大阪日本橋 
眼病の鍼灸
鍼灸ひより堂

大阪日本橋の鍼灸ひより堂です。
当院では現代医学では治療法がないと言われてしまった眼科疾患に対して、鍼灸治療によるアプローチをしております。
来院される患者さまの約95%は眼科疾患や眼科症状にお悩みの方々です。

眼瞼痙攣(けいれん)と眼科領域の鍼灸

眼瞼痙攣(けいれん)とは

 

 眼瞼けいれんとは、上や下のまぶたがピクピクと自分の意志とは関係なく痙攣したり、目の周囲の筋肉が収縮したままになってしまう病気です。

その中でも「眼瞼ミオキミア」と呼ばれるものが、一般的なイメージの眼瞼痙攣ではないかと思います。4228149_m.png

 

この眼瞼ミオキミアは、ドライアイの影響で目の表面が乾き、知覚過敏になることで起こりやすくなります。

またドライアイは、脳内物質の分泌とも関係が深いため、ストレスによる脳内物質の低下により、眼瞼ミオキミアが悪化することもあります。

ただハッキリとした原因は不明で、根本的な治療法も見付かっていませんが、経過観察をしている内に軽快することも多いものです。

 

 多くの方がイメージする眼瞼けいれんが眼瞼ミオキミアであるだけでなく、恐らく専門家以外の多くの医療関係者や鍼灸師も、眼瞼ミオキミアを眼瞼けいれんの全てだと勘違いしています。

そのため、「眼瞼けいれんは大したことがない病気。」という誤ったイメージを持つことが多く、実際に重症の眼瞼けいれんでお悩みの患者さんからすると、やり切れない思いでしょう。

 

 ここからご紹介する眼瞼けいれんが、真に治療が必要で、尚且つ難治性疾患として分類される眼瞼けいれんです。

 

 眼瞼ミオキミアが治療の必要が無い眼瞼けいれんであるのに対し、治療が必要である眼瞼けいれんもあります。

その一つが片側のまぶたや顔面の筋肉が強く収縮する、「片側眼瞼けいれん」です。

片側眼瞼けいれんは、多くの人が経験し想像する眼瞼けいれん(眼瞼ミオキミア)ではありません。

 

片側眼瞼けいれんでは、目の周囲の筋肉ばかりではなく、片側の顔面全体の筋肉が収縮したままの状態になることもあります。(顔面けいれん)

こうした症状には、ボツリヌス菌の毒素を用いて筋肉を弛緩させる、ボツリヌス注射を対症療法的に使用します。

ただボツリヌス注射の効果は3か月程度しかないため、その間に症状が改善しないか、もしくは悪化するようなら手術療法も考慮します。

 

 眼瞼ミオキミアが原因不明であることに対して、片側眼瞼けいれんの原因は、脳内にある顔面神経に対して血管が圧迫を加えているためだとされています。

顔面神経は、表情筋と呼ばれる顔面部にある多くの筋肉の支配神経です。

顔面神経麻痺では、顔面神経が支配する表情筋が緩んでしまい収縮出来なくなりますが、片側眼瞼けいれん(顔面けいれん)の場合には、逆に筋肉が自分の意志とは関係なく収縮したままになってしまいます。

顔面神経麻痺.png

そのため根本治療として、脳内の血管による圧迫を取り除く、微小血管神経減圧術(Microvascular transposition: MVT (またはMicrovascular decompression: MVD)が行われます。

勿論これは眼科ではなく、脳外科の領域になりますので、詳しくは専門医にご相談下さい。

脳外科手術の名医として有名な福島医師のHPによると、手術後のけいれん解消率は90~95%だとされています。

 

 ここまで眼瞼ミオキミア、片側眼瞼けいれん(顔面けいれん)とご説明してきましたが、もう一つの眼瞼けいれんが、両側に起こる「両側性の眼瞼けいれん」です。

この両側性の眼瞼けいれん(以下眼瞼けいれん)でも、ボツリヌス注射が使用されますが、片側眼瞼けいれんでご説明したように、効果は3か月程度しかありません。

眼瞼けいれんでは、脳内物質(ドーパミン、BDNFなど)の低下や抗うつ剤、睡眠導入剤の服用などが原因として挙げられており、精神科疾患やストレスとも関連が深いことが示唆されています。

