#
#

ブログ

blog

起立性調節障害により通学困難となっていた小学生の鍼灸治療例

眼圧の上昇、胸の気持ち悪さ、夜が寝られない…

 

体調不良がどんどん悪化

 

この症例の患者は、市内に住む小学校6年生の女児でした。小学校5年生の頃から、週に1回ほど気分が悪くなることがありました。

5年生の1月からは、体調不良が更に悪化し、起床時が特につらいため、徐々に遅刻して登校するようになりました。

授業中、座席に座っていると眼の奥が痛み、座っているのも辛いため、眼科を受診したところ、眼圧が40に上がっていたため、点眼薬で眼圧を下げることになりました。

点眼薬を使用すると眼圧は15に下がったのですが、肝心の眼痛は全く改善されませんでした。この時、緑内障のような兆候はなく、自律神経のトラブルではないかということだったそうです。

眼圧が下がっても眼痛があるため、眼科ではどうしようもないと言われたそうです。その内、朝方はからだが全く動かせず、夜になると元気になるようになりました。

学校には更に通いづらくなり、休む日も出るようになってしまいました。この女児の母親が、以前患者として通院されていたため、当院を受診することを決めたそうです。

 

初診時のお話

 

初診時、患児の母親である元患者さまと、10数年ぶりにお会いしました。前回、お母様と最後にお会いしたのは、この女児がまだお腹の中にいる時でした。

今回、患者さまのお母様としてご来院頂いたのですが、「この子があの時の逆子です(笑)」と言われて、その時のことを思い出しました。

最期に施術したのは、今回来院して頂いた女児への、逆子治療の時だったのです。

 

始めて女児と会った時の第一印象は、「とても頭のいい大人っぽい子どもだな。」というものでした。

受け答えが明確で、中学生と言ってもおかしくないくらいの印象で、趣味や考え方も、同年代よりはかなり大人っぽい感じがしました。

第二次性徴も既に起こっていましたが、体調不良を訴え出してから、始まっていた生理も止まった状態でした。

 

もう1つ気になったのは、学校に対して、積極的に通いたいという欲求が薄いということです。

早く元気になって学校に行きたいかと聞くと、どちらかといえば、自宅で趣味の音楽でも聴いている方が良いという返事でした。

通学困難児の中には、通学自体に強い欲求がない子どもが多く、いじめられるなどのハッキリした原因があるわけではないのですが、逆に積極的に通いたい理由もない場合が多いようです。

 

からだを触ると、首や肩の凝りも強く、足もカチカチに強張っていました。首肩の筋緊張や、交感神経が緊張したことによる頭痛や眼痛が考えられたため、治療方針を次のように立てました。

 

1.自律神経を整えることで筋緊張緩和

2.生活リズムをしっかり付ける

3.生理周期を整えることで、ホルモンの影響による頭痛を無くす

 

1の自律神経を整えると、血液循環が良くなるため、筋肉の緊張が解け、老廃物も早く取り除いてくれます。首や肩の筋肉がほぐれるだけも、頭痛や眼痛が無くなることもあります。

2の生活リズムは、とても大事なことですが、体調を良くすることと同時進行でなければ、生活リズムだけで症状を改善するのは難しいことです。

3の生理周期に関しても、1の自律神経や2の生活リズムとも関係が深いため、結局のところ1~3を同時に進めることで、スムーズに体調を回復出来るということです。

 

実際の鍼灸治療

 

初めての鍼灸治療ですが、既にからだが大人に近いため、小児針ではなく、普通の鍼灸治療を行いました。

眼圧は下がったとはいえ、点眼薬を使用した上でのことですから、眼科鍼灸も併せて行いました。

初回の鍼灸治療

 

目の周囲に、長さ15mmの極細鍼で1mm程度鍼を刺し、足には血の滞りや、のぼせを無くすツボに鍼をしました。

これ以降、週に1回を基本として施術することにしました。

 

2回目の鍼灸治療

 

前回の施術後、学校で過ごすときに、音が大きく聞こえて辛いという訴えがありました。

恐らく、鍼灸治療にかかったことで、自分が病気であるという意識が強くなったためだと思われます。

客観的に見ると、筋肉の緊張感や東洋医学的な診察では改善が見られたため、しばらくは色々な症状が出て来るとご説明しました。

 

また同じクラスに気が合わない子がいるようで、それが凄く気に掛かるということも話していました。

こうしたことも、通学の支障になることもありますので、よく患児とはよくコミュニケーションを取る必要があります。

 

鍼灸治療としては、前回の仰向けでの施術に加え、うつ伏せで首の周囲や背中の施術も加えました。

 

3回目の鍼灸治療

 

数日前に調子が悪い日があったが、来院してくれた日は調子が良いと言っていました。

施術は前回と同様です。

 

4回目の鍼灸治療

 

