特発性複視(滑車神経麻痺)の鍼灸治療症例 府内在住 60代男性
患者:府内在住 60代男性 定年退職
病名:外眼筋麻痺による複視(滑車神経麻痺)
症状:複視(物が二重に見える)
経過
・定年退職後は特に目を酷使するような労働はしていない。
・5年前に脳梗塞を発病も後遺症はない。
・来院の1週間前から両眼性の複視が発生。
・眼科と脳神経外科での検査により異常は認められなかった。
・ビタミン剤の服用のみで経過観察となった。
・症状が全く改善されない為、当院に来院された。
初診
特に目立った斜視等は見られませんでしたが、遠くを見るほどに複視が酷くなり、自動車の運転が全く出来ない状態になったということでした。
TVを見るくらいの距離(2~3m)になると複視が目立つようになり、それよりも遠い距離であれば特に複視が酷くなる状態でした。
また特徴的に左に首を傾げると症状が緩和され、右側に倒すと症状が悪化することが確認されました。
これは滑車神経麻痺の特徴に当てはまります。
特発性(突発性)複視の原因になる外眼筋麻痺の中には、大きく3つの神経が関係します。
その3つが動眼神経、外転神経、そして今回の患者さんに関係すると思われる滑車神経です。
今回は事前に眼科と脳神経外科で諸々の検査を受けて異常なしとの診断を頂いていますので、恐らく微小循環障害(血行障害)による滑車神経麻痺だと思われました。
細かい血管で起こる循環障害は厳密な診断が難しいことと、治療法自体がビタミンB12製剤の服用程度しか治療が存在しない為、経過観察になることが殆どです。
その反面、鍼灸治療は循環促進が最も効果を挙げる分野である為、非常に優位性を発揮しやすい状態と言えます。
そこで循環促進を目的とした鍼灸治療を開始しました。
まだ急性期に当たる為、出来る限り短い期間に頻度を高く施術することで、短期間に一気に治癒を目指す計画を立てました。
施術開始1~2か月は週2回程度を目標とし、2か月以内の完治を目指して施術を開始しました。
鍼灸治療
鍼灸治療の基本は本治法と標治法に分かれます。
本治法は根本治療を表し、今回で言えば循環障害を起こした体質的な問題に対する治療になります。
例えば今回の場合には、5年前に脳梗塞を起こしていることからも、根本的には血液が末梢では詰まりやすい状態があったことが伺えます。
これに関しては投薬で現在も加療中ですが、本質的にはまだ解決されていなかったと思われます。
そこで駆瘀血(瘀血を無くす)という東洋医学の概念を用いた施術を行うことにします。
更に標治法(対症療法)では、眼の周辺部の循環障害や目に繋がる頚部の筋緊張緩和を目指して施術を行います。
これは特に大事な施術で、即効性が最も高い施術になります。
具体的には眼の周辺部や姿勢に関係する筋肉への施術になります。
施術開始当初は、このまま複視が継続し日常生活に支障が続く不安感が強かったのですが、施術開始から約2週間が経ち、計4回の施術が終わったところで急激に症状の改善が見られました。
自動車の運転が出来るまでに回復することが出来たのは、発病から時間が経たない時点で施術を開始出来たことと、高頻度で施術出来たことが大きな理由だと思います。
5回目の施術の時には症状がほぼない状態で、その後1ヶ月は再発予防の為に暫く継続することになりました。


