眼球使用困難症の治療指針に対する私見
眼球使用困難症とは
厚生労働省の資料によると眼球使用困難症とは、
「主に羞明(通常では苦痛を感じない光量に対して、まぶしく不快に感じる状態)の症状があると同時に、「眼痛」や「まぶたが開けづらい・開けられない」、「見え方の異常」「眼部の不快感」などが現れ、眼球の使用が困難な状態にある症状のことを言います。」
とあります。
一般的な眼科ではほぼ対応が不可能で、せいぜいドライアイの点眼薬を処方される程度のことが多いようです。
元々眼科的な視力や視野、脳機能の検査では特に異常がないことが多い為、治療方法がないことは仕方ありませんが、専門家と言われている方々の治療方針に対しては思うところがありますので、こちらで私見をまとめてみたいと思います。
眼球使用困難症の現状と治療
眼球使用困難症は眼科的検査自体にはあまり問題がなく、実際に眼球使用困難症という疾患に対する治療としては、あまり効果的な方法は確立されていません。
現段階でよく利用される方法としては次のようなものがあります。
・遮光サングラスの使用
・睡眠導入剤や精神科系の薬剤
・漢方薬
・カウンセリングなどの非薬物療法
・光を避けた生活
こうした治療法は主に対症療法であり、治療とは呼べないものも含まれています。
ただ患者の心の拠り所としての眼科であり治療内容であると言えます。
また既存の対症療法に関しては、幾つか注意すべき点がありますので、併せてこちらでご紹介します。
既存の治療法の問題点
・遮光サングラスの使用
眼球使用困難症の方は、真っ黒で大きなサングラスをされている方が殆どです。
こうした真っ黒で目全体を覆うようなサングラスを使用すると、光を求めて瞳孔が開き気味になる為、サングラスを取った時に光をより眩しく感じるようになります。
その為、実際に網膜の負担になる光だけを遮光したものが理想的です。
色もあまり濃くなく、瞳孔がやたらと開かない程度にする方が良いと思います。
・投薬
投薬に関しては、出来る限り眼球使用困難症や眼瞼痙攣の症例を多く経験した医師にかかることが重要です。
また漢方薬も他の薬剤と同様に、専門家の指導の下で使用するべきで、ネットなどで適当に買うべきではありません。
・カウンセリングや日常生活制限
カウンセリングに限らず、出来る限り社会との関りは持ち続けて頂く方が良いでしょう。
自宅に引き籠り、窓には分厚い遮光カーテンを引いていては、眼球使用困難症はより重症化してしまい、社会復帰はより困難になってしまいます。
出来る限り友人や知人、親族などと会う機会を作り、社会で孤立しないような生活を維持しましょう。
自分だけが不自由な生活をしており、誰もこの気持ちを理解出来ないなどと閉鎖的な考えを持ってしまうと、どんな治療法にも反応できなくなる可能性があります。
眼球使用困難症と 鍼灸治療
当院にも眼球使用困難症や眼瞼痙攣の方から多くの問い合わせを頂きます。
そこで鍼灸治療で出来ることと、難しい点をご説明します。
先ず沢山ある眼球使用困難症の症状の中でも、最も苦痛を感じる症状である羞明についてご説明します。
羞明は視覚情報を目に伝える視神経の異常というよりは、痛みを目に伝える三叉神経の異常興奮による影響を強く受けていると思われます。
つまり光を見ている(視覚)わけではなく、光を感じている(知覚)ということです。
鍼灸治療は古来から、しびれや痛みに対する治療として発展してきました。
その為、こうした痛みの治療として利用する時に、最も効果的な働きをすると思われます。
眼球使用困難症では羞明以外にも、目の表面や目の奥、そして頭痛を感じる方が多いのですが、これも三叉神経で感じている痛みです。
つまり三叉神経が感じている痛みを和らげることが、眼球使用困難症では欠かせない要素ではないかと考えています。
実際の治療としては、目の周囲や頭部などの三叉神経が支配する領域に対する施術が多くなります。
またそれ以外にも精神的緊張に対する治療として、後頚部や背部などの緊張を取り除いたり、全身の調整として自律神経系の調整を行うことになります。
自律神経系の調整としては手足にあるツボを使うことが多いのですが、これは個々の体質や体調により変化します。