眼精疲労だと軽く見てはいけない理由
眼精疲労の辛さは千差万別
眼精疲労と言うと、ただ目が疲れているだけだと思われがちですが、その辛さは人によって大きく異なります。
何だか目が疲れたという程度の方から、目の痛みが酷くて目が開けていられない方まで、苦痛を感じる強さは人によって様々です。
また苦痛を感じる頻度や長さも人によって様々で、仕事の時だけ眼精疲労を感じる方から、起きている間はずっと苦痛に悩まされる方までいらっしゃいます。
眼精疲労の原因とは
眼精疲労の原因は大きく分けて3つあります。
一つは眼内筋の疲労による遠近調節障害によるものです。
目の中には、水晶体というカメラのレンズの役割をするものがあります。
この水晶体の厚さを自動的に変化させるのが、毛様体筋という目の中にある筋肉の働きです。
近くを見る時には毛様体筋が収縮し、遠くを見る時には毛様体筋が弛緩して水晶体の厚さを変化させ、焦点が網膜上に集まるようにしています。
現代は近くを見ることが多いため、どうしても毛様体筋が収縮する時間が長くなってしまいます。
また毛様体筋は自律神経の支配を受けているため、自律神経系の影響も受けます。
近くの物を緊張状態で長時間見るような仕事では、この毛様体筋が長時間弛緩することが出来ないため、休息時になっても毛様体筋の緊張が解けず、遠近調整機能が損なわれてしまいます。
するといつまでも焦点が合わない為、必死に焦点を合わせようと目や首に無駄な力が入るため、非常に強く疲れを感じます。
これが一つ目の眼精疲労です。
二つ目の眼精疲労は、目を見開いて長時間酷使することで、目の知覚神経である眼神経(三叉神経第一枝)が疲労感を感じることによるものです。
眼神経は目の表面から視神経、まぶた、目の周辺部の皮膚、筋肉までの知覚を捉える為、この眼神経が繰り返し刺激されることで、眼精疲労を強く感じるようになります。
この眼神経が脳に伝える疲労感は、繰り返し神経を刺激することでどんどん増幅され、やがて少しの刺激にでも敏感に反応するようになります。
そのため目を使用する時間に伴って症状(苦痛)が強くなっていきます。
起床時が最も楽で、時間の経過と共に症状が悪化する傾向があります。
また一度知覚過敏を起こしてしまうと、中々症状が改善しないこともその特徴で、日々症状が悪化することが多いようです。
やがて不眠や不安神経症、うつ病などの精神疾患に発展することもあり、非常に厄介な原因の一つだと言えます。
その一方で症状改善のために眼科を訪れたとしても、医学的にはこれといった原因や症状が確認出来ないため、診断名も明らかにされず放置されることが殆どです。
更には対症療法すら確立していない為、ドライアイの点眼薬以外にはこれといった治療法がなく、眼科を回った挙句に精神科の受診を勧められることも多いようです。
当然ながら精神科でも、不安に対しての抗不安薬や不眠に対しての睡眠導入剤などの対症療法しか治療が出来ません。(それでも軽減はしない)
最後の三つ目は、脳の疲労による眼精疲労です。
厳密に言うと、これは眼精疲労ではなく脳疲労ですが、自覚的には眼精疲労として認識します。
視覚と言うものは、あくまでもカメラである目(眼球・網膜)で見たものを、脳で解析して認知するものですので、脳が披露すると視機能が大きく損なわれるようになります。
視覚は五感の中でも特に認知能力に対する影響が強いため、脳疲労からの眼精疲労では、認知機能などにも大きな影響が出るようになります。
また脳が疲労したことでの眼精疲労では、感情面への影響も起きやすいため、不安症状や抑うつ状態が強く現れる患者さんもいらっしゃいます。
この脳が疲労したことによる眼精疲労は、症状として最も重症化しやすく治療法も確立していません。
唯一の解決法は、心や体を休めてしっかり休息を取ることです。
また脳の疲労は、眼瞼ミオキミアや眼瞼痙攣、ビジュアルスノーの原因にもなりますので、どんどん負の連鎖を起こす可能性があります。
脳の疲労から起こった眼精疲労に関しては、重症化してしまうと鍼灸治療単独では治療が難しくなり、特殊な眼鏡を使ったビジュアルトレーニング(視機能訓練)が必要になることがあります。
眼精疲労に対するお話は別ページでも書いています(ドライアイ・眼精疲労のお話)が、鍼灸治療の最も優れた点は、上に書いている3つの原因に対して広くアプローチ出来る点です。
ただ症状の重さや原因によっては、鍼灸治療単独では治療が難しい場合もありますので、適応か否かが不明な場合には予めお問い合わせからご連絡を頂ければ幸いです。
特に症状の重い眼精疲労を患う方
眼精疲労の原因は目を酷使することだと思われがちですが、必ずしもそうではありません。
「眼精疲労」という言葉から、使い過ぎが原因だとされますが、実際には目というのは起きて目を開けている間は、ほぼ全ての時間で使用していますので、仕事や趣味で目を酷使しなくても眼精疲労が起こることはあります。
特に脳が疲労したことで起こる眼精疲労では、強い精神的ストレスや目以外の病気からの身体的ストレスが原因になることもあります。
例えば体の強い痛みや不快感を感じた後、目の焦点が徐々に合いづらくなり、やがて眼に強い痛みや羞明(眩しさ)を感じることがあります。
当然ながら眼科では異常が見られない為、多くの患者さんは治療が受けられないか精神科や心療内科を受診することになります。
また強い近視の方では、元々目に対する物理的なストレスが生じている為、その物理的なストレスが原因で眼神経(三叉神経)が継続的に刺激されている内に眼精疲労をかんじるようになります。
この場合も物理的ストレスは根本的には解消出来ないため、鍼灸治療で循環状態を改善したり知覚過敏に陥った眼神経(三叉神経)の興奮を鎮めるしか対処法はありません。
またこうした条件を複数持っている場合には、眼精疲労の症状はより重症化しやすく治り難いという特徴もあります。
眼精疲労にお悩みで、投薬等を出来る限り避けたいという方は、是非一度ご相談下さい。