網膜ドルーゼンによる変視症に対する鍼灸治療 府外在住 70代男性(2022.7.1追記)
患者:府外在住 70代 男性
病名:加齢黄斑変性症(網膜ドルーゼン)、白内障
症状:視野の歪み、視力低下
経過と初診
約2年前から視力の低下を感じたため眼科を受診したところ、網膜にドルーゼン(老廃物)の貯留を認めました。
眼科では網膜ドルーゼンによる網膜の弱りが原因であるため、とりあえずサプリメントを飲んでドルーゼンが減るのを待つように指示され、継続的に画像検査でドルーゼンの様子を見ていましたが、全く変化が見られない為、西洋医学以外の方法を探して来院されました。
また白内障を同時に患っており、遠近の視力を出すために多焦点レンズを希望していますが、多焦点レンズでは光が15%ほど低下するため、網膜疾患を持つ方は多焦点レンズを使用できません。
そのため最終的な目標は、網膜の状態を良くすることで多焦点レンズを使用出来るようになることです。
先ずは当院での簡易検査を受けて頂きました。
右側の視野中心部に画像の歪みを感じるようで、既に網膜に変性が出ている可能性がありました。
視力は矯正してもしなくても変化なく、左0.3、右0.2でした。
鍼灸治療の目標としては、脈絡膜や網膜の循環を改善することで網膜ドルーゼンを取り去り、視力や変視症の改善をすることとしました。
積極的に症状の改善を計画しているため、週に2回の施術とすることにしました。
鍼灸治療と経過
鍼灸治療の内容としては、他の眼科疾患の施術と同様に、体調を整えるための施術と目の周辺部への施術を計画しました。
例を挙げると、
【うつ伏せ】
天柱、風池、大杼、心兪、膈兪、肝兪
【仰向け】
太陽、攅竹、清明、四白、陽白、球後
などから選択して取穴しました。
通常よりも早い施術開始から2Wのタイミングで、2回目の簡易検査を行いました。
左目には変視が無いため、右目だけを2週間前と比較してみました。
1回目の検査結果と比べると、変視症の範囲がやや小さくなっているようです。
視力は左0.4と右0.2で大きく変化はありませんが、やや左目は見えやすい印象のようです。
更に同様の施術を継続し、施術開始から2か月が経ったタイミングで眼科の検査がありました。
そこで画像検査の結果をお持ち頂き比較してみました。
先ずは変視が全く見られない左目ですが、やはり網膜には変性が出ているようでした。
こちらは残念ながら大きな変化は見られていません。
次に右目ですが、網膜上にあったドルーゼンが3か月後にはやや小さくなっている様子が見られます。
また同時期に行った当院での簡易検査の結果ですが、こちらでも変化が見られました。
1回目と2回目と比べても、3回目の視野検査では視野中央にあった変視症はほぼ無くなり、縦線と横線の歪みが少し残るのみとなりました。
眼科での画像検査でもドルーゼンが少し小さくなっている様子が見られましたが、それが視野の歪みにも影響を与えているようです。
また視力も左0.7と右0.4となっており、こちらも改善傾向が見られましたが、視力の変化に関しては、ドルーゼンの影響というよりも、循環状態による網膜の機能低下が改善されたためかもしれません。
一般的に視力の変化は鍼灸治療の影響が出やすいのですが、これは自律神経が整ったことで水晶体の厚みを調整する筋肉の動きが良くなることと、網膜の循環状態が回復したことで栄養状態が良くなり、網膜機能が高まったためだと思われます。
まだ鍼灸治療を開始して2カ月ですので、これからの経過が大事となる症例です。
今後も経過を観察しながらご報告したいと思っております。
【2022.7.1追記】
前回の簡易検査から約1カ月が経ちましたので、簡易視野検査と視力検査を行いました。
結果としては、視力が左 0.7 右 0.7となりました。
初診の時の視力が左 0.3 右 0.2から始まりましたので、かなり良くなったと言っても良いでしょう。
視野検査の方は、前回よりも更に線の歪みが無くなり、ほぼ真っすぐに感じるようになったそうです。
色も微妙なコントラストも見えやすいようですので、こちらもかなり良くなったと言って良いと思います。
後は3か月後の画像診断の結果が、果たしてどのようになっているかです。
また追跡してご報告したいと思います。
【2022.9.16追記】
その後も鍼灸治療を継続して受けて頂いていましたが、施術を開始してから約6カ月が経過した時点での画像検査が先日あり、その結果をお持ち頂きました。
先日の検査では主治医の評価は思わしくなかった(効果は判定出来ない)のですが、今回の画像検査では明らかに良くなっているとの言葉が頂けたそうです。
今回は連続画像を見て頂きたいと思います。
前回挙げた画像では多少分かり難かった変化が、今回の画像では明らかに良くなっているように見えます。
特に1つ目と2つ目の画像が分かりやすく変化しています。
今後は更に頻度を減らしながら経過を観察していく予定です。