 

眼瞼けいれんのきっかけに、抗うつ剤や睡眠導入剤が挙げられることから、ストレスや精神科疾患が原因で起こったとしても投薬が難しいため、専門医による治療が欠かせません。

単に眼科医であるだけでなく、眼瞼けいれん専門の医師による診察や治療が望ましいと思われます。

 

眼瞼けいれんの鍼灸治療と私見

 

 鍼灸治療による眼瞼けいれんの治療は、古来から試みられてきました。

ただその多くは眼瞼ミオキミアに対するものであり、片側眼瞼けいれんや両側性の眼瞼けいれんに対する鍼灸治療に関する文献はそう多くありません。

 

 眼瞼ミオキミアに対する鍼灸治療は、非常に即効性があり数回の鍼灸治療でも効果が表れます。

多くは眼精疲労やドライアイによる角膜の知覚過敏が原因であることから、知覚過敏に対する鍼灸治療と、自律神経にアプローチして眼内筋を緩める鍼灸治療を施すと軽快します。

またストレスに対しても鍼灸治療は効果的であるため、複数の原因に対して働きかけることが出来るだめだと思われます。

ただ上でも書きましたが、鍼灸師の中には、「眼瞼ミオキミア=眼瞼けいれん」だと勘違いしている方が多いようです。

 

そのため、眼瞼けいれんの鍼灸治療を、比較的簡単に治癒するものだとしている傾向があります。

症例などでも、数回で消失する眼瞼ミオキミアを取り上げていることが多いですが、難治性疾患である眼瞼けいれんは、数回の施術で消失するようなものではありません。

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 片側眼瞼けいれんや重症の眼瞼けいれんに対する鍼灸治療は、即効性こそ高いとは言えませんが、一定の効果はあります。

片側眼瞼けいれんの場合には、根治的には外科手術の適応となりますが、対症療法的に行うボトックス治療が怖い方には、鍼灸治療は選択肢の一つとなると思われます。

鍼灸治療にも筋肉を弛緩させる働きがあり、しかも投薬と違い副作用がありませんので、非常に安全性が高い治療法です。

 

 片側眼瞼けいれんや難治性の眼瞼けいれんに対する鍼灸治療では、局所的な筋肉の弛緩を目的とする施術と、脳機能にアプローチするような施術を並行して行います。

局所的な施術では、眼輪筋や口輪筋などの表情筋に対して施術を行います。

 

脳機能に対するアプローチでは、東洋医学的に本治法と呼ばれる施術を行います。

本治法とは、東洋医学的な理論に基いて診察、診断をして治療穴を決めて施術を行う方法です。

比較的遠隔治療となることが多く、肘から指先まで、膝から足先までのツボを使用して、体全体のバランスを取るような施術です。

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<当院での施術例>

 

 背中やお腹の知覚に比べて、手足の先に行くほど知覚が鋭敏で感受性が高いため、少ない刺激量でも十分に脳を刺激することが出来ます。

そのため、脳内物質の分泌低下による症状改善には、本治法がとても適しているのではないかと考えています。

というよりも、本治法自体が本来こうした脳由来の症状に対しての治療として発達し、体系化してきたのではないかと考えています。

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【眼瞼けいれんの治療例】

 

患者50代男性 大阪府在住

症状眼瞼けいれん

経緯

 2年前からドライアイ目が開けにくい症状があり、眼科専門病院を受診。

病院では眼瞼けいれんだと診断され、ボトックス注射を複数回受けた。

4回目のボトックス注射を受けても症状が軽減しないため、当院を受診。

 

 20年前から体調不良や起床困難を感じており、抗うつ剤を20年前から服用している。

その他、耳鳴りや全身の疲労感などもあるため、典型的な難治性の眼瞼けいれんだと言えます。

 

【鍼灸治療】

 

