末期緑内障に対する鍼灸症例 市内在住 50代男性
患者:市内在住 50代男性 会社員
病名:緑内障、外眼筋麻痺
症状:視力低下、視野狭窄、複視
経過
昨年から複視が出るようになり、景色が2重に見える為、眼科や脳外科で精密検査を受けたが特に異状がないと言われた。
車の運転中に複視が強くなったため仕事を休職し、眼科以外での治療を求めて来院されました。
問診時に緑内障の治療中であることを知ったため、念のため視野検査をして頂いたところ、かなり視野狭窄と視力低下が進行していました。
3カ月ほど前まで車の運転をしていたとは信じられないほどの視野狭窄だったため、複視と共に緑内障の進行予防の鍼灸治療をすることになりました。
初診
初診時の視野検査がこちらです。
かなり簡易な視野検査ですが、大体の視野欠損や狭窄の様子が観察出来ます。
十字の中心部が視野の中心点で、その周辺部に視野が広がっています。
通常でしたら、中心部外側にある盲点以外は全て白い余白になるのが正常ですが、この方はほとんどの視野が欠損した状態になっています。
これの検査結果に、盲点と見えている範囲を書き加えると次のような感じです。
何となくイメージしやすくなったと思います。
かなり広い範囲での視野欠損があるため、緑内障としては末期に当たる患者さんだと思われます。
また本人は視野狭窄を気にしていますが、実際には視野狭窄や欠損の方が深刻な問題であるように感じます。
現在は休職中ですが、本人は運送業への職場復帰を望んでおり、一定期間の施術終了後に担当医も含めて話し合いをする予定です。
複視に関しては、目の動かすための外眼筋を支配する運動神経の働きが低下していることが原因の様ですが、こちらも治療としては眼底部の血流を改善することで回復すると思われます。
外眼筋麻痺による複視に関しては、こちらの記事も併せてご覧下さい。
鍼灸治療
緑内障は眼圧によって視神経の細胞が傷害されるため、眼圧を下げることが大きな課題になっています。
ところが日本人の約7~8割は、眼圧がそれほど高くない正常眼圧緑内障であると言われています。
今回の患者さんは正常眼圧緑内障ではありませんでしたが、眼圧を下げる点眼を続けているにも関わらず、視野狭窄は進行しているようです。
そこで鍼灸治療により眼底部の循環を促進することで視神経や網膜の細胞に酸素や栄養を行き渡らせ、視神経の機能回復や症状進行を防ぐ目的で施術します。
施術の内容としては、目の反応点が出やすい後頚部や背中のツボや、目の周辺部に鍼を刺します。
また全身状態は血流や血液の性状(ドロドロ・サラサラ)に大きな影響を与える為、全身状態を整えることも眼科疾患の鍼灸治療では重要です。
この方の場合には下半身の血流も悪かったため、足のツボの中でも血液循環や目とも関連が深いツボを使うことにしました。
同様の施術を週2回ペースで1カ月続けた結果、多少の変化が見られましたので、前回の視野検査と重ねて表示してみます。
グレーのものが鍼灸治療前で黒いものが施術開始1ヶ月後の視野検査になります。
視野全体がやや回復していることが分かります。
この方は来院時既に末期の緑内障でしたが、視野狭窄のことはそれほど気にしていらっしゃいませんでした。
複視は自覚症状としては日常生活にとって非常に厄介な存在ですが、実際には緑内障の視野狭窄や欠損の方が、機能的失明にも繋がる症状に繋がるため重要な症状です。
特にこの方のように車の運転を業務とされているような方は、他者への加害にも繋がるため注意すべきです。
現実的にはこのまま回復し続けることはないでしょうが、出来ることをしたいということですので、視力や視野の回復を目指して施術を継続する予定です。
また複視に関しても鍼灸治療によりかなり回復しています。