東洋医学にイメージは大事だけれど…【効果判定・第三者評価】
気は誤魔化しやすい
東洋医学で治療する人の中には、「気」というものをイメージ化し、「気」の変化を全てと捉えて治療を行う方や、それを評価基準にすることで治療している方がいます。
私自身は「気」というものの存在を否定しませんが、それを重視し過ぎて、結果が伴わない鍼灸師もたくさん知っています。
そのため、「気」というもののイメージを持ちながらも、現実的に現れる体の変化を、正確に捉える方が良いのではないかと思っています。
例えば、以前来院患者の中に、「自分で気を巡らせて健康を維持している」という方がいらっしゃいました。
その方のお話では、毎日、下丹田(しもたんでん)に気を溜めて、健康を維持するようにしていると仰るのです。
下丹田とは、へその下にある気を蓄えると言われる場所です。
ツボで言うなら気海や関元の周辺だと思えばいいと思います。
昔から中国では、この下丹田に気を溜めることが、健康的な体を維持するためには欠かせないと言われています。
この部分は、東洋医学では「腎」を表すところであり、「腎は先天の精を主る」とも言われることから、東洋医学でもこの周辺の反応は重視しています。
腎の気がしっかりしていると生命力が高く、寿命も長いことを表すからです。
では毎日気を巡らせて、下丹田に気を溜めているこの方は、さぞかし健康かというとそうでもありませんでした。
この方は非常に腎機能が弱く、水分代謝が悪いために、常に下半身が浮腫んでしまう方でした。
象のような足をしていて、尚且つ慢性の腰痛持ちでした。
これは典型的な腎虚(腎が弱い)の症状です。
そこで実際に私が体を診察させて頂くと、丹田にあるべき気が著しく足りていません。
それが何故分かるかというと、へその下がベコベコに凹んでいたからです。(脈診でも腎虚でした)
気が充実すると、その肌肉は豊かに膨らむはずですが、肝心のへそ下が凹んでいるのですから、一目瞭然で腎虚のお腹です。
その方は、某有名な整体教室の指導者で、気を巡らせることで健康を維持するという方法を、指導する立場の方でした。
それにも関わらず、イメージだけで気を巡らせたつもりになり、実際の体はかなり弱った状態だったのです。
この方も体に現れる症状をしっかり把握していれば、例え自分のお腹を触らなくても、腎虚が改善されていないことや、丹田に気が溜まっていないことは分かったでしょう。(知識のせいもありますが)
これは整体に限ったことではなく、鍼灸師でも同様の失敗をすることがよくあります。
「気を補ったはず。」「気が流れたはず。」「陰気が…陽気が…。」
こうしたイメージだけで治療を行うと、「出来ているはず!」という思いだけが空回りしてしまいます。
鍼灸治療で大事なのは、結果がしっかりと体に現れることです。
そのため眼科疾患であれば、視力検査、視野検査、画像診断などでしっかり変化が現れ、確かに良くなっていることが現実の評価判定になります。
妊活であれば、採卵の結果、精液検査の結果、妊娠判定、出産などが評価判定であり、「気が巡っていた。」は評価判定にはなりませんので、鍼灸師は勘違いしてはいけません。