水分代謝と眼科疾患の関係【中心性漿液性脈絡網膜症・正常眼圧緑内障】
全身の水分代謝が眼科疾患に関係?
眼科疾患で来院されている患者さんの中には、水分代謝の悪化が原因で眼科疾患を発病、悪化させている方がいるようです。
そのような方は、手足の浮腫みや顔の浮腫み、或いは手足の冷え症状を抱えていることが多く、鍼灸治療でそうした点を改善すると眼科疾患も比例して改善していきます。
今までに当院で確認した、水分代謝と関連が深いと思われる眼科疾患は次のようなものです。
・正常眼圧緑内障
・中心性漿液性脈絡網膜症
・黄斑変性症
・脈絡膜新生血管
・黄斑円孔(外傷性以外)
これらの患者さんの特徴として、次ような特徴があります。
・顔がむくみやすい(特に目の周囲)
・手足がむくみやすい
・足が冷えやすい
・尿漏れがする
なぜ全身の水分代謝が眼科疾患と関係するのか
実際には、こうした理由を明確に説明している医学論文があるわけではありません。
ただ私の20年弱の経験では、かなり密接な関係があるのではないかと思っています
例えば、内耳のリンパ液の循環が悪くなることで起こるメニエル病では、治療薬として利尿剤が処方されます。
全身の水分量を減らすことで、内耳という局所的な水分量を調整する為です。
実際にその処方で効果が出ているのですから、全身の水分代謝は、局所の水分代謝異常とも関係があるのでしょう。
鍼灸治療を受けて頂いた方は、かなり早い段階で黄斑部の浮腫に変化が起こり始めます。
早い人では2週間程度で黄斑部の浮腫が引き始めますが、これは局所循環が良くなることで、水分(漿液)が再吸収されるためです。
また緑内障の方では、眼圧を下げる効果と共に、局所(網膜や視神経)の循環状態を良くすることで、細胞に必要な栄養や酸素を行き渡らせて細胞の活性を高めることが出来ます。
また活性酸素を素早く取り除くことで、神経細胞が傷付くのを防ぐことも出来ます。
この場合には、浮腫みが原因で細胞が傷付くというよりも、浮腫みの原因になっている循環不全を取り除くことで、結果的に眼科疾患を防ぐことになるということになります。
東洋医学と水分代謝
東洋医学では昔から、「水毒」という概念があり、水分代謝の乱れが病として認識されていました。
ただ東洋医学でも水毒の症状としては、めまいやふらつき、消化不良、体のだるさ、関節の腫れなどで、眼科疾患の原因としては定義されてはいません。
ただ間違いなく水毒による眼科症状は存在ますし、それらは西洋医学では解決が難しいものであると私は考えます。
水毒になる原因としては、水分の取り過ぎや自律神経の失調、腎機能の弱りなど様々なものがあります。
そこで原因による水毒症の症状や、治療法についてご説明します。
1.水の取り過ぎによる水毒
水分の取り過ぎによる水毒症は非常に多く、例えば習慣的に飲酒量が多い方や、間違った健康法として水分を大量摂取する方が多いようです。
習慣的に飲酒量が多い方は、自分では意識していない間に水分を多く摂っているため、水分量が多いことに気付きません。
また飲酒量が多くても、それに伴い排尿や発汗量が多ければ水毒症にはなりません。(肝機能は悪くなります)
そのため飲酒量が多い方で水毒になりやすい方は、腎機能の低下を伴う方が多いことも特徴です。
飲酒量が多い方で水分代謝が悪い方は、飲酒後に顔や手足がむくみやすいなどの特徴がありますので、飲酒した翌朝に鏡で顔を見る習慣を付けると良いでしょう。
眼や顔の周囲が腫れていたり、はめている指輪がきつくなるようなら、飲酒による水分代謝悪化の影響が出ています。
もし眼科疾患を持っている方なら飲酒量を減らすなどの対応が必要になりますし、眼科疾患を持っていなくても、強度近視であれば飲酒量を減らすべきです。
必要以上の水分を摂る方の中には、体調不良により必要以上の水分を必要としている場合があります。
特に精神科疾患を持つの中には、過剰な水分摂取をされる方がいらっしゃいます。
基礎疾患としてそのような病気がある方は、出来るだけ基礎疾患の治療を優先して行いましょう。
2.自律神経失調症による水毒
自律神経失調症による水毒は、自律神経が上手く働かないことで毛細血管の運動障害が起こり、末梢での循環障害が起こることで発病します。
自律神経は、末梢の血管を収縮や弛緩させる役割を持ちます。
ところが自律神経が失調すると、末梢での循環障害が起こることで血液が停滞し、血液から血漿成分が押し出されて浮腫が形成されます。
そのため自律神経失調でも水毒が起こることになります。
3.腎機能の弱りによる水毒
腎機能は、西洋医学的にも東洋医学的にも、その働きが弱ることで浮腫を形成します。
西洋医学的には、腎機能を表す数値が変化することで分かりますが、東洋医学的な腎の弱りは必ずしも検査結果とは一致しません。
東洋医学的な腎の弱りは、様々な身体症状を表しますので、それらの症状で判断することが出来ます。
こうした症状の中でも、特に臨床上よく目にするのは、体に現れる浮腫です。
一般的な圧しても戻らない下腿の浮腫と違い、全体に皮膚が突っ張ったような感じの浮腫です。
こうした浮腫は、下腿だけではなく体全体に現れます。
東洋医学では腎の弱りを腎虚と言いますが、この腎虚の状態であると、眼科疾患の治りはとても悪く、悪化は非常に速やかです。
そのため腎虚を上手く改善することが、腎虚患者の眼科疾患ではとても大事になります。
飲酒後に顔が浮腫んだり、手足が浮腫んでしまいがちな方はそれを自覚し、生活の改善を意識して下さい。
腎虚の状態は、他の原因をより増強してしまうため、時間を掛けてしっかり治療することが必要です。
逆に言うなら、腎虚の状態をしっかり改善すると、他の原因があって眼科疾患を発病しにくくなります。
【まとめ】
眼科疾患は、目の病気でありながら全身の健康状態が反映されるため、一見同じ病名で同じ症状のようでも、実際には様々です。
そのため、治りやすかったり治り難かったり、悪化しやすかったりし難かったり、再発しやすかったりし難かったりするのです。
そうした差を生んでいるのは、ここでご紹介した水分代謝も一つの原因です。
東洋医学や鍼灸治療では、そうした体質や生活習慣などにも注目し、日々の施術に取り入れています。
そのため当院で施術を受けている患者さんにも、生活習慣をはじめとして、様々なお話を個別に伺いながら治療計画を立てています。
また体調の変化を全体的に捉えることで、より高い治療効果を生むことが出来るようです。
さてあなたは、自分の水分代謝をコントロールできているでしょうか?