歯科治療が原因で眼瞼痙攣になることもある?
眼瞼痙攣と歯科治療
当院にご来院される眼瞼痙攣の方の中には、特に思い当たる原因がないにも関わらず発病される方もいらっしゃいますが、比較的はっきりしたきっかけがあった後に発病される方がいらっしゃいます。
その中には歯科治療を契機にして眼瞼痙攣を引き起こしたと思われる方がいらっしゃるため、こちらでその成り立ちをご紹介したいと思います。
歯科領域と眼科領域の共通性
一見すると歯科領域と眼科領域には共通項が無いように感じますが、実際には非常に深い関係があります。
何故なら歯科領域でも大きな課題であると思われる歯や歯茎の痛み、そして顎の痛みを引き起こす原因になる神経が眼科疾患と関係が深い神経でもあるからです。
この神経を三叉神経と言います。
三叉神経は脳神経の一種で、顔面部の知覚を広く支配する神経線維です。
そして三叉神経は文字の通り、三つまた(又)に分かれた走行をしています。
この三本に分かれた神経線維の一番上に当たる枝を眼神経といい、目の周辺部や鼻の知覚を担当しています。
また真ん中の枝を上顎(じょうがく)神経といい、上あご周辺の知覚や歯茎、上歯の歯髄(歯の神経)になります。
最後の一番下に当たる神経を下顎(かがく)神経といい、下あご周辺や歯茎、下歯の歯髄(歯の神経)になります。
そのため、目の周辺や瞼の知覚神経と歯の歯髄が同じ神経の枝であるため、お互いに影響を与え合うことがあるということなのです。
瞬(まばた)きは元々目の表面の乾燥を防いだり、目に対する物理的な侵害刺激を防ぐ役割があります。
つまり目を守る働きがあるということです。
目に何かが衝突するのを防ぐためには、角膜(目の表面)だけではなく、まぶたや目の周辺部全体に対する刺激に対して敏感に反応する必要があります。
その刺激を感じ取る役割をするのが、知覚神経である眼神経(三叉神経)です。
この眼神経からの情報を元に脳は顔面神経に指令を出し、眼輪筋を収縮させて瞬きをするわけです。
通常は眼神経がきっかけになることが多いのですが、今回ご紹介しているような同じ三叉神経の枝である上顎神経や下顎神経がきっかけになることもあるようです。
これが歯科治療をきっかけにした眼瞼痙攣です。
歯科治療が眼瞼痙攣の原因になる
歯科治療の中でも、特に歯髄に影響を及ぼすような施術を受けた後は、眼瞼痙攣になる可能性は高まると思われます。
歯髄に影響が及ぶような施術ということは、いわゆる虫歯で神経を抜くような施術をすることですので、親知らずでの抜歯やインプラント治療だけでなく、一般的な義歯でも眼瞼痙攣のきっかけになることがあります。
当院で聞いたお話でも、時間が無かったためにまとめて歯科治療を受けた後から眼瞼痙攣の症状が出たのですが、結局原因不明と扱われたというものがあります。
そもそも眼科と歯科という全く関連がなさそうなものであることと、医科と歯科は口腔外科を除いてそれほど密接な関係性がないことから、問題にされなかったと思われます。
またひょっとするとその関連性に気付いたとしても、対処の方法が無かったということも考えられます。
この方の場合には、その後眼科にて眼瞼痙攣であると診断を受けましたが、原因は不明ということでボトックス注射を受けることになりました。
ただ結果としては眼瞼痙攣は改善することが無かったため、当院にて鍼灸治療を受けることになったということです。
眼瞼痙攣の鍼灸治療
眼瞼痙攣の鍼灸治療としては、他の眼瞼痙攣の鍼灸治療と同様に三叉神経領域に対する鍼灸治療と、脳内の血流増加を目的とした鍼灸治療を同時に行います。
三叉神経は顔面部全体に広く知覚神経の枝を伸ばしているため、その領域にある経穴に対して広く施術することが必要になります。
また根本的には脳内での運動制御が行えないことが原因ですので、脳内活動を賦活する目的で頭部や後頚部、或いは手足のツボを使用して脳内血流を高めます。
<顔面部・頭部の治療穴例>