開放隅角緑内障(アトピー緑内障)の鍼灸 府内在住 50代男性
患者:府内在住 50代男性
病名:開放隅角緑内障(アトピー緑内障)
症状:視野欠損
経過
幼少期からのアトピー性皮膚炎を抱えており、ステロイド剤の塗布を行っていた。
その後もアトピー皮膚炎は完治せず、来院時は治療をせずに保湿すらしていない状態であった。
両眼ともにアトピーによる白内障手術を行った。
来院の3年程前に緑内障を発病し眼圧は20~40mmhgであったが、点眼薬を使用すると基準内には治まっている。
ただ1年程放置した期間があり、大学病院ではあと3年ほどで失明状態になると診断されたそうです。
初診
初診の数日前に眼科で行った視野検査の結果を見てみます。
この時のMD値も併せて見てみたいと思います。
<MD値>
(左)-21.81db (右)-18.58㏈
MD値は、正常な視野の方に比べてどの程度の視野欠損があるかを示す値です。
正常な方はMD値が-0㏈になりますが、視野の欠損が進むほどマイナスが増えていきます。
この値が-20㏈になると生活に支障が出始め、-30㏈になると失明状態になると言われています。
そして例え眼科疾患がない人でも、加齢とともに-0.3db程度は減少していくそうです。
これが緑内障の方では、かなりのスピードで視野欠損が進んでいきます。(正常眼圧緑内障で-1.0db程度)
この患者さんの場合、数値的には左右共に生活に支障が出る程度に視野欠損が進んでいると言えます。
そこで失明を防ぐために鍼灸治療を開始し、少しでも視野欠損のスピードを減らして、願わくば残っている能力を少しでも伸ばすことを目指しました。
通常はこうした緑内障末期の方では、回復よりも維持を目標にして週1回~2週の頻度で施術をしますが、ご本人と話し合いの末、週2回の頻度で施術を開始しました。
またここでもう一つ気になるのが、アトピー性皮膚炎の治療が全く行われておらず、これが元で緑内障の症状悪化が進んでいるのではないかということでした。
そこでアトピー性皮膚炎の治療に関しては、皮膚科で再開して頂くように話合いをしました。
こうした免疫系のトラブルは、多くの体調悪化や疾患悪化の原因になることがある為、必ず放置せずにコントロールすることをお勧めしています。
鍼灸治療
鍼灸治療としては緑内障のスタンダードな施術を行いましたが、上で書いたように全身の皮膚に強い炎症を持っていた為、こうした炎症症状に対しては全身治療として処置をしました。
曲池穴や足三里などの抗炎症作用で有名な経穴や、東洋医学的な臓腑理論で施術を行いました。
十分な効果とは言えませんでしたが、例年と比べるとかなり症状は改善されたそうです。
ただ十分とは言えない為、皮膚科での投薬治療も再開して頂きました。
約4か月間に渡り施術を行った後、大学病院で視野検査を行った結果が次の画像です。
<MD値>
(左)-15.91㏈(右)-15.34db
鍼灸治療の前後で検査結果を比べてみます。
これは一度の比較ですので、今後どう変化していくかを冷静に観察する必要がありますが、緑内障末期の方だと思えば結果は悪くありません。
少なくともこの4か月は悪化が見られないようですので、今後も頻度を減らしながら来院頻度とQOL維持のバランスを見ていく予定です。
追記
眼球表面は体外の空気に直接晒されている為、ウイルスや細菌に冒される可能性が高いことから、免疫と深い関係があります。
そこで過剰な免疫活動であるアレルギー反応や、過剰に抑えられていたりする免疫抑制が起こっていると、眼科疾患の発病や悪化を引き起こす可能性があります。
ただ残念ながら両方の疾患に精通する医師は多くはなく、アトピー緑内障と言う言葉はあるものの、その治療は十分ではないことが少なくありません。
新型コロナワクチンの接種後にブドウ膜炎となった方が来院されていますが、これも同じような原因で起こっていると思われます。
免疫活動を賦活する目的で行ったワクチン接種が、結果として新たな疾患を招く結果となった訳です。
このことでワクチン接種の是非を問うことはナンセンスですが、結果的に過剰な免疫活動が眼科疾患を発病や悪化させることがあるのは事実で、それに対して十分な結果を出せていない患者さんが存在することも確かです。
こうした免疫系の問題による眼科疾患に対しても、鍼灸治療との併用で良い結果を得やすくなるようです。


