メラノプシン細胞のことが分かれば羞明が理解出来る
網膜第3の細胞
網膜に存在する視細胞は、網膜の中心部視野に関係する錐体細胞と、周辺部に存在して視野や明暗に関係する桿体細胞に分けられます。
それぞれがバランスよく存在することで、健全な視機能を守っています。
この2種類の視細胞からの情報は、視神経を通じて脳に伝えられています。
これがいわゆる視覚という感覚機能の働きです。
ところが最近の研究では、網膜に存在する第3の視細胞が網膜に存在することが分かってきました。
この第3の細胞はメラノプシン細胞という細胞で、先ほどご紹介した2つの視細胞と違い、知覚神経である三叉神経(眼神経)を通じて脳に情報を伝えています。
つまり視神経を介さない、目からの情報を伝えるルートということです。
このメラノプシン細胞から三叉神経を通した脳へのルートが、羞明と非常に強い関連があるということが分かってきました。
今までは網膜から視神経、そして視神経から脳への情報伝達の過程で、羞明の原因になるようなことがあると考えられてきました。
例えば網膜で過剰な活動が起こっていたり、脳が刺激を過剰に感じていたりといった具合です。
ところがこのメラノプシン細胞のことが明らかになると、今まで解明されていなかった羞明のメカニズムが、非常に分かりやすく理解出来るようになりました。
メラノプシン細胞と羞明
羞明とは、通常ではそれほど苦痛ではない程度の光(明るさ)に対して、過剰に苦痛を感じる症状です。
この光(明るさ)を苦痛と感じる理由は、メラノプシン細胞のことを理解するとよく分かるようになります。
メラノプシン細胞は、光を感じる網膜の細胞としては比較的原始的なもので、視覚というよりは概日リズムなどの生体リズムを作る際に働く細胞です。
そのためしっかりと映像を捉えるのではなく、光(明るさ)というものを刺激として捉え、それを三叉神経(眼神経)を通じて脳に伝えています。
また三叉神経は脳硬膜の血管にも繋がっているため、メラノプシン細胞を通じて三叉神経に伝えられた情報は、脳の過剰な血流とも関係しているようです。
更に三叉神経の活動はストレスの影響を強く受けるため、過剰なストレスが原因で三叉神経の活動が過剰になると、メラノプシン細胞の活動も過剰になり、網膜の過剰な血流増加により羞明が起こりやすくなります。
そのためメラノプシン細胞の活動を緩やかにし眼神経の活動を適正化することは、羞明の治療においてはとても大事であると思われます。
ただ意図的にメラノプシン細胞や三叉神経(眼神経)の活動を抑制する方法は、医学的には現在のところ確立されていません。
鍼灸治療においてもメラノプシン細胞の活動を抑制する作用は確認されていませんが、自律神経系に対する効果が分かっていることから、過剰な網膜の血流や三叉神経の興奮を鎮める作用があるのでしょう。
まだまだ未知の分野ですが、今後は羞明とメラノプシン細胞の関係が完治への糸口になるのではないでしょうか。