中心性漿液性脈絡網膜症の鍼灸症例 30代男性 大阪府在住
患者:大阪府在住 30代 男性
病名:中心性漿液性脈絡網膜症
症状:視野の歪み、視野のかすれ(薄く見える)
【経過】
・5年前に一度同病を発症し、その時は経過観察で完治。
・今回は5か月前から視野に灰色の影が見えるようになった。
・経過観察をしていたが全く治らない。
・ストレスや不規則な生活が原因かと思っている。
・喫煙なし、飲酒4回/週 缶ビール1本程度
・前回、今回共に左眼に発症。
・病院の検査では視力 右1.5 左0.7~0.9
【初回カウンセリング】
本来は外回りの営業職とのことですが、発病以来、車の運転を避けて、現在はほぼ在宅で勤務されているそうです。
視野の中心近くに灰色の影があり、その影を通して見ているため、とても見えにくいそうです。
元々は、右眼と同様に左眼も遠視傾向で、1.5程度だったそうです。
当院で初診時に行った、視力と視野検査がこちらです。
自己申告通り、左眼視力の低下と、中心部やや右下に視野のかすれ、歪みが見られます。
この部分はグレーに色付いて見えているようで、その向こう側に景色が見えているそうです。
濃いすりガラス越しに見ているような感じなため、視力検査では小さいランドルト環※1が見えないようです。
※1:ランドルト環:視力検査にある「C」の形状をしたもの
範囲としては大きくありませんが、中心部近くであるため、気持ちの良いものではありません。
また時間の経過と共に視細胞が変性すると、もっと見えにくくなるでしょうし、範囲も広がる恐れもあります。
【鍼灸治療】
今回の患者さんは発症から時間が経っていない為、浮腫さえ無くなれば、視細胞の変性を防ぐことが出来るかもしれないと考えられました。
つまり、早急に浮腫を引かせる必要があるということです。
そのため、週2回の頻度で3カ月間しっかりと施術を行う計画を立てました。
先ずうつ伏せに寝て頂き、後頚部、背部に鍼を刺して、首や肩の凝りを取り去ります。
眼科疾患の方は、首肩の凝りが強く、首の凝りを取るだけでも、眼の不快な症状を取り去ることが出来ます。
今回のように、発病から時間が経っていない場合には、鍼数も少なく済みますし、反応も早い傾向があります。
次に仰向けで、眼の周囲と足の冷え・むくみを施術を行いました。
眼の周囲だけではなく、足の冷えやむくみを取る理由は、黄斑部の浮腫を無くすために、全身の水分代謝や血行障害も改善するためです。
眼科疾患で来院される多くの患者さんには、治療開始から変化が出るまで最低2か月程度かかることをご説明し、初診時から3か月の通院が必要なことを、納得して頂いた上で通院して頂きます。
それでも多くの患者さんは、治療開始から暫くすると、「このままで大丈夫か?」という不安感に襲われます。
この患者さんも、通院から2週間経ち、最初の意気込みと2週間経っても症状に大きな変化を感じないことに、非常に焦りが見られました。
そこで少し早いのですが、視力と視野を再検査させて頂きました。
画像が見にくいので、視野が色付いている部分だけを拡大して、並べてみましょう。
17日目の経過としては、視力視野共に回復傾向で良い流れに乗っているようです。(左視力0.7から0.9に回復)
今後も施術をしながら経過観察をしてきます。
【2020.11.27更新】
前回の検査からあまり日が経っていませんが、初診から1か月が経ったため、再び簡易検査を行いました。
その結果がこちらです。
前回、前々回と比べてみましょう。
通常は、中心性漿液性脈絡網膜症で鍼灸治療を受けて頂いても、2カ月後くらいから徐々に変化が起こることが多いですが、
今回の場合は、比較的早くから変化が起こっています。
ただひょっとすると、今までは今回のように小刻みに検査をしていなかったため、変化を追い切れていなかったのかもしれません。
本格的に変化する2カ月後が楽しみです。
【2022.4.6更新】
その後の経過をUPします。
この患者さんは、初診から既に1年半が経過しました。
この間に病院での検査を定期的に受けて頂きながら、少しずつ施術の頻度を少なくしてきました。
昨年の夏ごろのOCT画像では、網膜に出来ていた浮腫がほぼ無くなった状態を確認しており、自覚的にもかなり症状の改善が見られていました。
その後も再発予防や更なる症状改善を目指して、2週間に1回の施術を受けて頂きました。
その結果、先日のOCT検査で浮腫が完全に消失したことを確認出来たそうです。
また矯正視力が1.0となり、更に視力の向上も見られたそうです。
自覚的に感じていた目の疲れや後頭部の凝りも、頚部の治療を治療を続けてきた結果かなり改善され、十分にコントロール出来ています。