西洋医学と東洋医学(鍼灸治療)で行う不妊治療の役割と利点
西洋医学的な不妊治療の役割と利点とは
西洋医学的な不妊治療の役割とは、①原因を他覚的に明確にすることで、必要な不妊治療を明確にすることが第一です。
そして西洋医学的な不妊治療の大きな利点の一つは、②誰にでも同じ効果が出せるということです。
さらにもう一つの特徴的な利点は、③観血的な処置が出来ることです。
逆にマイナス点としては、一旦原因不明となった時には、全くお手上げになってしまうことと、専門病院に通院するとなると天井知らずの高額医療費が待っているということです。
マイナス点に関してはご説明の必要もないでしょうから、利点について順にご説明していきましょう。
①原因を他覚的に明確にする
第一の目的である、必要な不妊治療を明確にすることとは、血液検査や経腟超音波、卵管造影検査、そして遺伝子検査などで、第三者的にも分かる形で、明確に原因を探し当てることです。
これは非常に重要なことで、原因を明確にせずに不妊治療をしていては、不妊治療のせいで不妊傾向を作り出してしまうこともあります。
また、いたずらにステップアップを繰り返すことにも繋がり、コストとしても結果的に大きくなることが多いようです。
そのため、西洋医学的に不妊治療を受ける場合には、先ずしっかりと原因を探り、それに対する解決を一つずつ行うというのが、最も効果的な治療の受け方です。
②誰にでも同じ効果が出せる
西洋医学的な不妊治療の特徴であり利点の一つは、誰が行っても同じ方法なら同じ結果が得られるということです。
ただしこれは、患者側のことではなく、医療者側のことです。
つまり、どの医師が処方しても、同じ投薬なら同じ効果があり、同じ治療法なら同じような結果が生まれるということです。
ここは鍼灸治療との最も大きな違いかもしれません。
当然ながら患者が変われば、同じ治療法でも結果が変わることはあります。
そのために、①であるような原因の特定を徹底して行うわけです。
③観血的な処置が出来る
観血的な処置とは、 いわゆる外科手術を表します。
例えば、卵管閉塞が起こっている女性では、通常タイミング法や人工授精では妊娠することが出来ません。
ところが外科的な手術であれば、この卵管を再び疎通させることが出来ます。
通常こうした状態では、鍼灸治療を受けても妊娠することはありません。
稀に、卵管が詰まり気味と言われた女性や、子宮内膜症による卵管癒着の女性で鍼灸治療により妊娠される方がいらっしゃいますが、単に診断が間違っていたか、閉塞気味なだけで閉塞していなかったかのどちらかです。
完全に卵管が閉塞している場合には、鍼灸治療の不適応疾患であると考えるのが自然です。
その場合有効な選択肢は、観血的な治療(FT)か体外受精に絞られます。
同じく重度の子宮内膜症や子宮奇形、子宮筋腫なども、鍼灸治療の適応症ではなく、どちらかというと観血的(外科的)な治療の適応症になるでしょう。
こうした状態では、あまり鍼灸治療に時間を掛けると、せっかくのチャンスを逃すことになります。
東洋医学的な鍼灸治療の役割と利点とは
東洋医学的な鍼灸治療を、不妊治療や妊活に活かす役割と利点とは、①数値化出来ない体調不良を調節することが出来ることや、投薬では調整出来ない②自律神経の働きをコントロールすることが出来ることです。
両者ともに、鍼灸治療独特ともいえることです。
それとは別に③マイナスの要因として、誰にでも同じことが出来ないということは、大きなマイナス要因です。
また専門教育を受けていない点も、大きなマイナス要因です。
①数値化出来ない体調不良を調節する
東洋医学では、脈診や舌診などの東洋医学的診察法を用いて、病気に満たない体調不良を知ることが出来ます。
脈診や舌診には、普段の生活やストレスの程度が表れるため、特殊診察器具を使用せずに、その人の体の歴史を知ることが出来ます。
特に血行不良や栄養不良、そしてストレスなどはかなり明確に現れますので、病になる前に体調を調整するにはとても便利です。
また脈診ではリアルタイムな血行状態や自律神経の状態が分かるため、治療前の診察法としてだけではなく、治療効果の判定にも使うことが出来ます。
さらに舌診ではもっと長い期間の体調が分かるなど、目的に応じて診察法を変えることで、様々な使い分けが出来ます。
②自律神経の働きをコントロールする
鍼灸治療は、自律神経やその中枢である脳の視床下部に働きかける力が強いようです。
そのため大昔から、自律神経失調症の方に対して、数多く治療を行ってきた歴史があります。
冷え性や血行不良、消化不良などの自律神経失調症状に対して、鍼灸治療は非常に即効性があります。
自律神経は内臓機能や生殖能力と関係が深く、特に卵巣や精巣、そして子宮の血流と関係が深いため、自律神経を調節出来ることは、妊活や不妊治療に大きなアドバンテージを持ちます。
こうした自律神経に対する働きかけは、投薬でも一部行いますが、流産予防に活かす以外には利用されていません。
③鍼灸治療のマイナス要因
鍼灸師であれば、誰でも東洋医学に詳しいかと言えばそれは違います。
多くの鍼灸師は、素人に毛が生えたレベルでしか東洋医学を知りません。
また多くの鍼灸師は、臨床的に東洋医学を使ったことが無く、国家試験対策として得た知識を持っているだけです。そのため、先に書いたような脈診や舌診も、臨床的に利用している鍼灸師は数としては多くありません。
婦人科や不妊治療の知識となると、さらに専門的知識を持った鍼灸師は少なく、恐らく不妊治療を受けている患者さんの方が、詳しい知識をお持ちかもしれません。
そうした中で妊活を支えることは難しいため、十分な知識や経験を持つ鍼灸師を探すことが必要になります。
こうしたメリットやデメリットを知った上で鍼灸治療を利用して頂くと、西洋医学では妊娠に妊娠に至らなかったご夫婦でも、新しい命を授かることが出来るかもしれません。
ぜひ上手に利用して下さいね。