大阪日本橋 
眼病の鍼灸
鍼灸ひより堂

大阪日本橋の鍼灸ひより堂です。
当院では現代医学では治療法がないと言われてしまった眼科疾患に対して、鍼灸治療によるアプローチをしております。
来院される患者さまの約95%は眼科疾患や眼科症状にお悩みの方々です。

レーベル病とイデベノンと鍼灸治療の可能性

Leber (レーベル)遺伝性視神経症(Leber Hereditary Optic Neuropathy)とは

 

 レーベル病(略称:LHON)は、比較的若い年代の方の両目に発生する遺伝性の眼科疾患です。

発病から急性、或いは亜急性に症状が悪化し、急激に視野や視力が奪われます。

発病は片側の目から始まりますが、数カ月の治に反対側にも表れ、同時に進行していきます。

 

多くの場合で社会的失明状態になりますが、ごく一部の方では視能の回復を見せる方がいるようです。

ただほとんどの方が視覚障碍者となるため、治療以外にも覚教材の提供、職業リハビリの支援、関連する地域社会サービスへの登録なども重要な問題になります。

 

LHONでは、両側性無痛性の

亜急性視覚障害を若年成人期に発症することと、分子遺伝学検査において,ミトコンドリアDNAの3つの主要な病的バリアント(塩基対番号 3,460,11,778,14,484 の塩基置換)のうち1つが同定されることによって確定診断となります。

 

孤発例と家族歴を有する例があり、家族歴がある場合には母親からの遺伝になるため、男性に遺伝した例では、その子孫への遺伝はありません。

海外での報告では、1.4万人に1人の発病率と言われていますが、国内での発病率は報告がありません。

 

 若年男性の場合,特に誘引なく発症することが多いようですが、中高年や女性では、頭部や眼窩部の打撲、大量飲酒・喫煙、糖尿病の罹患、視神経炎(多発性硬化症)などを契機に発症することがあるようです。

特に喫煙は、LHONの危険因子であることが疫学的に示されています。

 

発病から短期間の間に症状が急激に進行し、一気に視力や視野が奪われるため、心理的な不安はかなり大きく、メンタルケアも含めた総合的なケアが必要な眼科疾患です。

 

LHONとイデベノン

 

 現状では、LHONに対するコエンザイムQ10誘導体である、イデベノンの早期投与が有効だとされています。

それ以外にも様々な治療が試みられていますが、臨床的に有効であるという報告はありません。

そこで必然的にイデベノンが選択肢に挙げられますが、効果があるかどうかには個人差があります。

 

LHONはミトコンドリアに変異が起こるため、ミトコンドリアの正常な働きを行うことが出来ません。

ミトコンドリアは酸素を利用してエネルギーを生み出す、電子伝達系というエネルギー代謝を行う細胞小器官です。

イデベノンはミトコンドリアの働きを補助するため、LHONに有効であるとされています。

 

また強い抗酸化作用を持つことから、細胞から発生する活性酸素により、細胞が壊死することを弱めることが出来るようです。

ただこうした経口投与するものには、共通した問題点もあります。

 

私は長年に渡り栄養療法などを行ってきたため、栄養などの経口投与する治療法は、必要なところに物質が届くことで初めて効果を発揮するということをよく分かっています。

逆に言うなら、いくら効果的な物質を摂取したところで、必要な場所に届かなくては意味がないのです。

そこでイデベノンの本当の力を発揮する為には、眼底部(網膜や脈絡膜、視神経)の十分な血流が必要であるということが分かります。

 

予測ではありますが、イデベノンが無効な例の中には、眼底部の血行不良などで十分に必要量が届かない人が含まれるのかもしれません。

そうした方にとっても、鍼灸治療は良い働きをするかもしれません。

 

LHONに対する鍼灸治療の可能性

 

 LHONでは、ミトコンドリアの異常により好気的エネルギー代謝に異常が起こるため、視神経や網膜の細胞が障害されていきます。

そこで海外の臨床研究で、ミトコンドリアと鍼灸治療に関するものはないかと見てみると、鍼灸治療によりSREBP1というステロール調節配列結合タンパク質の働きを改善するというものがありました。

