網膜分枝静脈閉塞症と鍼灸治療
網膜分枝静脈閉塞症は、網膜にある細い静脈血管が何らかの原因で詰まってしまうことで、血液が上手く循環せずに眼底出血をしやすくなってしまいます。
眼底出血を起こすとその部分の視野が黒く欠損する為、驚いて眼科を受診する方が多いようです。
また眼底出血を起こさない場合でも、うっ血した部位に血管から漏れ出た血漿成分で浮腫が出来ることもあり、黄斑に出来た場合には黄斑浮腫の症状が見られます。
この場合には眼底出血の様に黒い視野欠損が出ず、黄色っぽいような色付きと視野の歪みが発症します。
網膜の静脈が閉塞することで循環障害が起こりますので、新たな側通路を作る為に新生血管が作られることもあります。
この新生血管からも出血や浮腫を起こしやすくなるため、第一選択として新生血管の阻害薬を硝子体内に直接注射する方法が取られます。
網膜上の浮腫を放置すると、網膜の細胞自体が死滅してしまうため、早急に浮腫を無くす必要性は高くなります。
ただ長期的に見ると、網膜分枝静脈閉塞症の原因である動脈硬化や循環障害を解決する必要がありますので、根治療法となる生活改善なども同時に行うべきです。
特に高血圧や高脂血症、肥満、糖尿病などの既往がある方は、生活改善を忘れてはいけません。
勿論ですが、全ての方で禁煙は欠かせないと考えて下さい。
鍼灸治療の効果とは
鍼灸治療は、自律神経系に対する影響が強い治療方法です。
鍼灸刺激は知覚神経を通して脊髄、脳へと伝わりますが、その過程で自律神経の中枢である視床下部という部位にも伝わります。
その結果、自律神経にも影響を与え、交感神経と副交感神経のバランスを整える作用があるとされています。
眼科疾患は、その発病にも悪化にもストレスの影響が大きいと言われますが、心身のストレスは交感神経優位の状態を作りやすく、血圧の上昇や血液の粘調度を高める作用があります。
血圧の上昇は網膜分枝静脈閉塞症の悪化要因ですし、血液の粘調度が高まることも、血栓症による網膜分枝静脈閉塞症の発病と深い関係があります。
そこで鍼灸治療により自律神経のバランスを整えることは、網膜分枝静脈閉塞症の回復に強い味方になると思われるのです。
注意点としては、最初に書いたように、網膜に出来た浮腫は長期間に渡ると後遺症を残すことになりますので、網膜分枝静脈閉塞症の第一選択は抗VEGF薬であると言えます。
ただし時間的に余裕がある場合や浮腫が酷くない場合には、鍼灸治療を第一選択にして頂いても良いと思います。
その場合にも眼科を受診して、網膜の状態をOCT画像で観察しながらか、自覚症状である視野の歪みや色付きを観察しながらの施術になります。
鍼灸治療は生活改善とセットで
基本的に鍼灸治療は、生活改善や養生とセットで考えて頂ければと思います。
生活改善をするのが嫌だから鍼灸を受けるというのは、正に本末転倒です。
鍼灸治療は自律神経に働き掛けることで、網膜の血液循環を促進して循環障害を取り除く手助けをしてくれます。
また交感神経優位で血液の粘調度が高まった状態から、副交感神経を働かせて血液の粘調度を低くして、サラサラの状態を作る手助けもしてくれます。
ところが日々の生活で不摂生をしていては、鍼灸治療の効果を上手く発揮することは出来ません。
眼科疾患の鍼灸を受ける場合には、是非ご自身で出来る養生に関してはご協力をお願いいたします。