ストレスと眼科疾患のお話

 

ストレスが眼科疾患の原因に?

 

 ストレスが様々な病気の原因になることは知られていますが、眼科疾患もそれは例外ではありません。

 

当院に来院される患者さんの中にも、お仕事やプライベートで強いストレスを受けた直後や、そうした問題が解決した直後などに、眼科疾患を発症される方が多くいらっしゃいます。

 

また厄介なことに、ストレスに対する感受性は人それぞれで、「そんなことで?」ということがストレスになる方がいる一方で、自分自身ではストレスに気付かない内に影響を受けている人までいらっしゃいます。

 

さて一体、ストレスは眼科疾患に対して、どのような作用をするのでしょうか。

 

【自律神経に影響】

 

 ストレスの影響が最も出やすいのは、自律神経ではないかと思われます。 

 

交感神経と副交感神経から成り立つ自律神経は、お互いに拮抗関係にありながら、体の様々な機能を調整しています。

 

一般的には、交感神経が活動期に働く神経で、副交感神経は休息時や回復期に働く神経です。

 

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この両者がバランスよく働くことで、人は健康的な生活が出来ると言っても過言ではありません。

 

強いストレスや持続的なストレスを受けると、自律神経の中枢である脳の視床下部というところは、正常な機能が乱れてしまいます。

 

その影響は自律神経にも及び、毛細血管の血行不良や、逆に血管の急激な拡張による炎症症状を起こすことがあります。

 

こうして自律神経が乱れた結果、眼底部や視神経の周囲で循環障害が起こり、眼科疾患の発症や進行に強い影響を及ぼすと考えられています。(緑内障、脈絡膜新生血管、中心性漿液性脈絡網膜症など

 

また持続的な炎症は、浮腫の原因ともなりますので、交感神経が働き過ぎても、副交感神経が働き過ぎても、眼科疾患悪化の原因になると思われます。

 

 

【ホルモン分泌に影響】

 

 心身にストレスが掛かると、ストレスに対抗するため、脳(視床下部)は副腎に対して、コルチゾールというホルモンの分泌を促します。

 

コルチゾールは別名、副腎皮質ホルモンと呼ばれており、抗炎症剤として使用される、ステロイドホルモンとしても有名です。

 

コルチゾールには、毛細血管を収縮させる働きがあり、長期間コルチゾールの分泌が続くと、循環にも影響が及びます。

 

またストレスの影響が出やすい視床下部は、甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン(TRH)を介して、甲状腺刺激ホルモン(TSH)分泌にも影響を与えますので、甲状腺眼症の発病にも影響を与えると思われます。

 

甲状腺眼症で見られる、バセドウ病は甲状腺機能亢進症ですが、その前段階として甲状腺機能低下症(橋本病)が発症することもありますので、甲状腺の数値が低いからと安心は出来ません。

 

 

【脳内物質に影響】

 

 ストレスの影響は、脳内物質(ドーパミンやセロトニンなど)の分泌にも影響を与えます。

 

またコルチゾールの分泌も、脳内物質の分泌に影響をあたえ、脳機能が低下することが分かっています。

 

視機能は、最終的に脳で分析や調整をされていますので、ストレスにより脳内物質の低下などが起こると、脳機能が影響を受けることで、視機能は低下します。

 

海外の研究では、脳機能に影響を与える脳由来神経栄養因子(BDNF)も、ストレスにより生成が低下することが分かっています。

 

BDNFはうつ病を始めとして、精神科疾患とも強い関連を持っていますが、ドライアイとも関係が深い物質です。

 

ドライアイを訴える方の脳内では、脳由来神経栄養因子(BDNF)が低下していることが分かっています。

 

ストレスはドライアイにも影響を与えるようです。

 

ドライアイになると瞬きの回数が増える為、知らない内に眼瞼痙攣の症状が出て来ることもあります。

 

眼瞼痙攣の方も、ストレスとの関係が深く、脳内物質が減っていることも確認されています。

 

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【免疫系に影響】

 

 免疫は、強過ぎても弱すぎても困ります。

 

免疫が弱ければ感染症に罹りやすくなりますし、免疫が強過ぎると自己免疫疾患になってしまいます。

 

ストレスは免疫機能にも影響を与え、免疫の機能が乱れることがあります。

 

粘膜は免疫活動が活発であるため、自己免疫疾患と眼科症状には関連が深いようです。

 

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【ストレスと鍼灸 】

 

 鍼灸治療は、ストレス自体に対する効果もありますし、ストレスによって現れた症状に対しても、効果的に働きます。

 

それは、鍼灸治療の作用機序によるものかもしれません。

 

鍼灸治療による刺激は、皮膚や皮下組織にある受容器に捉えられ、知覚神経を通って脳に伝えられます。

 

そして脳の中で最初に伝わるのは、視床(ししょう)という部分です。

 

この視床は、感覚刺激の中継地点で、ここから様々な脳の部位に刺激が伝達されていきます。

 

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鍼灸刺激の場合には、視床から視床下部や扁桃体、海馬、前頭前野、側坐核、線条体など広い部分に刺激が伝わるようです。

 

そうした刺激の伝達の結果、自律神経をコントロールする視床下部や、ドーパミンを分泌する側坐核や線条体などに影響を与え、様々な作用を生むとされています。

 

 実際の治療となると、やはり投薬が主になりますが、投薬と鍼灸の相性はとても良いため、補助療法として鍼灸治療を使うことは効果的です。

 

特にステロイド剤や抗うつ剤との併用効果は、かなり高いように感じます。

  

不幸にしてストレスにより起こってしまった眼科疾患ですが、鍼灸治療によりアプローチ出来ることが、科学的に解明されていているようです。