抗VEGF療法についての私見【アバスチン・ルセンティス・アイリーア】
抗VEGF薬とは
抗VEGF薬とは、元々大腸がんの治療薬として使用されていた、新生血管の生成を阻害する薬剤です。
眼底部(脈絡膜)に新生血管が出来ることで生じる脈絡膜新生血管や黄斑部での浮腫に対して、高い治療効果を持っている薬剤です。
この薬剤は、注射器を使い、眼球から眼底部に向けて注入して使用されます。
効果は約1カ月継続するため、症状により複数回使用して様子を見ることが多く、2~3回をワンクールとして行います。
以前はアバスチンが多く使用されましたが、現在はルセンティスとアイリーアが多く使用されているようです。
高価な薬剤ですが、使用目的や年齢により支払額は変化します。
こうした抗VEGF薬の眼内注射では、注射器を使う性質上、一定の確率で感染症や出血などの事故が起こります。
確率としては低いものですが、回数が増える程に確率が高くなることは、仕方のないことだと言えます。
(10000分の1でも10回行えば1000分の1の確率になりますから)
得られる利益と、こうした不利益を比べながら、適否を決めるべきだと思います。
抗VEGF薬と鍼灸治療
抗VEGF薬が新生血管を無くす働きがあるのに対して、鍼灸治療では、どのように脈絡膜新生血管や黄斑部浮腫に対して働き掛けるのでしょうか?
鍼灸治療では、眼底部の血流をスムーズにし、毛細血管での水分代謝を良くすることで、新生血管が出来る原因に対して働き、その結果起こる浮腫を軽減するのです。
ある意味では、鍼灸治療の方がより原因に対して働き掛けているとも言えます。
治療効果を比較すると、鍼灸治療には抗VEGF薬ほどの切れ味はないものの、長期的経過は悪くないため、安全に長期間に渡って受けて頂くことが出来ます。
当院に来院される患者さんの中には、抗VEGF薬を注射した直後から鍼灸治療を受けている方もいますが、併用することでのデメリットはないため、出来るだけ早い時期から鍼灸治療を受けて頂くことをお勧めしています。
抗VEGF薬と鍼灸の関係
先ほども書いたように、鍼灸治療と抗VEGF薬を併用することでのデメリットはないのですが、抗VEGF薬を長期間続けている人に対する鍼灸治療では、その働きが少し弱まる傾向はあります。
眼底部で浮腫や新生血管が出来る原因は、遺伝的な背景を除くと、眼底部での炎症や血行障害が原因であると思われます。
こうした状態を改善しないまま、結果的に表れた浮腫や新生血管を抗VEGF薬で無くしていると、その施術回数と共に、より再発しやすい状態になるのではないかと思います。(これは私見です)
そのため、単回で注射を受けた人や未施術の方に比べて、複数回注射を受けた方では、鍼灸治療の働きは弱いように感じます。
当院の実績だけで言うと、単回で注射を受けた人と未施術の方で、来院頻度を守っていれば、再発した方はいらっしゃいません。
ところが来院までに複数回、定期的に抗VEGF薬を注射していた方は、鍼灸治療を受けて頂いても、やはり抗VEGF薬を受ける必要がありました。
そのため、出来るだけ早い時期に鍼灸治療を受けて頂き、その人に合った頻度で施術することで、抗VEGF薬の注射を受けなくても、快適な生活を送ることが出来るようです。
こうした傾向は、強度近視の方にも見られるため、高度近視でかつ近視性脈絡膜新生血管、黄斑浮腫などになってしまった方は、出来るだけ早い時期に鍼灸治療を受けて頂くことをお勧めします。