が強く拡張するため、片頭痛が起こりやすくなります。

最初にご紹介したトリプタン系薬剤は、選択的なセロトニン受容体作動性薬剤といい、セロトニンンの働きを強めることで血管を収縮させ、偏頭痛による拍動痛をなくす薬です。

エストロゲンは、生理周期の中で分泌量が変動するため、セロトニンの働きに影響を与え、偏頭痛の原因になると考えられています。

 

偏頭痛は三叉神経が原因

 

偏頭痛には複数の原因があるとされていますが、その中でも、三叉神経という神経線維が発症と大きく関わっています。

三叉神経は、脳神経の一つで、耳の前あたりから3つに分岐して、目の周囲と眼球に行く眼神経、上あごと上の歯髄(歯の神経)に行く上顎神経、下あごと下の歯髄に行く下顎神経になります。

この三叉神経に何らかの問題が起こり、それがきっかけで三叉神経の血管が拡張や炎症が、連鎖的に脳の血管にも広がっていくのではないかと言われています。

そのため、目の知覚神経である眼神経に炎症を持つことで、目の奥の痛みや、こめかみ辺りの痛みを感じても不思議ではありません。

 

血管の拡張や炎症が痛みの原因のため、マッサージや入浴などで血管を拡張すると、痛みをより強くすることがあります。

肩こりや首こりなどの、筋緊張が原因で起こる緊張性頭痛では、マッサージによって痛みが軽くなるため、同じように考えてマッサージを受けると、余計に痛くなるということです。

 

鍼灸治療は、マッサージと同じように血行が良くなるので、偏頭痛に対して鍼灸治療をすると、血管が拡張して余計に痛くなるのでは、と思われるかもしれませんが、実際には違います。

鍼灸治療は、自律神経のバランスを整える施術のため、一方的に副交感神経を高めるわけではありません。

鍼灸治療は、自律神経のバランスを整えることで、血管に起こった過剰な血管拡張を抑制します。

つまり、過剰な副交感神経の活動を抑え、交感神経を働かせることで血管を収縮させます。

こうした過剰な副交感神経の活動は、アレルギー疾患(喘息・アトピー)などでも見られますが、鍼灸治療はこうしたアレルギー疾患の時と同様に、過剰な血管の拡張を抑制してくれます。

 

アトピー性皮膚炎で炎症を持った皮膚に鍼をすると、その部分を中心に皮膚が白くなる現象を見ることが出来ます。

これは、過剰な副交感神経の興奮が抑えられ、皮膚の血管が収縮し、アトピーの特徴である、皮膚の赤みが抑えられた結果です。

 

これを同じことが、鍼灸治療を受けた偏頭痛患者の、脳内や三叉神経の血管でも起こると考えられます。

そのため、比較的即効性が高く、痛みを起こしかけた時点で受けて頂くと、高い鎮痛作用が期待出来ます。

 

偏頭痛にはストレスも大敵な理由

 

偏頭痛の原因の1つに、ストレスの存在が挙げられます。一時的なストレスは、偏頭痛の原因にはなりませんが、継続したストレスがきっかけになり、偏頭痛を起こすようになることがあります。

偏頭痛の発症と深い関係があるとされる、脳内物質のセロトニンは、脳がストレスを感じた時に分泌される物質です。

短期的や単発のストレスの場合には、セロトニンは十分に分泌出来ますが、継続してセロトニンが分泌されるようになると、セロトニンを受け取る受容体の機能が低下するようになります。

また、セロトニンを分泌する機能自体が障害され、必要なセロトニンが十分に分泌なければ、血管の拡張を抑えることが出来ずに、偏頭痛を起こすようになってしまいます。

 

同じくセロトニン不足が原因の1つとされるうつ病では、偏頭痛の発病率が高く、偏頭痛とうつ病の相関関係が示唆されています。

つまり、偏頭痛をお持ちの方の中には、一定数のうつ病患者や、うつ病の予備軍が含まれている可能性があるということです。

偏頭痛をただの頭痛と思わず、積極的に治療を進めていく必要性があります。

 

国内外の鍼灸論文を見ると、セロトニンやドーパミンなどの脳内物質の受容体の働きを、鍼灸治療で高めることが出来ると書かれたものがあります。

<参考リンク:(臨床神経 2012;52:1294-1296)

また分泌に関しても、鍼灸治療により高めることが出来るようですが、薬物療法と比べると分泌量の変化は少ないことが分かっています。

そのため、うつ病などの治療としては、薬物療法を第一選択としながら、鍼灸を補助療法受けて頂き、投薬量を減らす役割や、完治に向けた減薬のために利用するのが良いと思います。

 

