梅核気の鍼灸治療【梅核気・ヒステリー球・喉の詰まり感】
不快な喉元の詰まり感
梅核気(ばいかくき)は、ヒステリー球とも言われる神経精神科疾患の一つです。
喉元の詰まり感を特徴としていますが、実際に何かがあるわけではなく異常感覚のみが存在するため、西洋医学では治療が困難です。
飲み込みたいのに飲み込めず、吐き出したいのに吐き出せないため、この異常感覚にイライラしてしまいます。
ストレスによる自律神経の失調が原因とされますが、西洋医学的には病態把握が困難な一方で、東洋医学では病態把握がしやすいのが特徴です。
東洋医学的な梅核気の考え方
東洋医学では臓腑や経絡という概念で体を捉えますが、梅核気には肝と脾の臓の問題が大きく関係しています。
肝は気血の流れをスムーズに押し流す働きをしていますが、ストレスに反応しやすいため、ストレスを強く感じたり長く感じたりするとその働きが低下します。
肝の働きが低下することで気血のうっ滞を起こすと、やがて他の臓にも影響が及びます。
脾の臓は水分代謝(水質運化)に関係する臓ですが、脾もまたストレスに反応しやすい臓の一つです。
特に、くよくよ思い悩むような状況に反応しやすく、長期化したストレスと関係が深い臓です。
また消化器系とも関係が深いため、ストレスにより表れる消化機能の低下などとも関係が深いのです。
こうして二つの臓が反応し合うことで、梅核気が生成されてしまいます。
梅核気の鍼灸治療
上でご説明したように、鍼灸治療では主に肝と脾の働きを正常化することが一つの目的になります。
肝には条達(じょうたつ)や疏泄(そせつ)という作用があります。
条達は木々が四方に枝を伸ばすような様子を言い、疏泄は精神作用や身体活動が円滑に行われることを言います。
肝は精神活動とも深い関係があり、ストレスの影響を受けやすい臓の一つです。
ストレスにより条達や疏泄の働きが衰えると、気血のうっ滞が起こることで様々な疾患が発病します。
そのため、肝気の流れがスムーズになるように鍼治療を施します。
肝気の流れをスムーズにするには、肝経にある太衝穴や行間穴、同じ厥陰系の内関穴などを使います。
また脾の臓は水分代謝に深く関係し、消化器の働きとも深く関係しているため、喉元の症状とも深い関連があります。
そこで、脾経の陰陵泉穴や脾と表裏関係の胃経にある豊隆穴などを使用します。
梅核気の症状を抱える方は、比較的それ以外の症状も抱えていることが多く、自律神経失調症や機能性腸疾患などを訴える方が多いようです。
そのため梅核気の鍼灸治療では、その他多くの症状も同時に治療対象として施術します。
※機能性腸疾患:機能性ディスペプシア(FD)や過敏性腸症候群(IBS)など