外転神経麻痺による複視の鍼灸症例 府外在住 40代男性
患者:府外在住 40代男性 専門職
病名:外転神経麻痺(外転筋麻痺)
症状:物が二重に見える(複視)
患者男性は来院のひと月の起床時から突然の複視に見舞われ、日常生活が困難となりました。
手足のしびれ等も起こったため脳外科を受診し、MRI等の検査を受けたものの異常なしと診断され、その後眼科にて外転神経麻痺の診断を受けました。
積極的な治療法がなく、大抵は経過観察で良くなると言われ循環促進のビタミン剤を処方されました。
ところが症状が改善しない為、以前から整体治療院で整体を受け、その整体院の紹介で鍼灸院を訪れたそうです。
ただ症状が改善しなかったことと眼科疾患の治療経験が無い鍼灸治療院であったため、より専門性の高い治療を受ける為に当院に転院されました。
初診
初診時には複視が酷く、当院から自宅が遠く約2時間の通院距離にあるため、ご家族の同伴でご来院されました。
職業柄車の運転が必須の為、突然の複視により休職している状態で、原因も分からずにとても不安そうなご様子でした。
外転神経麻痺を起こすと、眼球を外側に動かす外転筋が収縮しなくなります。
今回の場合は不完全な麻痺であったため、全く動いていない訳ではなく機能低下を起こしているだけでした。
また左側の外転神経麻痺であったため、左目の動きが悪くなり、遠くを見た時と左外側を見た時に強い複視が出るようになりました。
そのため上で書いたように、仕事は休職状態となり生活にも支障を来たすようになった状態でした。
こうした原因が分からない視神経麻痺の場合、多く見られるのが外眼筋の支配神経である3つの運動神経に栄養を供給する血管が、循環障害を起こしたことで機能低下を来たす例です。
栄養血管が循環障害を起こす原因としては、動脈硬化による循環障害や糖尿病による循環障害など基礎疾患があることもありますが、今回の患者さんはそうではありませんでした。
また冒頭で書いたように、手足の痺れという中枢性疾患を思わせる症状もありましたが、MRIでの検査で異常がないことが証明されています。
となると、末梢神経(脳神経)である外転神経が単独で循環障害を起こしたということになります。
この患者さんは今回のことで精神的にも大きなダメージを受けていましたが、それ以前に元々気にしやすい性格であったり、ストレスを溜めやすい傾向があったようです。
こうしたことも合わせると、恐らくストレスなどによる一時的な自律神経障害によって循環障害が起こったことが原因ではないかと予想しました。
そこで先ずは自律神経を正常化させて循環障害を取り除き、外転神経を正常化することで症状が解消されると私は考えました。
鍼灸治療開始(発症から2か月後)
<仰向け>
両寛骨穴 左厥陰兪穴 左心兪穴
置鍼15分
<うつ伏せ>
左右四神総(パルス通電1Hz) 両太陽穴 両攅竹穴 両絲竹空穴 両四白穴 左復溜穴
置鍼15分
同様の施術を週2回ペースで継続しました。
初診から2週間後に眼科での受診により、眼球運動の改善であると診断されたということでした。
次回は2週間後の受診を予定していました。
鍼灸治療の内容は随時変化しますが、概ねの治療方針の変化はありません。
当院を受診後約1カ月で2度目の眼科受診となりましたが、更に自覚症状も改善しておりましたので改善を確信していましたが、予想通り眼科ではかなりの改善と診断されました。
仕事にも復帰され、施術を週1回に変更とさせて頂きました。
その後1カ月の鍼灸治療を受けて頂きましたが、眼科で完全に眼球運動が正常になっていることと、自覚症状の消失を確認した為、治療開始2カ月で完治としました。