大阪日本橋 
眼病の鍼灸
鍼灸ひより堂

大阪日本橋の鍼灸ひより堂です。
当院では現代医学では治療法がないと言われてしまった眼科疾患に対して、鍼灸治療によるアプローチをしております。
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網膜剥離手術後の鍼灸治療 大阪市在住 50代女性

患者:大阪市在住 50代女性

病名:網膜剥離

経緯

・当院に来院する約2か月前に突然網膜剥離を発症。

・眼科にて網膜剥離と同時に白内障の手術をした。

・術後2か月経つが視力低下、視野の歪みが戻らないため来院。

 

 来院の2か月前に網膜剥離の手術を受けたのですが、一向に視力や視野の歪みが戻らないため、知人の紹介で来院されました。

元々網膜剥離の手術後は、視力や視野が戻るまでに時間がある程度かかります。

神戸にある、有名な某眼科専門病院のHPを見ると、

「網膜剥離が中心部まで含んでいれば術後にゆがみなどの症状が残り、完全な視力回復が得られないことがあります。視力は術後半年まで回復が期待できます。」

とありますので、まだ回復する見込みはありますが、網膜剥離に至った経緯を考えると、十分に回復しない可能性も否定出来ません。(かなりの強度近視+眼精疲労がありました)

 

そこで少しでも回復を早め、後遺症を最小限にするために鍼灸治療を受けて頂くことにしました。

この患者さんは通院患者さんのご紹介ですので、あらかじめそのこともご説明しております。

 

初診

 

先ずは初診時の簡易検査の所見をご覧下さい。

その1.png

画像左側が左目、右側が右目です。

歪みを表す波線が、中央全体に示されています。

ちなみにこの時の視力が、メガネによる矯正視力で左 0.3、右 0.6でした。

元々は両方ともに0.6程度だったそうです。

 

手術後は見える画像が大きくゆがんでいるため、視力がでないようです。

また強い肩こりや飛蚊症があり、目を使うことが難しく、仕事でも目を使うことが辛いということでした。

 

更に足の冷えが強く、末梢の循環障害があることも分かります。

強度近視(軸性近視)の方は、元々眼底部に強いストレスがかかっています。

それに加えて末梢の循環障害を持つ方は、脈絡膜の循環障害も起こしやすいため、網膜や視神経がぜい弱になりがちです。

こうした循環障害をしっかりと治しておかないと、網膜剥離後の回復は遅れるでしょうし、何よりも網膜剥離の再発を起こす恐れもあります。

 脈絡膜の役割.png

しっかりと循環障害を治療し、回復力を高めながら再発予防を図るために、鍼灸治療を施すことにしました。

 

鍼灸治療

 

 治療内容としては、局所的な眼底部の循環障害を取り除くことと、全身の自律神経のバランスを整えて、末梢循環全体を整えることを目標に施術しました。

先ずはうつ伏せから始めました。

 

【うつ伏せ】

 

 寛骨、風池、天柱、天髎、肺兪、膏肓、心兪、厥陰兪、膈兪、脾兪などから随時選んで、10か所程度鍼を刺しました。

使用した鍼は、長さ30mmで太さ0.18mmの使い捨てステンレス鍼です。

背部兪穴.jpg

毎回確実に不快な症状を取り去ることを意識して、肩こりや首こりなどの不快症状を無くしていきました。

また背部全体の凝りを見て、全体の筋肉のバランスを整えるように施術を加えました。

 

【仰向け】

 

 絲竹空、攅竹、太陽、球後、四白などの経穴からその日の状態で選んだ数穴に施術しました。

目のツボ.png

また本治法として更に1~3本程度鍼を刺し、全身の自律神経を調整しました。

同様の施術を約1か月続けた結果、次のような結果になりました。

その2.png 

まぁ見た目はほぼ変わっていませんが、よりクリアに歪みの個所が出てきたようです。

歪みの場所は前回のものに加えて、上の部分にも出てきたようです。

ただ歪みの大きさ自体は軽くなり、見えやすくはなっているそうです。

その証拠に患側である左目の視力が、前回の0.3から0.6に上がっていました。

 