ただLHONに関わるようなミトコンドリアに対する治療効果や、エビデンスのある鍼灸による臨床研究は見付けることが出来ませんでした。

 

LHONに関する鍼灸治療の症例も、しっかりと説得力のあるものはなく、「〇〇では行われている」といった程度のものでした。

恐らく当院で症例が出せれば、かなり画期的なものになるはずです。

一症例であることは否めませんが、それでもLHONの方にとっての希望になれば幸いです。

 

 そもそもLHONでは、一旦急激に悪化した視力や視野が、一定期間の停滞期の後、ある程度回復する時期があります。

その時期に合わせて、出来るだけ多くの回復力を発揮することが、LHONの治療では重要です。

 

鍼灸治療は、自律神経に作用することで、末梢循環を改善する働きがあります。

眼科疾患に対する鍼灸治療では、眼底部の循環障害を改善することで、細胞の活性化や組織の修復が起こっているようです。

恐らくその働きにより、西洋医学では治療が不可能だと言われた眼科疾患に対してでも、比較的良い治療実績を残しているのではないかと思われます。

 

 このLHONの回復期に備えてしっかり施術することで、回復期の視力、視野回復を目指すことが出来るかもしれません。

実際には、これからの臨床報告をさせて頂ければと考えています。

臨床報告は大抵が後ろ向きの報告となりますが、今回は前向きの臨床報告が出来ればと思います。

 

【鍼灸治療追記 2021.8.10】

 

 ここからは、レーベル病の鍼灸治療についての追記になります。

当院にはまだ十分な臨床例がありませんが、現段階で分かってきた臨床のお話をさせて頂きます。

当院や協力治療院でのレーベル病の臨床を見ていると、非常に特徴的な回復例を示すことがあるようです。

 

その大きな特徴は、症状の進行が急激に数か月進んだ後、ほぼ社会的(機能的)失明状態から半年程度が経過して、急激な回復を見せることがあるということです。

回復パターン2.png

当院では、この時期を「底の時期」と呼んでいます。

患者さんにもよりますが、半年程度の「底の時期」を経過した後、数か月間は急激な回復を見せる時期が訪れることがあります。

ただ全員が回復するわけではなく、そのまま悪化してしまうか、底の時期のままであることもあります。

 

回復期の長さや回復具合は現状では詳しく分かりませんが、半年程度の底の時期は共通してあるようですので、これをヒントにして治療計画を立てることも大事だと思われます。

つまり治療開始時期がどの時期であるかを十分に把握し、回復期までは悪化を最小限にするため必要最低限の頻度とし、その後訪れる回復期には必要十分な頻度で施術するなどです。

 

<具体例>

 増悪期:週1回~2週に1回

 底の時期:週1回~2週に1回

 回復期:週1回~週2回

 

 鍼灸治療は自費であるため、持続可能な治療計画を予め立てておくことは非常に大事です。

もし増悪期に鍼灸治療を開始すると、1年近くを効果が表れにくい状態で鍼灸治療を受けることになります。

これは心理的にも経済的にも、とても大きな負担になります。

 

とは言え、何もしないまま悪化していくのを眺めておくのも、心理的なストレスは計り知れません。

そこでしっかりと自分の状態を把握した上で、治療計画を立ててくれる鍼灸治療院で治療を受けることで、心身ともにサポートをしてもらって下さい。

そして回復期を目指して計画的に鍼灸治療を受けて頂くことが、レーベル病の鍼灸治療にとっては非常に有効であると思います。

 

施術内容に関しては、回復期にしっかりと網膜や視神経、脳の視覚野にアプローチすることが大事です。

障害を受けた視細胞だけでなく、刺激を伝えることが少なくなった視神経や、視神経からの情報を受け取る視覚野にもアプローチすることで、視能全体を底上げするように施術します。

2024.10.09 Wednesday