 鍼灸治療では、幾つかの治療目標を立てました。

 

1.目周囲の知覚過敏を軽減し、瞬きの回数を減らす。

2.表情筋を局所的に弛緩させる。

3.体調不良、深い症状を無くすことでストレス軽減。

4.総合的な健康度を挙げることで脳内物質を正常化。

 

1.目周囲の知覚過敏を軽減

 

 目周囲の知覚は、眼神経という脳神経が支配しています。

そのため眼神経の興奮を鎮めるために、目の周囲にごく浅い鍼を行いました。

知覚過敏が軽減すれば、ドライアイによる瞬きを減らすことが出来るからです。

勿論、眼科で処方される点眼薬もドライアイ対策としては有効です。

 

2.表情筋を局所的に弛緩させる。

 

 表情筋は、顔面神経という脳神経が支配しています。

鍼灸治療では、神経に栄養を供給する血管の血流量を増やし、働きを正常化させることで、顔面神経の機能を正常化させます。

また表情筋に鍼をすることで、強く収縮した筋肉を弛緩させました。

 

3.体調不良、深い症状を無くすことでストレス軽減。

 

 眼瞼けいれんは、心身のストレスと強い相関があります。

脳内物質のドーパミンやセロトニン、BDNFは、ストレスが継続することで分泌量が減ることが分かっていますが、これらの脳内物質が低下すると、眼瞼けいれんは起こりやすくなります。

抗うつ剤にも、こうした脳内物質を減らしてしまう副作用があるため、抗うつ剤で眼瞼けいれんが発症したり悪化したりするのかもしれません。

 

 そこで、体調不良や不快症状(肩こり、頭痛、冷え、各種痛みなど)に対しても施術を行い、脳内物質の分泌量がが低下しないようにアプローチしました。

こうした症状が軽減するだけでも、多くの人は少し前向きになれます。

前向き感は脳内物質が増えていることを表しますので、こうしたアプローチは眼瞼けいれんに有効であると思われます。

 

4.総合的な健康度を挙げることで脳内物質を正常化。

 

 1~3のような施術を繰り返すことで、全体的な健康度は高まってきます。

全体的な健康度が高まるだけでも、脳内物質が正常化し、眼瞼けいれんの根本的な治癒に近付くはずだと考えています。

多くの眼瞼けいれんの方は、複数の身体症状(耳鳴り、頭重感、自律神経失調症、めまいなど)を有しています。

ただ単純に目が開け辛いというだけでなく、トータルで生きにくい状態になっていることが最も大きな問題です。

 

 この患者さんの場合には、約2か月間の施術で、眼瞼けいれんはかなり良くなりました。

お仕事を続けながら、最初の1か月は週2回、その後週1回の施術を行い、2か月後には強い眼瞼けいれんは自覚しなくなりました。

体調不良が完全に治癒したわけではありませんでしたが、ご本人の意向もあり、眼瞼けいれんが感じられなかった時点で施術終了となりました。

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あとがき

 

 重症の眼瞼けいれんは、非常に治りにくい眼科疾患であることは確かです。

こちらでご紹介した症例では、比較的早い期間(それでも2か月)で症状の改善が見られましたが、その前に行ったボトックス注射の効果も一定あったものと思われます。

ただボトックス注射を繰り返すだけで、根本的な原因である体調不良や脳内物質の低下を放置していては、目指す目標には至りません。

眼瞼けいれんは、眼科疾患でありながら精神科領域の問題もあり、尚且つ全身的な健康状態も関係するといった、非常に複雑な病因を持ちます。

そのため、こうした問題を一つ一つ解決する必要があります。

 

 眼科や精神科が協力関係にあれば、非常に効果的な治療が出来そうですが、投薬が使えない方やボトックス注射が十分な効果を挙げないこともあります。

そこで鍼灸治療のような、全身的な治療を行う治療法が有効なことがあるのだと思います。

一筋縄ではいかない治療ではありますが、時間を掛けてしっかり完治を目指すことが出来れば、新たな希望になるのではないかと思います。

2024.11.21 Thursday