骨のゆがみには鍼灸か整体か
よく患者さんからの質問で、「鍼灸治療で骨のゆがみが治りますか?」というものがあります。
またそれと同様に、「骨のゆがみは整体に行った方が良いですか?」というものもあります。
この質問に正しく答えるためには、質問の意図を正しく理解するための、基本的な情報を知って頂くことが重要です。
骨のゆがみとは?
よく「体がゆがむ」とか「骨がゆがむ」という表現をしますが、この2つの言葉は同じようで少し違います。
体がゆがむというのは、一般的に「姿勢が悪い」とか「背中が丸まっている」と言われるもので、骨自体が歪んでいるわけではありません、
骨が歪むというのは、1本1本の骨が歪んでいることであり、これは「変形」という表現をする方が適当です。
変形は整形外科疾患であり、完治するためには手術が唯一の治療法です(変形性股関節症や重症の側弯症など)。
体のゆがみには整体がいい?
今までのご説明では、「体のゆがみ」や「骨のゆがみ」というものが、どういう状態であるかをご説明してきました。
そこで施術の対象になるものが「体のゆがみ」であり、「骨のゆがみ」ではないことがお分かり頂けたと思います。
では体のゆがみや姿勢の変化に、鍼灸治療がどう働くのかをご説明させて頂きます。
多くの場合姿勢を変化させるのは、1本1本の骨に作用している筋肉の緊張です。
通常筋肉は、必要のある時に緊張し、使用しない時には弛緩するようになっています。
例外的に姿勢を制御する筋肉は、継続的に一定の緊張を保つことがありますが、その場合にも就寝時には弛緩しています。
ところが姿勢が悪い人を見ていると、筋肉を緊張させる必要が無い時にも、筋肉の緊張が解けずに緊張し続けるようです。
筋肉の緊張が解けないため、継続的に骨を引っ張り続けることになり、姿勢が変化してしまいます。
猫背(円背)やストレートネック、側弯などでも、こうした筋肉の緊張が原因の場合には、鍼灸治療が適応になります。
ただ同じ状態でも症状が長期間に及ぶと、やがて骨の変形を伴うようになりますし、特発性側弯症の様に関節の変形が主たる症状になると、鍼灸治療の適応ではなくなることもあります。
ちなみに整体というものには決まった定義がありませんし、体のゆがみは整体が良いといったような、医学的エビデンスに基づいた研究はありません。