また更にその1か月後(初診の2か月後)にも簡易検査をさせて頂きました。

その結果がこちらです。

その3.png

真ん中で大きくゆがんでいたところが無くなり、左右と上部の一部に移動しています。

初診の時と比べると一目瞭然です。

2か月の変化改訂版.png

今までは視野の真ん中付近にあった視野の歪みはほぼ無くなり、左右に分かれる形で小さくなりました。

ひょっとすると1か月前の検査であった歪みの部位(網膜の引きつれ?)が、左右に分かれたのかもしれません。

恐らく網膜のしわのようなものの影響ですので、中央部から網膜機能が回復しているようです。

 

実際には検査結果を通した予測でしかないのですが、リアルに網膜の変化を覗いているようで面白いです。

ちなみに左目の視力は、初診時と同じメガネによる矯正で、0.7となりました。

つまり0.3⇒0.6⇒0.7となったわけです。

現在は、左目の方がよく見えるそうです。

 

 初診の際に、最低でも3カ月程度は週2回で精一杯回復させましょうとお約束しているので、後1か月間は急激に回復する期間として施術を続けます。

その後は、頻度を少なくして再発予防を目的に施術をすることになります。

結果から見ると、非常に面白い症例でした。

 

<2022.2.22 追記>

 

 当院での初診から2カ月半経ち、総合病院の眼科で主治医の診断を受けたそうです。

結果としては、視力が回復し網膜の状態が非常に良いため、網膜剥離は完治ということで、元々の眼科へ転院となりました。(ほぼ後遺症も無いようです)

 

当院で行った2か月目の検査(上記)でも良い結果でしたので、ある程度は予想で来ていましたがうれしい結果です。

今後は3か月後の当院での簡易検査を行い、治療頻度を減らしながら経過観察を行います。

 

この方のように強度近視から起こる網膜剥離では、脈絡膜付近の循環状態を常に管理して、再発予防をしなくてはいけません。

網膜剥離を繰り返す方は、こうした日常管理が出来ていないせいで、網膜がぜい弱化することで発病するのではないかと思っています。

病因.png

そのため、鍼灸治療で定期的にケアすることで、眼精疲労や不快症状を取り除くだけではなく、網膜剥離の再発予防を出来ると考えています。

頻度は徐々に減らしながら、自覚症状や他の所見を見て最低限の頻度を探していきます。

 

強度近視の方は、網膜剥離以外にも緑内障などの眼科疾患も発症しやすいため、眼科を受診しながら鍼灸治療でケアというのが、最もベターではないかと思います。

こうした日常ケアが出来ないのは、患者さん本人のせいでも眼科医のせいでもなく、こうした方法が知られていないせいだと思います。

 

私は、鍼灸治療での日常ケアが広まれば、もっと多くの眼科疾患の方に利益がもたらされると考えています。

 

<最終更新 2021.7.2追記>

 

 この症例では最後の更新になります。鍼灸治療を継続したことで、視力の向上もある程度落ち着いたため、当院の紹介で眼鏡も作り直して頂きました。

2021.07.02.png

 

これが2021.7.2に行った検査結果です。今までに検査を行った全4回分を比べてみます。

siyakensa.png

こうして並べると、変視症が徐々に治っている過程が分かって面白い結果になっています。

視力も同様で、かなり見えやすくなっている様子が分かりますので、下に変化を貼っておきます。

siryokuhenka.png

 

7月2日に関しては眼鏡が変わっているため、同様の基準では見ることは出来ませんが、左右差を見ると患側が良くなっていることは確かです。

完治とはいきませんでしたが、手術後に中々良くならなかった症状が、鍼灸治療開始後急速に回復したことと、自覚的にほぼ症状が無くなったことは評価出来ます。

今後は再発予防に目的を完全に切り替えて、頻度をどんどん減らしていく予定です。

2024.04.24 Wednesday