治療効果で大切な機能的回復期と器質的回復期のお話
眼科鍼灸による変化の特徴
眼科疾患に対する鍼灸治療では、幾つか特徴的な回復の仕方をするようです。
勿論、眼科疾患の状態や疾患の特徴、進行度合い、その方の体力などによっても違うのですが、概ね機能的な変化から始まり、やがて器質的な変化へと移り変わっていきます。
その後は停滞期となり、やがて徐々に年齢と共に視機能が低下していくのですが、これは健康な人と同様の変化です。
回復期とは
回復期は大きく分けて、「機能的回復期」と「器質的回復期」に分けられます。
これはどの眼科疾患でも共通の概念です。
機能的回復期は、その字の通り眼の機能面である視力や視野の回復が起こる時期です。
こうした機能的回復期は、治療開始から非常に早い時期から起こります。
小さな視力の変化だけであれば、当日から起こる方もいらっしゃいますが、これは一時的な変化ですので比較的早く元に戻ります。
視野の変化も同様に、早く出た治療効果は一時的であることが多く、早ければ数時間~数日で元に戻ります。
機能的変化は視神経や網膜の血液循環促進により得られた効果ですので、元々血行不良が強い方の場合、症状の変化が出やすい反面効果の戻りも早いからです。
次の機能的回復期の後に訪れる器質的回復期で起こる変化は、ある程度永続的な変化が起こりますので、鍼灸治療の目的はこの器質的回復期にあると言えます。
機能的回復期とは
機能的回復期とは、網膜や視神経の血流が回復し、機能が高まったことで起こる視力の向上、視野の拡大が起こる時期のことです。
眼科疾患をお持ちの方は、何らかの循環障害や自律神経の失調を起こしている方が多く、そうした不調を鍼灸治療で整えることで視機能の回復が得られます。
機能的回復期は厳密にいうと、治療開始直後から治療を中止するまで継続します。
上の解説で停滞期までとなっているのは、器質的回復期のことですので、治療を中止までは機能が上がった状態ですが、一旦中止すると徐々に(或いは急激に)機能は低下してきます。
そのため治療を中止する場合には、眼底部の循環が悪くならないように、鍼灸治療以外の何らかの手段が必要になると思います。
何らかの方法で循環障害を防がない場合、眼科疾患の再発や悪化をすることが多いため、くれぐれもご注意下さい。
器質的回復期とは
器質的回復期とは、新生血管の消失や傷付いた網膜の修復など、細胞や組織レベルでの変化が起こる時期です。
器質的な変化を起こすためには、視機能の回復をしてからの時間的な経過が必要です。
なぜなら器質的な変化を起こすためには、まずは機能的な変化を起こして血流を回復させた上で、問題を起こしている部位に新鮮な栄養や酸素を血流により運搬し、細胞や組織が修復されるのを待つ必要があるからです。
そのため機能的回復期から器質的回復期に移行するには、臨床的な経験からして最低でも2か月以上の時間が必要であると思います。
一度器質的回復期が始まると、その働きは数か月~1年程度は継続され、やがて治療効果が平衡状態となる維持期に移行します。
どこまで器質的回復が可能であるかは、当院での検査結果や眼科医の診断に基いて判断し、治療計画を定期的に立て直します。
機能的な状態は治療中止により戻るのも早いですが、十分に器質的な回復が見られると、治療頻度を減らしたり治療を中止したりしても、症状が急激に戻ることはありません。
ただし治療を中止する場合、生活環境や仕事環境などを改善しなければ、機能的な低下が見られた後、再び器質的な悪化も現れますので、その点には注意が必要です。
そのため治療中止を含めた治療計画は、患者さんと私でよく話し合った上で決定しています。