偏頭痛の場合にも、投薬量が増えると薬剤性の頭痛が起こるため、痛みの強い人に関しては、投薬量をコントロールし、完治を目指すために、鍼灸治療を利用して頂ければと思います。

発症から日が浅く、偏頭痛の頻度も多くない人では、鍼灸治療のみでも完治を期待出来ます。

 

実際の片頭痛の鍼灸治療

 

当院で行う偏頭痛の鍼灸治療では、頭痛を起こす原因に近い三叉神経の周囲と、頭痛を起こしている頭部や頸部に行う局所的な施術と、東洋医学的な治療による全体治療に分けて施術をします。

 

局所への施術

 

目の周囲や後頚部の施術は、副交感神経が働き過ぎたり、炎症を持つことで拡張し過ぎた血管を収縮させる働きがあります。

特に目の奥が痛むような方には、目の周辺に行う施術は即効性が高いため、患者評価の高い施術です。

後頚部の施術は、緊張性頭痛の予防のためにも行います。偏頭痛にお悩みの方の中には、緊張性頭痛も併発している方が、とても多くいらっしゃいます。

そのため、一般的な鎮痛剤が効く、緊張性頭痛にもお悩みの方には、後頚部や肩の施術は欠かせません。

偏頭痛の施術と併用することで、頭痛全般を防ぐ働きがあります。

 

東洋医学的な全身の調整

 

東洋医学では、病名が付くまでにはいたらない、未病状態の体調不良や、病名にこだわらずに体調不良を把握することが出来ます。

それを可能にしているのが、脈診や舌診といった、伝統的な東洋医学的診察法です。

 

脈診は、自律神経の変化を敏感に捉えて、検査機器を使わずに、素早くからだの変化を観察することが出来ます。

また舌診は、血液の循環や水分代謝、消化器の状態を、視覚的に捉えることで、客観的な評価を行います。

さらに、脈診では短期的な体調の変化を、舌診では長期的な体調の変化を把握し、からだの内側の変化を捉えます。

 

もう1つの東洋医学的な診察の特徴は、こうした体調の変化をリアルタイムで捉えることが出来るということです。

そのため、施術直後のからだの変化を知ることで、鍼灸治療がからだに与えた影響を知ることが出来ます。

施術と評価を繰り返すことで、毎回適切な刺激量や施術部位を探りながら、鍼灸治療を受けて頂けます。

 

東洋医学独特の考え方「本治法」とは

 

東洋医学的な鍼灸治療では、本治法を、最も重要な施術として位置付けています。

本治法とは、体調の変動や病気の根本的な治癒を目指すための、五臓のバランスを整えるための施術です。

脈診や舌診も、元々は五臓の変動を知るための診察法ですので、東洋医学的な診察と本治法はセットで成り立っています。

 

本治法では、手足の要穴と呼ばれるツボがよく使用されます。要穴は、肘や膝から下に存在するため、当院の治療着は、上下とも半袖になっています。

炎症性の疾患や、上半身に症状が強く出ている場合には、手を使用することが多いですが、足に鍼を刺すことで、上半身に偏った気血を下に降ろすこともあります。

痛みや症状があるところに鍼を刺すと、逆に血流が良くなり過ぎる場合もありますし、偏頭痛では過剰な血管の拡張が原因ですから、頭部や首よりも、手のツボで遠隔的に頭痛を取る方が安全なこともあります。

 

偏頭痛は、ストレスとの関連が深いため、東洋医学では肝や心、肺、心包に属するツボを使用すると、比較的即効性が高いようです。

ツボとしては、肝経の太衝穴、行間穴、心経の通里穴、神門穴、肺経の列缺穴、心包経の内関穴などが、よく使用されます。

また痛みの出る部位と関連が深い、胆経の陽陵泉穴や丘墟穴、三焦経の外関穴、大腸経の合谷穴、小腸経の後溪穴も使用されます。

こうした多くのツボの中から、脈診や舌診などの東洋医学的診察により問題の経絡を見付けて、適切なツボを選択します。

 

本治法は、あまり数多く刺さず、本当に問題となっている原因に対して、シンプルに少なく刺すのが原則です。

これは本治法の一例です。この写真の方の場合、腎経の復溜穴と脾経の公孫穴を使用しています。

復溜穴は、腎の冷えを無くすために腎陽を高める働きがあります。また公孫穴は、脾と胃の経絡を繋ぐ働きがあるため、二つの経絡を同時に調整出来ます。

公孫穴は、精神的な失調で起こる、脾の変動を調整する働きが強いため、機能性胃腸疾患(神経性胃炎や過敏性腸症候群など)にもよく使用されます。

精神的な要素が強い偏頭痛でも、公孫穴は使用しやすいツボの一つです。

 

