飛蚊症の鍼灸治療
飛蚊症とは
飛蚊症は視野の中に糸くずやもやのようなものが現れ、眼球を動かすことで視野を漂うように動いたり、逆に見えなくなったりします。
症状は年齢と共に表れやすくなりますが、20代から症状が現れる方もいらっしゃいます。
飛蚊症は眼球内を満たしている硝子体が生理的に変質し、繊維状のしわのようなものが出来ることが原因で起こります。
それ以外にも網膜剥離などの眼科疾患に付随するものや、生まれつきの原因によるものがありますが、こうしたものは鍼灸治療の対象にはなりません。
鍼灸治療の対象になるものは生理的な変化により起こった飛蚊症で、こうした飛蚊症に対しては鍼灸治療による効果を期待出来ます。
鍼灸治療による最も大きな利益は、飛蚊症による症状の改善ではなく、飛蚊症により低下した生活の質を高めることにあります。
そのことについては、この後詳しくお話します。
飛蚊症は生理的変化だけが問題ではない
飛蚊症の原因は硝子体の変質でも、実際の飛蚊症によって生活の質が低下する原因は、症状そのものよりも、むしろ症状による心理的な負担です。
つまり飛蚊症の症状によりもたらされた不安感が積み重なることで、生活そのものの質が低下するということです。
不安感が強まるとやがて抑うつ症状を招き、更に悪化するとうつ病を発症することもあります。
<Psychological implications of vitreous opacities – A systematic review(硝子体混濁の心理的影響)>
そのため最も大事なことは生活の質を高めることで、症状だけにこだわるよりも、精神状態を高めることに気を配る必要があります。
鍼灸治療により起こる変化とは
一度硝子体に起こった生理的な変化が、鍼灸治療により変化して無くなるということは通常起こり得ません。
それにもかかわらず、鍼灸治療を受けて頂いた患者さんからは、生活の質が高まったという声が聞かれます。
その原因とは何でしょうか?
①眼精疲労などの症状が軽減したため
飛蚊症を訴える方は、比較的目を多く使うお仕事の方が多いようです。
そのため飛蚊症以外にも、眼精疲労や首肩の凝り、頭痛などの不快症状を抱えている方が少なくありません。
そうした症状は鍼灸治療の最適応症状であるため、不快症状が軽減したことで生活の質が高まり、結果的に飛蚊症が苦ではなくなるようです。
②視機能が向上したため
鍼灸治療は視機能を高める働きがあるため、目の働きが良くなることで、飛蚊症による見えにくさが軽減するようです。
③脳のストレスが軽減したため
視覚というものは、目で全てを見ているようですが、実際の目は単なるカメラに過ぎず、本当の画像は脳で見ています。
人間の脳内では、目で捉えた映像から無駄な部分は削除し、自分にとって都合のいい映像だけを見ることが出来ます。
鍼灸治療は脳に対する働きがあるため、脳での画像処理が適切に行われることで、飛蚊症の症状が軽減するのではないかと思われます。(予想)
飛蚊症の鍼灸治療
飛蚊症の鍼灸治療では、通常の眼科疾患に対する鍼灸治療と同様に、目の周囲や後頚部に対する施術だけではなく、頭部にも積極的にアプローチをします。
これは先ほどご説明した、脳機能に対しても鍼灸で働き掛けるためです。
また体調全般に対する施術も重要ですので、東洋医学的な診察や診断、そしてそれに基づいた治療が欠かせません。
頭部には多くのストレスや目の機能と関係が深いツボがありますので、そうしたツボから選んで鍼を刺すことになります。
通常は週に1~2回の施術をしながら様子を見て頂き、最終的には気になる時だけご来院して頂くようになります。