不安神経症に対する鍼灸治療 大阪府外在住 40代男性
仕事のプレッシャーから不安を感じるように
患者: 40代男性 大阪府外在住 会社員
症状: 不安感、電車通勤が辛い、肩こり、頭重感
経緯
営業職として会社員をしてきたが、1年前にストレスを感じる仕事を任されてから、体調の不良を感じるようになってきた。
その後、症状が徐々に強まり、
・不眠
・電車に乗ると降りたくなる
・突然の発汗
・動悸
・首肩の痛み
・頭痛、頭重感
などを感じるようになってきた。
30歳の時には腰椎椎間板ヘルニアになったことがあり、その後も腰痛を感じることが多い。
来院時は仕事に行くのが辛く、通勤電車が苦痛で仕方ないということでした。
本人曰く、病院に行くことに抵抗があるそうで、当院の元患者であった会社の同僚に紹介され、ご来院されました。
【初診】
対面してお話をしていても、とても緊張されているのが見て分かりました。
このままお仕事を続けることにも不安があり、投薬以外の方法があるならと、当院を受診されたそうです。
体全体の筋緊張や身体症状も強かったため、先ずは体の緊張感を緩めることを目的に施術しました。
また動悸や冷や汗があることから、自律神経にもかなり乱れがあることが分かりました。
脈を見せて頂いても、かなり細く弱い脈であることが分かります。
初診時はまだ夏の暑さが残る時期でしたが、脈象としては冬のような脈をしていました。
東洋医学では、冬の脈を石脈といいます。
「冬脈石者、腎北方水也、万物之所蔵也、盛冬之時、水凝如石、故其脈之来、沈濡而滑、故曰石。」
これは冬の脈である石脈を現した古医書の一文です。
詳しく説明はしませんが、固く沈んでいるけれど、潤いがあって細い脈ということです。
ただこれは標準的な冬の脈ですので、この患者さんの場合には、ここに少し病的な弱さが含まれます。
そこで体をしっかり温める力を持たせ、血液を循環させるようなツボを選んで鍼灸治療を行います。
また局所的にもコリの深いところには、しっかりと鍼を響かせて施術を行いました。
うつ伏せでは、首や肩にしっかり鍼を刺し響かせました。
また全身のバランスが乱れているため、腰にもしっかり鍼を刺しました。
使用した鍼は、長さ30mm 太さ0.18mmのステンレス製使い捨て鍼です。
その後、10分間そのままで寝て頂いて、各部のコリをしっかり取りました。
次に仰向けになり、側頭部にもしっかり目に鍼を刺しました。
側頭部には側頭筋という筋肉があり、歯を食いしばる時に強い力を発揮しています。
普段から歯を食いしばっている方は、どうしても側頭筋が固くなりやすいため、頭が凝るという訴えをよくされます。
この患者さんも、正にそうした訴えを持っている患者さんでした。
そこで、太陽というツボから側頭筋に向けて、横刺という刺し方で骨に沿って平行に刺しました。
使用した鍼は長さ30mm 太さ0.12mmのステンレス製使い捨て鍼です。
この鍼を心地よく響かせると、頭の凝りや目の疲れも非常によく取れます。
そのため、眼科疾患でもよく使用するツボと刺し方です。
営業職でPC作業も多く、目を酷使するため、眼精疲労の解消も兼ねて施術させて頂きました。
目の周囲には、長さ0.1mmという極細の鍼を使用しました。
上の画像を見て頂ければ分かりますが、非常に細い鍼で、恐らく国内で常用される中では一番細い鍼でしょう。
この細さの鍼でも、十分に眼底部の血流は良くなります。
眼科疾患や眼精疲労の鍼は、痛みをほとんど感じることなく受けることが出来ます。
あとは手足のツボを使って、全身のバランスを調整する鍼をさせて頂きました。
使用した鍼は、長さ15mm 長さ0.16mmのステンレス製使い捨て鍼です。(上記画像参照)
当院で使用している鍼は基本的に細く、シャープペンシルの芯と比べても、かなり細いことがお分かりかと思います。
整形外科疾患や疼痛の種類によっては、かなり太く長い鍼も使用するのですが、逆に眼科疾患や全身調整の鍼灸治療では、細く短い鍼を使用することが多くなります。
細い分扱いが難しい点もありますが、患者さんにとって安全と治療効果を両立させるためには、こうした細い鍼を使用した方が良いと思います。
初回の施術から数日後、この患者さんに当院をご紹介して頂いた患者さんも、十年以上ぶりに来院されました。
その方のお話では、症状がかなり緩和されたようで、通勤電車も大きな苦痛を感じずに済んでいたようです。
【その後の経過】
初回から2週間後に来院された時には、同僚の方から伺った通り、かなり症状が軽減していました。
頭痛や首肩の痛みは軽く残るものの、睡眠に関しては良く取れているということでした。
症状が軽かったことと、発症から来院までが比較的早かったことが奏功したようです。
その後2週間に1回の頻度で約2か月間施術を続けたことで、身体症状はほとんど感じない程度になりました。
年末に近付き、仕事がかなりハードになったということでしたので、辛いときは頻度を気にせずに来院して頂くようにお話ししました。
こうして自分自身で来院頻度をコントロール出来るようになれば、ほぼ緩解と言っても良いと思います。
メンタル系の疾患は、投薬の力を借りることも多いですが、比較的初期であれば、こうして鍼灸単独でも十分に対応出来ます。
投薬に抵抗があって一人でお浪の方は、ぜひ鍼灸治療も選択肢の一つとして考えて頂ければと思います。