眩しくて日常生活が困難に【羞明・眼球使用困難症】 大阪府在住 70代女性
患者:府外在住 無職 70代
病名:眼球使用困難症
症状:羞明 心理的不安感
経過
6~7年前からドライアイや羞明を感じることがあったが、コロナ禍前までは生徒を集めて文化教室的な催しをするほど元気だった。
ところがコロナ禍となって教室が開けず、一人で自宅に引き籠るようになってから、徐々に漠然とした不安感や羞明が加速度的に悪化。
やがて日常で目を開けていることも困難な状態になり、眼科では眼球使用困難症ではないかと言われた。
羞明やドライアイ対策として、両目にシリコン製の涙点プラグを施術したが症状は改善せず、また白内障手術は勧められるも見送った状態。
診断・鍼灸治療
様々な症状や経過からすると、眼科医の言う通りに眼球使用困難症であると思われます。
付け加えるとするならば、コロナ禍で一人暮らしである不安感や、今までは定期的に生徒への課題作成などで生きがいを見付けてきたことが無くなり、生きがいを無くしたことが大きい要因だと思われます。
眼球使用困難症や眼瞼痙攣では、脳内物質(セロトニン、ドーパミン、BDNF)の減少や脳機能低下が示唆されており、うつ病や不安神経症との関係が深いようです。
そこで少しずつ体調を整えながら教室を再開し、同時進行で心身の調子を整えることにしました。
患者さんは自主的に症状を10段階のスケールで報告してくれるようになり、前向きに病気に立ち向かう姿勢が見えました。
元々理知的な方であったこともあり、こうした体調を可視化することは大変効果的であったと思います。
鍼灸治療としては非常にオーソドックスに、自律神経や東洋医学的な体調を整える施術と、局所的な目の知覚神経を鎮める施術と循環促進のための施術を併用しました。
眼球使用困難症や眼瞼痙攣の方は、いわゆる上実下虚であることが多く、頭に熱がこもりやすいようです。
その為、頭の熱を足の冷えを取る為に循環させるイメージで施術を行います。
実際の施術としては 、全身治療として後頚部、背部、腰部の経穴を選んで太さ0.18mm 長さ30mmの鍼で数カ所刺鍼後に10~15分置鍼。
その後、頭部、目の周辺部、下肢に太さ0.1mm~0.16mm 長さ15mm~30mmの長さの鍼で数カ所刺鍼後置鍼を繰り返しました。
※これらから選んで数カ所行います
10日~3週間に1度の頻度でご来院頂き、初診から約2か月後に教室を再開して頂きました。
症状はまだあるものの、それ以来月に2回程度は教室を開いており、来院も月1~2回程度継続されています。
この症例では実際に鍼灸治療単独での効果よりも、教室再開への足掛かりとして鍼灸治療を利用して頂き、心理的に成功体験を積んで頂くことを重視しました。
全てを鍼灸治療で解決する必要はなく、様々な周囲との協調や協力を利用して問題を買行けるする方が、ずっと効率的で現実的です。
今回の症例とは違い、ご本人や周囲の環境が協力的ではない場合には、どのような方法を取っても重症であることが多いと感じます。
特に凝り固まったイデオロギーをお持ちの方の場合には、鍼灸治療にも抵抗を示すことが多く、今回のようにスムーズな社会復帰は難しくなることが予想されます。