自律神経と鍼灸治療
自律神経とは
自律神経は、体内環境を一定に保つために常に自動的に働いています。
自動車に例えると、アクセルの役割をする交感神経とブレーキの役割をする副交感神経に分けられます。
交感神経は活動時に働く神経で、体の働きを強めたり緊張感を持たせる方向に体内を調節します。
逆に副交感神経は急速時に働く神経で、体の働きを弱めたり緊張感を緩める方向に体内を調節します。
主な働きと失調による症状は次のようなものです。
自律神経が適切に働くことで、人は健康的な生活を起こることが出来ます。
自律神経失調症とは
自律神経失調症とは、文字通り自律神経の働きが乱れてしまうことで、体内環境が乱れてしまう状態です。
例えば、運動もしていないのに心拍数が上がり(動悸)息が切れてしまうような状態や、暑くもないのに汗をかいてしまうようになります。
普段は当たり前に出来ていることが出来なくなるため、毎日を当たり前に過ごすことが辛くなることもあります。
自律神経の働きは、脳内の視床下部という部位からの命令でにより行われます。
視床下部からは様々なホルモンが分泌されており生命活動の中枢ですが、それと共に自律神経の調整でも生命活動を支えているのです。
自律神経失調症になってしまうと、こうした生命活動にも支障が出るため、単なる体調不良と軽く見るわけにはいきません。
また自律神経失調症はストレスとの関連が強いため、ストレス性の疾患だと言われることが多いですが、必ずしもそうとは限りません。
規則正しい生活をせずに、夜遅くになっても明るい部屋で過ごしていたり、暑い日に冷房を効かせ過ぎた部屋で過ごしていたりと、不自然な生活を続けているだけでも自律神経失調症になることがあります。
自律神経と鍼灸治療
~鍼灸はなぜ効くのか~
鍼灸治療には、自律神経を調整する働きがあります。
その働きは「交感神経に働く」や「副交感神経に働く」、あるいは「興奮に働く」「抑制に働く」といった一方向性のものではありません。
あくまでも両者のバランスを取るように働くという点が、他の治療法とは違う特徴かもしれません。
鍼灸治療はこうした特徴によって、交感神経が過剰に働いている方にも、副交感神経が過剰に働いている方にも受けて頂くとが出来ます。
鍼灸治療は刺激療法の一種です。
皮膚や皮下組織に加わった刺激を受容器が受け取り、その刺激をきっかけに体に起こる変化を目的とした治療法です。
その変化の一つが自律神経に起こる変化です。
鍼灸刺激は刺激する部位や手技により、自律神経を興奮させたり抑制させたりすることが出来ます。
また部位や手技により、交感神経にも副交感神経にも作用させることが出来ます。
そのため、様々な状況に応じて鍼灸治療を変化させることで、難しい症例にも適応することが出来ます。
自律神経のコントロールは非常に綿密に出来ていて、それぞれの部位が単独で働くこともあります。
例えば、眼球内で遠近調整をしている毛様体筋は、交感神経が働くとピントを近くに合わるように働きます。
PCやスマホなどを見ている時には、こうして交感神経が働いています。
つまりOA作業などのお仕事中に、お腹がグーグーと音を立てているような状況です。
こうして体の中では、ある時は全体として、ある時は部位別に自律神経を調整して、体の中を細かに調整するのです。
鍼灸治療は投薬とは違い、刺した部位により細かに調整出来る為、部位によって違った効果を期待出来ます。
そのため全身を細かに分けて調整できるため、自律神経が乱れた方にとっても便利な治療法なのです。