眼の痛みや眼精疲労がどうしても治らない方が多い理由
眼の痛みを感じ行き場を無くして鍼灸院へ
目の調子が悪くなり眼科を受診した際に、様々な検査を受けても異常が見付からなかった時に、「自律神経のせいかも。」と医師に言われる方はかなり多いようです。
自律神経が原因となると眼科では治療方法がないことから、自律神経なら鍼灸が良いだろうと、眼科疾患や症自律神経系に詳しい鍼灸院を探した結果、当院にもそうした方がご来院されているようです。
では何故「眼科症状≒自律神経症状」のように言われるのでしょうか?
脳が感じる眼の痛み
医師では分からない患者自身の自覚症状を感じているのは、脳でありその症状を脳に伝えているのは眼の知覚神経(三叉神経)です。
逆に言うならば、眼の知覚を神経線維(三叉神経繊維)を通じて脳に伝えているのですが、このルートのどこかでトラブルが起こると、耐え難い異常な眼性疲労や眼の痛みを感じることになります。
三叉神経は脳から直接分枝する、脳神経と呼ばれる神経の5番目の枝(第Ⅴ脳神経)です。
脳神経系に異常が生じる時には、脳自体の問題とその経路の問題の二つに大きく分かれます。
脳自体の問題については脳腫瘍や脳内出血がその代表ですが、こういったものの第一選択の治療は鍼灸治療ではありません。
急性期が過ぎて回復期になれば一部は適応になる場合もありますが、前提としては脳神経外科に通院して頂きながら補助療法として受けて頂くことになります。
それ以外の脳の問題として大きいのは、脳の機能的な問題です。
これは脳が痛みを必要以上に強く感じるような、感受性の鋭敏化の問題を指しています。
感受性の鋭敏化は脳に至るまでのルートと、脳自体でも起こりうると考えています。
眼の痛みは脳幹部の三叉神経核に伝えられた後、更に視床という場所に伝えられます。
視床に伝わった刺激は、その後前頭葉の体性感覚野という場所に主として伝えられるのですが、それ以外にも放射状に様々な部位に広がっていきます。
総合的な眼の痛み感覚とは
この時に痛みは、単なる痛み情報としてではなく、様々な総合情報としての痛みとして作り上げられます。
痛みが起こった時の様々なシチュエーションなどが添加されたり、その痛みが総合的な痛み情報として記憶されたりといったことが起こります。
こうした総合的な痛みとして記憶された痛みは、同じような痛みでもかなり違った現れ方や治り方をする傾向があります。
一旦様々な総合情報として記憶にメモリーされた痛みは、負の記憶として脳に深く刻まれるため、治療によって取り除くのが非常に難しくなります。
その為、器質的な問題がないからといって治りやすいわけではありません。
イメージとしては、同じような皮膚に出来た怪我でも、綺麗に治ってしまう場所と傷跡となってしまう場所があるようなものです。
特に強い精神的負荷や繰り返しの痛みと共に刻まれた痛みに関しては、より強い記憶として残り治り難いようです。
例を挙げてみれば次のようなものです。
こうした痛みの治療に関しては、基本的に長期間に渡る鍼灸治療が必要になりますし、場合によっては精神科による投薬をお勧めする場合もあります。
治療家との連携や相互理解が必要なる為、経歴や肩書よりも信頼出来る治療家を探すことが重要になります。
患者自身もしっかりと自分と向き合うことが必要になりますので、くれぐれも自分本位であったり逆に治療家任せになることも治りを遅くする原因になります。
そういった意味でも腹を割って話し合える環境が大切です。
またこうした痛みが治り難い人の中には、脳に生まれつきの特徴を持つ方が多いのも事実です。
ASDやADHDなどの発達障害を持つ方は、痛みや知覚に非常に敏感であることやこだわりが強いことから、同症状を抱えやすい傾向があるようです。
私は専門家ではありませんが、治療前後の行動などを見ていると、こうした疑いを持つ行動が見られる方も多く、実際にそうした診断を受けている方も多くいらっしゃいます。
その場合には治り難い傾向が更に強いようですし、これは当院としても今後の課題であると言わざるをえません。



