中心性漿液性脈絡網膜症の鍼灸症例 50代男性 府内在住
完治は無理と言われました
【患者】
大阪府在住 50代男性 自営業
病院での診断:陳旧性中心性漿液性脈絡網膜症
【来歴】
・約12年前に強い精神的ストレスを経験。
その直後から左目の視野がぼやけるようになった。
・病院での診察の結果、黄斑部に浮腫が出ていると言われた。
(中心性漿液性脈絡網膜症)
・黄斑部近くからの漏出であるため、レーザーが不可能だと診断。
・自覚的には、すりガラス越しに見ているよう。
・病院では完治が不可能だと言われた。
・病院での治療は行っていない。
・当院患者である知人の紹介で来院。
【初回カウンセリング】
病院での診断通り、中心部に出来た浸出液の漏出により、視野の中心部に見え方の歪み、見え難さがあるようでした。
当院の簡易検査では、視野の中心部に、かなり大きな画像の薄れがあるようでした。
患者さんのお話では、精神的にかなり強いストレスを受けた後、この歪みが出たということですが、確かにそういった方は多いようです。
中心性漿液性脈絡網膜症には、強度近視の方が多いのですが、この患者さんはご覧の様に、裸眼で0.7の視力があります。
左目は、中心部が見え難いため、視点をずらしての計測のため、参考とさせて頂きました。
生活習慣の中で気になったのは、飲酒量の多さです。
毎日の飲酒量が非常に多く、アルコールの影響は血液検査等では見られていませんが、患側の左顔面部や下腿には浮腫が見られました。
水分代謝が水分の摂取量に追い付いていないようですので、寝る前の飲酒には注意を促しました。
【鍼灸治療】
鍼灸治療では、目の周辺の循環を良くするために、後頚部や目の周囲の施術と、全身の水分代謝を良くする東洋医学的な施術を組み合わせました。
出来る限りのことをしたいということでしたので、陳旧性の眼科疾患ではありますが、週2回の施術をさせて頂くことになりました。
通常は、眼底部の浮腫を改善するには、短くとも1~2カ月かかりますが、1か月ごとに視野と視力検査をさせて頂きました。
鍼灸治療開始1か月後の検査がこちらです。
視野の状態はあまり改善したとは言えませんが、視力の変化がかなり出てきています。
左目は、前回と同様に視野をずらして見て頂きましたが、0.1(?)から0.2になっていました。
問題の無い右目に至っては、0.7から1.2になっていました。
左目には大きな変化はないのですが、最近見えやすいと仰っていたのは、右目の視力が上がっていたからのようです。
中心性漿液性脈絡網膜症は、両目に発症することもあるため、まだ発症していない側の状態が良くなることも、治療目標の一つです。
そういう意味では、全体としての目の状態は良いのではないかと思われます。
3か月程度経った後、病院での画像診断をして頂き、実際の浮腫の程度を見て頂ければと考えています。
【その後の経過 2020年11月6日更新分】
鍼灸治療開始から2か月が経過しました。
施術の内容は上と同様ですが、先月までで反応が良かった経穴を加えて、重点的に目の周囲を施術をしました。
2か月経過した時点での、視力検査と視野検査がこちらです。
初診時、治療開始1か月後と並べて、すりガラス状になった視野欠損を比べてみましょう。
鍼灸治療開始から2カ月が経ち、自覚的にも視野のすりガラス状の範囲が、小さくなってきたような気がしていたそうです。
図で表すと一目瞭然で、特に上下方向の視野が改善しています。
視力に関しては、まだ中心の視野がぼやけているため参考程度ですが、少しずつ上がっっているようです。
初発から12年が経過しているため、漿液による浮腫が無くなったとしても、視細胞の損傷がどこまでなのかが気になります。
ただ12年間ほとんど変化が無かった中心性漿液性脈絡網膜症が、少しずつ回復に向かっているようです。
更に経過を観察していきます。
【追加報告 2020.12.8】
前回の計測からさらに1か月経ち、効果判定の目安である3か月が経過しました。
そこで前回同様、視力と視野計測をさせて頂きました。
一見すると左目の視力が落ちているようですが、中心視野が制限されるため、コツを掴むことが出来ないと視力が出ませんので、あまり気にする必要はないように思います。
問題の視野ですが、2か月終了後の画像と比べてみましょう。
2か月目よりも、更に範囲が小さくなりました。
升目でいうと、約一つ分の横幅が狭まっているようです。
実際の見え方としては変わりませんが、眼底の浮腫が引いている傾向というのは、かなり評価して良いように思います。
治療開始時と比べると、もう少しはっきりと違いが認識出来ると思います。
こうして見ると、3か月でかなり視野欠損の範囲が小さくなっていることが分かります。
今後は頻度を減らしながら、さらなる変化を期待して施術を続ける予定です。