あまり体調が良くないため、学校には週の内2日しか行っていないということでした。

前回の施術に加えて、腹部の施術も加えました。

母親の落ち込みが強いですが、からだは良くなっているため、あまり一喜一憂することはないとご説明しました。

とは言え、やはり母親は、わが子の不調は気になっても仕方ありません。

今回のお子さんの場合、メンタルな要素と、生活リズムの要素が強いため、様子を見ながら気長に治すことを提案しました。

こうした状態であれば、からださえ元気であれば、治る時にはあっという間に治るというお話もしました。

 

5回目の鍼灸治療

 

学校に行くことがいよいよ困難になりました。お子さんに話を聞くと、嫌な子に会いたくないということでした。

治まっていた眼痛や頭痛も、少しぶり返してきたようでが、原因が分かっているため焦りませんでした。

 

鍼灸治療は同じ内容です。

 

6回目の鍼灸治療

 

学校の長期休み前になり、少しずつ変化がありました。精神的な痛みや生活リズムの乱れの傾向が強く見えてきましたので、本格的に生活リズムの改善を行うようにしてもらいました。

夜間の飲食を無くし、無理にでも朝目を覚ましてもらうようにしました。すると、空腹で目が覚めるようになってきました。

 

目の周囲の鍼を止め、背部と下肢、お腹の施術だけにしました。

 

7~9回目の鍼灸治療

 

学校が長期休暇に入り、朝、普通の時間に起床出来るようになってきました。

施術内容は前回と同様、背部と下肢の施術ですが、腹部の施術も無くしました。

6回目の鍼灸治療後に、久し振りに生理が来ました。ホルモン系も徐々に元に戻っているようです。

 

10回目の鍼灸治療

 

朝起きて夜寝るという、当たり前の生活になっているようです。眼痛は殆どありませんが、ごくたまにあるそうです。

長期の休暇が終わりましたが、1週間続けて学校に行けたそうです。話を聞くと、自分でも学校に行くのが楽しいようで、もう大丈夫とのことでした。

念のため、2週間後に来院予約を取ってもらいました。

 

<11回目随時更新予定>

 

考察

 

一口に自律神経の失調と言っても、原因も症状も様々です。今回の場合には、朝起きることが困難で、夜になると元気になるという、起立性調整障害の症状が強く見られました。

また、眼圧が上がって目が痛むという、眼科症状もありましたが、結果的には、眼圧を下げても眼痛や頭痛が治まらず、眼科では手に負えないという事態になってしまいました。

 

通学困難を伴う起立性調節障害では、今回のような自律神経の失調症状(身体症状)と、何らかの原因で学校に通いたくないという、メンタルな症状が合わさって現れることが多いようです。

どちらの症状が強いかによって対処の仕方は変わりますが、私たち鍼灸師は、あくまでもからだの面から鍼灸治療を加えながら、心の問題にもアプローチします。

 

最初から、「学校に通えないのは心の問題」というのは乱暴ですし、心の問題は放っておいて、からだだけを必死で治そうとしても、学校には通えない日々は結果的に長くなります。

私の場合には、どの程度の負荷を心身に与えて良いのかを、からだを通じて感じ取り、復学に向けてスケジュールを立てます。

今回の場合にも、実際に眼圧が上がるという身体症状にまで現れましたが、根本的な原因としては、人間関係の問題で、学校に通いたくないという気持ちの問題がありました。

この通学したくない気持ちの問題は、比較的早い段階で分かっていたのですが、生活リズムの乱れや自律神経の失調症状も見られたため、敢えて同時進行で解決をするようにしました。

 

生活リズムの乱れは、多くの場合、親の問題が含まれています。小さい頃から、大人の生活リズムで過ごしていると、知らない内にそれが当たり前になってしまいます。

ところが子どもは、自律神経の中枢である視床下部も未発達で、生活リズムの乱れは、大人よりも強い影響を脳に与えます。

 

このお子さんも、小さい頃から、お母さんと同じリズムで寝起きをしていたそうです。

大人として扱い、大人のように生活をしても、まだまだ未発達なからだと心は、こうした生活に付いていけないのです。

 

またもう1つ、起立性調節障害による通学困難では、父性の欠如というものが問題になることがあります。

ここで言う父性とは、厳しく子どもを育てる姿勢や、強制的に苦しみを乗り越えさせる態度のようです。

つまり、獅子が我が子を千尋の谷に落とすように、精神的なことが原因で起こる症状を、強制的に我慢させるということです。

こうした強い強制力を持つことで、起立性調節障害を乗り越えることがあることは確かですが、逆に悪化することも多いようです。

強すぎる父性は、悲劇的なことを生む可能性が高いため、あまりお勧め出来るものではありません。

起立性調節障害の治療には、ぜひ冷静な第三者を入れた上で、状況を正確に判断しながら、回復を目指しましょう。

#

鍼灸ひより堂