仮性近視と鍼灸治療
仮性近視は治る近視
仮性近視とは、「仮性」という文字が示す通り、遠近調整能力の機能低下によって起こる近視です。
仮性近視は、遠近調節をする機能が低下したことによるものですから、その機能が元に戻れば治るということになります。
一方、本当の近視(真性近視)とは、眼の構造的な問題による近視ですので、それ自体は治すことは出来ません。
あなたが真性の近視であるか仮性近視であるかは、眼科での屈折検査で直ぐに知ることが出来ます。
こうした仮性近視には、鍼灸治療がとても有効です。
近視と仮性近視
目の網膜に映像を正しく写すためには、目の焦点(ピント)を網膜に正しく合わせる必要があります。
こうしたピント合わせに影響する大きな要素は3つあります。
①角膜の彎曲度 ②水晶体の厚み ③眼球の長軸の長さ
風景や人物を見た時に、その画像のピント(焦点)が網膜より手前に合うと近視になり、網膜よりも後ろに合うと遠視となります。
そして仮性近視は、一時的に焦点が手前に来ているということです。
ちなみに乱視は、水平方向と縦や斜め方向で別々に焦点が合う状態です。
上に書いた①②③の条件の内、①を変えることは基本的には出来ません。
もし①の要素を変えるとすれば、角膜を薄く削るレーシック手術や、オルソケラトロジーといった特殊なコンタクトレンズを使用するしかありません。
そして③を変えることは、絶対に出来ません。
最後の②に関しては、水晶体の厚みを変える仕組みが体には元々備わっています。
水晶体の厚みは、毛様体筋という眼内筋が収縮や弛緩をすることで変化をします。
近くを見る時には毛様体筋が収縮し、水晶体が厚くなることで調整します。
また遠くを見る時には毛様体筋が弛緩し、水晶体が薄くなることで調整します。
こうした毛様体筋の収縮や弛緩は、自律神経の働きで調節しており、収縮には交感神経が、弛緩には副交感神経が働きます。
ところが、水晶体の厚みを変える機能が低下すると、遠近調整が出来なくなってしまいます。
その原因の1つは、水晶体が老化により弾力を失うことで、毛様体筋が収縮や弛緩をしても、水晶体の形が変わらなくなることです。
こうした状態を老眼といいます。
老眼になると、30㎝より手前にある物が極端に見えにくくなります。
またもう一つの原因が、近くの物を見過ぎたため、毛様体筋が収縮したままになることで起こります。
これを仮性近視と言います。
仮性近視になると、 毛様体筋が収縮したままになりますので、ピントが常に近くに合っている状態になります。
そのため遠くを見ようとしても、毛様体筋が収縮したままになっているせいで、ピントを遠くに合わせることが出来ません。
現代社会は仮性近視になりやすい
現代社会では、PCやスマホを使う頻度が高く、どうしても近くを見る機会が多くなります。
しかも、そうした近見視力を使う時間が非常に長いため、毛様体筋は強く収縮したままになります。
また毛様体筋を収縮させる働きは、自律神経の交感神経によるもので、普段から高ストレス状態の方では、余計にその傾向は強くなります。
定期的に遠くを見たり、時折リラックスする時間を設けたりすることは、案外簡単なようで実際には難しいことです。
そのため、知らない内に仮性近視となり、自分の視力を落としている方は少なくないと思われます。
また近見視を長時間続けるような環境は、あまり目にとって良い環境とは言えません。
近見視力を長時間使うためには、十分なエネルギーや酸素、感光物質となる材料が必要となります。
そうした材料を運ぶのは、毛細血管の中を流れる血流なのですが、先ほどのような交感神経が優位な環境では、毛細血管が収縮しているため、十分な血流も確保出来ない可能性があります。
更に目の血行障害は、眼科疾患にも繋がりますので、近見視力を使い続ける環境は、眼にとって非常に過酷な環境であると思われます。
仮性近視の鍼灸治療
鍼灸治療は、自律神経のバランスを整える働きがあります。
一方的にどちらかの神経を高める訳ではなく、あくまでもバランスを取る働きがあるのです。
自律神経は、両方(交感神経・副交感神経)共がバランスよく働いてこそ、本来の働きを行うことが出来ます。
そのため、一般的には交感神経が優位であることが、悪いことのように思われがちですが、実際にはそうではありません。
必要な時に必要な側が働くことで、体を自動的に機能させてくれるのが自律神経の働きです。
目に限って言っても、副交感神経だけが働いては、近くに目の焦点が合わず、生活はとてもし辛くなります。
また瞼(まぶた)の腫れや、目の充血など、副交感神経優位な状態が、決して快適なものではないことが分かります。
そこで鍼灸治療を受けて頂くと、バランスよく自律神経が働くことで、必要な時に必要な自律神経が働けるようになるのです。
仮性近視の方に鍼灸治療をする場合には、交感神経の働きを抑えながら、副交感神経の働きを働かせるように、自律神経のコントロールをしている視床下部に働き掛けます。
こうした中枢に働く鍼は、手足のツボを使用することが多く、目の場合には合谷穴や光明穴が有名です。
また、局所的にも働き掛けるためには、眼の周囲に刺す鍼が大事になります。
<参考画像:目の周辺の鍼>
こうして自律神経を整えると、仮性であれば近視は改善していきます。
仮性近視以外の禁止においても、視力自体は良くなることが多いですが、それは調整能力と視神経や網膜の活性が高まるためで、屈折力が変化しているわけではありません。
つまり近視が治ったわけではないということです。(そこにこだわる必要はないと思いますが)