東洋医学的な施術では、局所治療と違い、臓腑との関連や、全体のバランスを重視し、根本的な体質改善や完治を目的に行います。

 

偏頭痛の症例

 

大阪府在住  30代女性

 

以前から肩こりや首こりが強く、天気の変わり目に、頭痛が出ることがあったそうです。

仕事柄、PC作業により目を使うことも多く、年末に仕事が忙しくなるころから、頭痛が天気と関係なく出るようになりました。

年末年始の休日中は、肩こりもあまりなかったのですが、新年の仕事が始まると同時に、プライベートでもトラブルがあり、頭痛が起こるようになりました。

以前の頭痛は鎮痛薬で軽くなっていましたが、今回の頭痛では鎮痛薬が全く効果がなく、リラックスのために入浴すると余計に痛くなるようでした。

 

そこで頭痛外来を受診したところ、偏頭痛だと診断され、偏頭痛の治療薬を処方されました。

薬を飲むと偏頭痛は和らぎますが、薬を飲む頻度が徐々に多くなったため、根本的な治療法を探していたところ、鍼灸治療のことを知り、友人に紹介され、当院に来院されました。

 

<初診時>

 

初診時には、週に1~2回は頭痛があり、その度に薬を飲んでいる状態でした。仕事が忙しく、PC作業も長時間に渡るということで、眼精疲労も辛いということでした。

自覚的に首や肩の凝りがあり、私が触診した限りでも、とても強い筋肉の張りを感じました。

 

睡眠時に歯ぎしりをしているようで、歯科では、マウスピースを勧められたことがあるそうです。

偏頭痛の原因となる三叉神経は、あごの周囲を走行しているため、偏頭痛のきっかけとして、顎関節のトラブルも考えられます。

 

脈診では、かなり細く固い脈を感じました。こうした脈は、精神的な緊張状態が、とても高いことを表しています。

また舌診では、少しくすんだ紫に近い色だったため、血液循環が滞った状態だと思われました。

 

東洋医学的には、気滞血瘀(きたいけつお)の状態が強く見られましたので、気血の循環を良くしながら、のぼせを抑える施術を計画しました。

 

<鍼灸治療>

 

◎うつ伏せでの施術

 

後頚部と肩の筋緊張が強い部分には、直接的に鍼を刺しました。使用した鍼は、長さ40㎜、太さが0.2mmのものです。

背部では、肝兪というツボに鍼を刺しました。ストレスが溜まっている人では、強く反応が出るツボです。

 

◎仰向けでの施術

 

仰向けでは、目の周囲2か所に、極細の短鍼を刺しました。また、手首にある内関穴という、気滞を取り除くツボに鍼を刺しました。

内関穴は響きやすいため、ごく浅く心地よい程度の刺激量に押さえました。

 

また足首の周辺にある、三陰交穴には少し響く程度の鍼をさせて頂きました。三陰交は、血を作るツボでもあり、血を下すツボでもあります。

今回は、血を巡らせながら下すために、このツボを選択しました。

 

来院時には頭痛が無かったため、施術後の頭痛の出方を観察して頂くことになりました。

通院頻度としては、週1回を基本とし、痛みがあるときには随時来て頂くようにしました。

 

<その後>

 

初回の施術後、仕事が忙しい時に、軽い頭痛があったそうですが、これは一般的な頭痛薬で痛みが無くなったそうです。

偏頭痛の治療薬は、その後飲んでいないようですが、お守り代わりに持っているそうです。

 

鍼灸治療を始めてから、思いがけず生理痛がほとんどなくなり、生理痛でも痛み止めを飲むことが無くなったということでした。

生理痛も、ストレスによる自律神経や脳内物質の影響を受けますので、原因が同じようなものは、鍼灸治療で十分に改善されるようです。

 

通院頻度を週1回の状態で、約2か月間通院して頂き、その後は月に1~2回の通院頻度で通院して頂いています。

完全に通院を止めることは、心理的にも不安なため、無理のない通院頻度で、今後も通院を続けて頂く予定です。

 

<まとめ>

 

・偏頭痛は三叉神経のトラブルがきっかけになる。

・偏頭痛には一般の痛み止めが効かない。

・偏頭痛は、血行が良くなると悪化する。

・偏頭痛はストレスが発症の原因になる。

・偏頭痛には脳内物質セロトニンが関係している。

・偏頭痛の投薬治療は頭痛の副作用が出ることもある。

・偏頭痛と緊張性頭痛が合併して出ることもある。

・鍼灸治療は偏頭痛に即効性がある。

・偏頭痛の鍼灸は局所と全体の両方でアプローチする。

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鍼灸ひより堂