大阪日本橋 
眼病の鍼灸
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鍼治療と灸治療の効果の違いを脳の働きで知る【クローン病の臨床研究より】

 クローン病の臨床から分かった脳活動

 

 今回ご紹介する海外の論文は、fMRI(機能的磁気共鳴画像法:functional magnetic resonance imaging)を利用して脳の活動を可視化することで、クローン病患者と健常者の脳活動を比較したもので、非常に面白い結果が得られています。

FireShot Capture 216 - Different brain responses to electro-acupuncture and moxibustion trea_ - www.ncbi.nlm.nih.gov.png

<https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC5114555/>

 

 fMRIを利用してクローン病患者と健常者の脳活動を比べると、安静時の脳活動に両者では大きな違いが認められたそうです。

違いが見られた脳の領域は、痛み、感情、認知、注意、恒常性に関係するところでした。

クローン病は、慢性的な消化管の炎症により、腹痛や下痢、血便、体重減少が起こる為、安静時においても、それに対応する脳の領域に影響が出るのでしょう。

 

 こうしたクローン病患者に対して、同じ経穴(ツボ)に鍼刺激と灸刺激を与えることで、それぞれで違った脳の領域に影響が出るかどうかを調べるのが、今回の臨床研究の目的です。

使用した経穴は、中脘穴、両側天枢穴、気海穴の4か所です。

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これらの経穴に鍼と灸をそれぞれ別に施術し、週に3回×12週間続けた後に、再びfMRIを使って脳活動を調べました。

 

鍼治療の効果とは

 

 鍼治療による影響は、脳腸相関とも関係が深い自律神経や、視床下部ー下垂体ー副腎系(HPA軸)に関係する脳領域に変化を認めました

脳は、自律神経を介して腸に活動や活動休止の命令を出します。

そのため自律神経に影響が出ると、腸管の活動にも影響が出ます。

 

 また脳は、視床下部ー下垂体ー副腎系(HPA軸)にも影響を与えるため、ホルモン分泌に影響を与えることで、腸機能に影響が出るようです。

HPA軸は、機能性消化管疾患(機能性ディスペプシア・過敏性腸症候群など)と深い関係があることが有名です。

HPA腹痛.png

さらにHPA軸は、うつ病などの精神科疾患とも深い関係があります。

こうした脳の領域に鍼治療は影響を与えるようです。

 

 今回の被検者は消化器疾患であるクローン病であるため、鍼治療により腸機能が改善されたことで、日常生活の健康度は非常に高まったとあります。

またHPA軸が正常に近付くと、腸機能だけでなく精神的にも安定するため、より健康度は高まると思われます。

 

灸治療の効果とは

 

 灸治療を受けた方の脳では、DMN(default mode network)に関係する領域に影響が出ているそうです。

DMNとは、なんらかの思考や関心や注意を伴わない、ぼんやりと安静状態にある脳が示す神経活動を言います。

つまり何も考えていない時に働く脳の領域が、灸により活動性が高まるということのようです。

これは瞑想やヨガなどの深いリラックス状態に近い状態で、灸にはこうした働きがあるというのです。

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 確かに温灸治療などは、鍼治療に比べて緊張を感じることなく施術を受けることが出来ます。

特に心理的不安による痛みの装飾などには、温灸治療は最適かもしれません。

 

どちらの治療を受けるべきか

 

 今回の臨床研究では、国の特定疾患(難病)にも指定されているクローン病が対象でした。

クローン病では心身ともに消耗してしまうため、出来れば鍼灸の良いところを使いながら、併用するのが良いと思います。

当院が得意にしている眼科疾患においては、自律神経機能に働き掛けながら網膜の血流を増やすなどの働きかけは、鍼の方がしやすいのかもしれません。

ただ精神的な要素が強いものでは、お灸が良い場合もあるでしょう。

 

 何より大事なことは、鍼と灸の性質をしっかり認識し、患者さんの状態によって適切な方法を選ぶことです。

鍼と灸という比較的微細な刺激で、西洋医学では対応出来ない難しい疾患を治療するのですから、より正確な診断能力が問われることは仕方ありません。

ただ単にマニュアル化するだけではなく、鍼灸治療や各疾患の理解度を深めることが治療効果を発揮する秘訣となります。

そのためには、今回のような臨床研究データなどを集めることも、これからの鍼灸師には必要なことではないかと思います。

2024.04.26 Friday