AMH(抗ミューラー管ホルモン)のお話
AMHで一喜一憂する必要はありません
不妊治療で不妊専門病院に通い出すと、比較的早い時期に行うのが、血液検査により様々なホルモン値を測る検査です。
その中でも、AMHというホルモン検査の数値には、皆さん一喜一憂されます。
それはこのAMHが、女性の妊娠しやすさや卵巣年齢のことを表すと思われているからです。
ただ実際には、AMHが高いからといって、必ずしも妊娠しやすいわけでもありません。
AMHのことを正しく理解すれば、この数値で一喜一憂することが無くなるのではないかと思います。
AMHは未成熟卵胞から作られる
AMHというホルモンは、卵胞の中にある顆粒膜細胞という細胞から、ある一時期だけ分泌されています。
卵胞は、卵巣内で卵子を育てているところで、大きく2種類の細胞(顆粒膜細胞・莢膜細胞)から作られています。
この図が代表的な卵胞の姿ですが、実はこの時期になると、AMHは既に分泌されていません。
AMHが分泌されるのは、まだ成長段階にある、小さい卵胞の顆粒膜細胞です。
下の図を見て頂くと、ごく限られた時期にだけ、AMHが分泌されていることが分かります。
またAMHには、卵胞の成長を制限する働きがあります。
そのため、AMHの数値が高い女性では、卵胞の成長障害が起こり、多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)という状態になります。
多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)は、代表的な排卵障害の一種で、不妊の原因になるものです。
そのため、AMHが高いからと、必ずしも妊娠しやすいというわけではありません。
AMHが低い理由
AMHが低い理由には、様々なことが考えられますが、成長途中の卵胞が少ないことが最も大きな理由です。
卵胞が成長する数は、年齢と共に少なくなりますので、AMHが年齢と共に低くなるというのは間違いありません。
それ以外にも、ピルを飲んでいた人では、ピルを止めてから3~4か月間はAMHが低くなります。
また年齢の平均値と比べてAMHが低いのは、AMHが極端に高い人(多嚢胞性卵巣症候群の人)が含まれているせいで、平均値が高くなっていることも理由の一つです。
ただAMHが極端に低い人の中には 、早発閉経の方もいらっしゃいますので、極端に低い場合には注意が必要です。
多少数値が低いのは、平均値せいですので、その方の生殖能力が低いせいではありません。
AMHの検査を利用した不妊治療とは
AMHを上手く利用して不妊治療や妊活を行うには、 上の項目でご説明したようなことをしっかり理解した上で、自分に必要なものを見付けることです。
AMHは、直接的には妊娠しやすさと結びつきませんが、卵巣の一定の機能を表すことは間違いありません。
AMHが高い人は、一度に育つ卵胞の数が多いため、排卵誘発をした時には多くの卵胞が成長します。
そのため、体外受精の様に採卵をする人にとっては、一度に多くの卵子を採卵出来る為、1回の採卵辺りの妊娠率は高くなります。
ただこれも絶対的な数値ではなく、数多くの卵子が採れても、成長する受精卵が多いとは限りません。(当然精子の質も大事ですから)
また成長する卵胞の数が多いと、卵巣過剰刺激症候群の危険性が高まりますので、そういった注意も必要になります。
更に採卵をしない場合には、排卵誘発剤を使用することで、多胎妊娠の確率が高くなりますので、AMHが高い人の排卵誘発をする時には、十分に気を付ける必要があります。
逆にAMHが低い人の中には、投薬の反応性が悪い人や、投薬を使用することで返って妊娠し難くなる人もいらっしゃいますので、一度は詳しい専門家の指導の下で妊活をする方が良いと思います。
AMH以外に問題が無い人は、病院での不妊治療以外の、体作りを重視した方が良い方も多いのではないかと思います。
その辺りも、一度専門家とよくご相談されれば良いと思います。
病院以外の意見を聞いてみたいという方は、カウンセリングのみも行っていますので、当院に是非ご夫婦でご来院下さい。