外眼筋支配神経麻痺による複視と鍼灸治療(外転神経麻痺・動眼神経麻痺・滑車神経麻痺)
外眼筋支配神経麻痺による複視とは
外眼筋は外眼6筋とも呼ばれており、眼球を動かすために存在する6種類の筋肉を指しています。
上の図は右目の為、左目の場合にはこの左右対称の図になります。
6種類の外眼筋を支配する神経は3種類あり、それぞれ動眼神経、外転神経、滑車神経といいます。
これらの神経は脳神経と呼ばれており、手足を動かす一般的な運動神経と違い、脊髄ではなく脳から直接出ている神経です。
外眼筋支配神経である3つの神経が麻痺する原因は様々ありますが、鍼灸治療が適応になる外眼筋神経麻痺は、外眼筋を支配する運動神経が血行不良により機能不全を起こしたものにです。
基礎疾患を持っている方は発病しやすい
神経を栄養する血管が血行不良を起こすと、神経が酸欠や栄養不良に陥り機能低下や神経麻痺が起こります。
血行不良の程度により、軽い機能低下から完全な神経麻痺まで症状の軽重が現れます。
完全に神経麻痺が起こると見た目にも斜視が現れる為、第三者にも分かりやすい症状として現れますが、症状が軽い場合には目を動かした時のみ複視が出現します。
こうした血行不良は、糖尿病や高脂血症、またこれらの基礎疾患による動脈硬化や高血圧などの持病を持っている方には高率に表れます。
またこうした基礎疾患をお持ちの方は、外眼筋支配神経麻痺以外にも血栓による視神経症などの眼科疾患も発病しやすいため注意が必要です。
外眼筋支配神経麻痺の症状
<動眼神経麻痺の症状>
動眼神経麻痺の場合、複視以外にも眼瞼下垂が出現することがあります。
また外側を見る時以外全ての眼球運動で複視が現れますので、非常に厄介な症状と言えます。
<滑車神経麻痺の症状>
滑車神経が麻痺すると、障害された目と反対側に頭を傾けると複視が改善します。
また目を上下方向に向けても複視が出る場合が多いようです。
<外転神経麻痺の症状>
外転神経が麻痺すると、患側の目を外側方向に向けようとすると複視が悪化します。
また近くを見る時は比較的楽ですが、遠くを見ようとすると複視が悪化します。
そのため室内よりも、比較的遠くを見る必要がある屋外で複視の症状が悪化しやすい特徴があります。
外眼筋支配神経麻痺の鍼灸治療と自己管理
外眼筋支配神経麻痺の回復には、何よりも循環状態の回復が第一目標になります。
眼の周囲にパルス通電を流して筋肉を刺激するよりも、先ずは支配神経の栄養血管に対する循環回復が欠かせません。
そのためには後頚部や後頭部に対する施術や、側頚部の筋緊張を取り除くことも大事です。
<当院での施術例>
外眼筋支配神経麻痺の鍼灸治療において重要なことは、単なる目の周囲に対する局所治療ではなく、栄養血管の血液循環を意識する必要があるということです。
それぞれ脳神経である動眼神経、外転神経、滑車神経は、脳底部の血管で栄養を受けています。
またこれらの血管は総頚動脈から分岐した内頚動脈からの枝であることから、頚部の血流状態も影響を与えるのです。
最後に患者さん自身の体調管理に関してです。
上でご説明したような動脈硬化を起こしている方は、頸動脈の太さがエコー上でも狭窄していることが観察出来ることから、こうしたことが神経麻痺の原因になっていることは十分に考えられます。
更に血液の性状がサラサラでないと血栓を作りやすくなったり、流れがスムーズでは無くなったりするため、これも神経麻痺の原因になります。
そのため糖尿病の傾向がある方もこうした神経障害を起こしやすいと言われています。
つまり基礎疾患の管理は、神経麻痺の早期回復だけでなく再発予防にも重要な意味を持つことになります。
これに関しては治療院ではどうしようもないところですので、適切な体調管理については是非鍼灸師にご相談下さい。