女性ホルモン(E2)と原発性開放隅角緑内障の関係
E2の低下は緑内障の原因になる?
E2とはエストロゲンというホルモンのことで、卵巣内で作られる女性ホルモンのことを指します。
エストロゲンは月経周期のある女性の卵巣で作られ、体内で様々な働きをしています。
その中にはまだよく分かっていない働きもあり、その一つが緑内障への影響だということです。
ここに一つの論文があります。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC8741302/
(Association Between Sex Hormones and Visual Field Progression in Women With Primary Open Angle Glaucoma: A Cross-Sectional and Prospective Cohort Study)
この論文の中では、原発性開放隅角緑内障(POAG)の原因因子を探るために、横断的研究では、POAG女性63名と健常女性56名を正常対照者として登録したとあります。
さらに、57名のPOAG患者をコホート研究に追加で組み入れ、2年以上の追跡調査を行ったそうです。
全ての被験者は、性ホルモンであるプロラクチン、黄体形成ホルモン、テストステロン、卵胞刺激ホルモン、プロゲステロン、およびエストロゲン(E2)の血清濃度について評価し、視野検査の結果と比較されました。
その結果、E2のレベルは正常者のグループに比べ、POAGのグループで優位に低かったそうです。
またその中でも特に、閉経前の女性でE2低下が見られると、POAGの危険因子となることが分かったとあります。
閉経前にも関わらずE2が低下する方は、卵巣機能低下や生理不順の方によく見られます。
不妊等が無ければ、生理不順はそれほど気になる徴候でもないでしょうし、そもそも自分のホルモン値を知る人などほとんどいらしゃいません。
またE2値とPOAGとの関連は、一般の方にはそう多く知られていません。
そのため知らない内に危険因子を見逃してしまい、POAGになる可能性を高めてしまうのかもしれません。
未だ患ってもいない眼科疾患を防ぐために、わざわざE2値を計測するというのは現実的ではありませんが、こうしたことは知っておいて損はありません。
そこで、POAGの大きな原因である強度近視を持っている女性などは、ご自身の生理不順や婦人科治療歴がある場合には、定期的な眼科受診を心掛けると良いと思います。