ストレス性疾患としての眼科症状(眼科疾患)
ストレスと眼科症状には(眼科疾患)は深い関係が
精神的或いは肉体的なストレスは、体のあらゆるところに影響を与えることは想像に難くありません。
特に中枢神経系(脳・脊髄)に与える影響はとても大きく、それらが脳内物質やホルモン分泌或いは自律神経にも影響を与えるため、結果的に全身の機能に影響を及ぼすと考えられています。
その中でも眼科症状に及ぼす影響はとても大きく、「見る」という機能に対する影響だけでなく、結果的に失明に繋がるような器質的な眼科疾患にまで影響を及ぼします。
[参考:ストレスと眼科疾患のお話]
[参考:ストレスと眼科疾患のお話2]
[参考:ストレスと眼科疾患のお話3]
そこでストレスによる目への影響を更に正しく理解して頂くことで、眼科だけでは対処出来ない症状に対しても、前向きに対処する手助けになればと思います。
ストレスと筋緊張
ストレスは自律神経系に影響を及ぼし、交感神経優位な状態を作り出します。
遠近調整を行うための毛様体筋は交感神経が働ことで収縮し、副交感神経が働くことで弛緩します。
そのためストレスがかかった状態になると毛様体筋が弛緩せず、遠近調節が働かなくなります。(視力低下の状態になります)
また瞳孔を開く瞳孔散大筋は交感神経が優位になると働き、瞳孔を開く働きがあります。
そのため緊張状態が続きストレスを感じる環境では瞳孔が開き気味になる為、目に入る光を調節出来なくなり光を眩しく感じる(羞明:しゅうめい)可能性が高くなります。
一方で副交感神経が働くと瞳孔括約筋が働くことで瞳孔が小さくなり、目に入る光の量を減らすことになります。
鍼灸治療は自律神経の調整をすることで、その時に合った正常な瞳孔の状態を作ることで、羞明を感じにくく暗さも感じにくい状態を作ることが出来ます。
ストレスとドライアイ
ストレスを強く感じている方は、ドライアイになりやすいことは比較的よく知られていることです。
またドライアイと脳内物質の分泌には相関関係があり、脳の機能をスムーズする役割がある脳由来神経栄養因子(以下BDNF)は、ドライアイ患者では少なくなっていることも分かっています。
BDNFはうつ病患者で少なくなっていることが知られており、これはストレスにより副腎皮質からコルチゾールというホルモンが分泌されることの影響であると言われています。
またドライアイ患者に抑うつ傾向の方が多いことも事実ですので、ストレスによるホルモン分泌の増加や脳内物質の減少が、こうした負の連鎖を生んでいると思われます。
ストレスと三叉神経
脳神経の一つである三叉神経(第Ⅴ脳神経)は、顔面部や脳内の一部の知覚を支配する神経です。
この三叉神経はストレスの影響を受けやすい神経として有名です。
その代表的なものが偏頭痛や顎関節症です。
偏頭痛は、様々な原因で三叉神経が支配する脳血管に炎症を持たせることで起こるとされています。
その原因の一つがストレスだということです。
またマウスなどに身体拘束などのストレスを与えると、三叉神経の第三枝である下顎神経が支配する咬筋の知覚過敏が起こり、顎関節症に近い状態になります。
人間でも高ストレスの方は咬筋や側頭筋に異常な緊張が見られ、これが顎関節症の原因になっていると思われます。
[若年者における顎関節症発症と心理特性に関する2.5年間の前向きコホート調査]
三叉神経がストレスに対して反応しやすいことについては上の偏頭痛と顎関節症の例で挙げましたが、三叉神経には第一枝と第二枝もあります。
第一枝は眼神経であり、目全体の知覚や鼻の知覚を支配しています。
そのため目の症状もストレスにより発症しやすくなり、目の奥の痛みや違和感、表面のチクチク感なども起こりやすくなります。
第二枝の上顎神経は上顎全体の知覚を支配しており、上顎の歯髄にもなっているため、歯の浮いた感じや頬、口蓋の異常知覚なども上顎神経が感じています。
こうした症状も、ストレスを感じている方が強く訴える症状と非常に似ています。
緑内障とストレス
緑内障は視力や視野を失う眼科疾患としては、最も有名なものの一つですが、この緑内障が悪化する要因の一つとしてストレスの存在が挙げられます。
患者さんたちは緑内障の診断を受けた時点で強いストレスから逃れることが出来ない為、常に強いストレスに晒され続けていることになります。
ストレスの影響が最も出やすいのは、ホルモン分泌や自律神経への影響です。
抗ストレスホルモンとして働くコルチゾールやストレスによる自律神経の失調は、血液循環に大きな影響力を持ちます。
ストレスによりもたらされた循環不良は高眼圧の原因にもなりますし、網膜や視神経に運ばれる栄養や酸素を不足させる原因にもなります。
栄養や酸素不足に陥った網膜や視神経の細胞は、短期的には機能の低下を、そして長期的には細胞の壊死や組織の脆弱化を作り出すことになります。
そのため高眼圧の緑内障に対しても正常眼圧の緑内障に対しても、症状の悪化を生む原因になってしまいます。